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今季中の復帰へ前進したパドレスのダルビッシュ
心穏やかに自分の仕事に集中していた。9月5日、パドレスのダルビッシュ有投手(37)は右肘の炎症で負傷者リスト入り(IL)してから初めてのキャッチボールを行った。先発した8月25日、ミルウォーキーでのブルワーズ戦以来、11日ぶりとなる屋外での投球だった。関節の炎症を緩和するコルチゾン注射を患部に打ってから、6日目だった。
「これから負荷を上げていって、どうなるか、ですね」
久しぶりのキャッチボールは、約5分間で最長で20メートルほど。パドレスがプレーオフ争いでは厳しい状況にあることを踏まえ、米メディアなどは今季中の先発復帰は求めずに休養するべき、との論調もある。だが、ダルビッシュの考えは全く異なるものだった。
「みんながそれ(来年に備えるために休養すること)を考えているのは分かるんです。でも来年がどうなるかなんて誰も予想できないし、いま僕にあるのは“このあした”でしかない。きょう、あした、でしかない。そこに対して自分の仕事に尊敬を持っていかないと。もし来年があかんかったら、あかんかったで、それもしゃーない」
日々、全力を尽くし、できうる限りの準備をして試合に望んできたからこそ自然に沸き上がる言葉なのだろう。焦らず、騒がず、落ち着いて、今できることをやる。ベテランになって、肘の負傷があったことでこれからの野球人生について考えることはあったのか?と問われるとよどみなく答えた。
「全くない。考えた上でもう答えが出ている状態なので、いつも。これから先、どうなるんだろう?という考えになることはないですね。いつも言っているように、いつ終わってもいい、と思っているので」
今季の開幕前に42歳となる2028年シーズンまで6年の契約延長を結んだ。しかし、決して6年先を考えているわけではない。1年1年、そして1登板ずつが「いつ終わってもいい」気持ちで臨んでいる。
幸い靱帯に損傷はなく、手術の必要もないという診断を受けた。だからといって、ホッとした、とか安心した、ということでもなかった。
「何もないですね、そこに関しては。(手術の)可能性としては考えたけど心配したか?といわれれば、そうじゃない。別に手術(が必要)っていわれたら、また2年ぐらい投げないわけでしょ。それだったら、もうやめりゃいいだけの話だから、それは。迷惑をかけたくない」
レギュラーシーズンは残り約3週間。あと1度か、それとも2度か。いまある“このあした”を大切に復帰マウンドを目指している。
(文・山田結軌=サンケイスポーツMLB担当)
山田 結軌
1983年3月生まれ、新潟県出身。立教大時代にJ SPORTSの野球班でプロ野球中継の現場でスコアブックを書くアルバイトを経験した。サンケイスポーツには2007年4月入社。阪神、広島、楽天などを担当し、2016年2月より大学時代から夢みたMLB取材を続けている。
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@YamadaSANSPO
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