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ピンチを抑え、ほえる伊藤樹(早稲田大学)
東京六大学春季リーグ戦を7季ぶりに制し、歓喜に沸いた週末から1週間余り。賜杯奪還の余韻が冷めやらぬ中、全日本大学選手権が幕を開けた。前回出場以来、9年ぶりの日本一へ、『強い早稲田』を証明するべく初戦に臨んだ。
6月11日(火)の東京ドーム第3試合。シードとして2回戦からの登場となった早稲田大学の相手は、前日に完封勝利を挙げていた大阪商業大学。早稲田はエース・伊藤樹(スポ3=宮城・仙台育英)を据えたこの一戦は、両先発の粘投により延長タイブレークに突入した。
なかなか得点に結びつかないもどかしい展開だったが、延長10回に梅村大和(教4=東京・早実)の犠飛で1点を先制すると、その裏も続投した伊藤樹が1人で投げ切り、1-0で勝利。大会初戦を辛勝した早大は、3回戦に駒を進めた。
平日の開催にも関わらず、多くの観客で埋め尽くされた早大応援席。大きな期待を背に受けながら、先発マウンドには伊藤樹が上がった。この日は初回こそ3人で抑えたものの、ボールが先行する場面が目立ち、その後は走者を背負いながらの投球が続く。
2回は先頭の中前安打と暴投で一死2塁のピンチを招くも、後続を内野ゴロに打ち取ってなんとか切り抜けた。バットに当てさせない本来の圧倒的な投球とはいかなかったが、要所を締めてスコアボードに「0」を並べていった。
4回に安打を放った吉納副
援護したい打線は4回、先頭の吉納翼副将(スポ4=愛知・東邦)が中前安打を放ちチャンスメイク。しかし、後続が倒れて得点には至らず。序盤は好機らしい好機がほとんどなく、7回までに2桁三振を喫する淡白な攻撃が続く。相手先発の前に三振の山を築かれ、手も足も出ないといった格好だった。
粘投していた伊藤樹は6回、先頭の2塁への打ち取った当たりが内野安打になると、犠打と犠飛で二死3塁のピンチを背負う。打席には大商大の4番・渡部聖弥(4年)を迎えたが、臆することなく直球を投げ込むと、最後は詰まらせて二飛に。
エースの堂々たるマウンドさばきが響いたか、8回には先頭の田村康介(商3=東京・早大学院)が、この試合初めての長打となる右中間への2塁打を放つ。先制点を待ち望む球場のボルテージが一気に上がったが、尾瀬雄大(スポ3=東京・帝京)、山縣秀(商4=東京・早大学院)、吉納副将の上位打線が倒れてまたもや無得点に。
第73回 全日本大学野球選手権大会 2回戦~東京ドーム~
【ハイライト動画】早稲田大学 vs. 大阪商業大学|ハイレベルの投手戦は延長タイブレークへ
両校ともに決め手を欠く展開で、どちらに転ぶか分からない状況が続いた。少しのミスが命取りになる中で、試合の流れを手繰り寄せるプレーも生まれた。8回、大商大の攻撃で、遊撃手の左へのゴロに山縣が追いついて反転スローを見せるも、一塁手・田村がボールをこぼしてしまう。
嫌な走者を背負ったが、さらに盗塁を試みたところで印出太一主将(スポ4=中京大中京)が強肩を鳴らしてタッチアウト。そして再び9回、安打で出塁を許して送られた代走がスタートを切ってきたが、またしても印出主将の好送球でアウトに。チームを勇気づける主将のプレーに、場内も大歓声に包まれた。
数ある好機をつかみきれず、無得点で9回の攻撃を終えた両校。大会規定により、無死1・2塁からのタイブレーク制による延長戦に突入した。先攻の早大はできる限り多くの得点が欲しい状況。
途中出場の寺尾拳聖(人2=長野・佐久長聖)はバントの構えを見せたが、追い込まれてからバスターで合わせると、打球はワンバウンドで一塁手の頭上を越えて右前へ。無死満塁の好機となって迎えた打者は、守備から出場していた梅村。
鳴り響くコンバットマーチを耳にして振り抜いた打球は、右中間深くまで運ぶ飛球に。飛距離は十分、三塁走者の俊足・松江一輝(人3=神奈川・桐光学園)が悠々生還し、ついに早大が先制のホームを踏んだ。
一気に追加点までつかみたいところだったが、尾瀬の四球で再び満塁まで攻め立てたところまで。1点をリードして10回の裏に臨んだ。
マウンドには、初回から腕を振り続ける伊藤樹が続投。相手は犠打を試みたが、衰えを見せない球威に押されて連続ファウル。3球目が転がると、印出主将が処理して三塁封殺に。再三の好守でピンチを救った。
しかし、続く打者には犠打を決められ、二死2・3塁と一打逆転サヨナラのピンチを背負う。それでも、粘り強く投球を続けた伊藤樹。最後も左飛に打ち取り、絶好調とは言えない中でも本塁を踏ませず、10回を118球で4安打7奪三振に抑え込んでみせた。
伊藤樹のこれぞエースと言わんばかりの投球で、苦しみながらも勝利をつかみ取った早大。リーグ戦では圧倒的な勝利を重ねていったが、初戦の緊張感もあってか、この日は序盤から投打がうまくかみ合わない印象を受けた。
それでも、最後は勝ち切るのが強いチームの証。日本一を目指す上で負けたら終わりのトーナメントでは、1敗も許されない試合が続くが、『強い早稲田』を知らしめるにはふさわしい舞台だろう。頂点への道のりは、まだ始まったばかりだ。
文:西村侑也/写真:近藤翔太(早稲田スポーツ新聞会)
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