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野球が好きな、そしてスポーツが好きな皆さんならご存知であろう言葉「二年目のジンクス」。ルーキーイヤーに活躍した選手、あるいは前年度までに比べ大幅に成績をあげブレイクした選手の翌年は成績が悪化する、という意味で使われますよね。「ジンクス(英語だと「jinx」)」という言葉自体は本来「縁起が悪いもの」という意味で用いられ、それを破るべき対象として存在します。ただ昨今の日本語においては「縁起が良いもの」としても使われることが多く(例:「ラリーモンキーがビジョンに映し出されるとエンジェルスは逆転するジンクスがある」)、一部の辞書では「広く因縁があるように思われる事柄」という解説も追加され、誤用が一般化されている状況なのだとか。
さてこの「二年目のジンクス」、アメリカでは一般的に「Sophomore Slump(ソフォモア・スランプ)」と言います。「ソフォモア」とは大学二年生のこと。一説によるとギリシャ語の賢さ(Sopho)と、愚かさ(Moros)が組み合わさった言葉で、賢く成功するか、愚かな失敗をするか、分かれ目になる大事な時期、という意味が含まれているそう。今シーズンのMLBにて、その分水嶺に直面している主な二年目の選手たちのここまでの成績、ちょっとチェックしていきましょう。
【昨年の新人王たちは……】
まずは昨年の新人王ふたりから。ア・リーグ新人王のフリオ・ロドリゲス(シアトル・マリナーズ)は打率.284・OPS.853という昨年の好成績から一転、今年は開幕から成績が低迷、5月21日終了時で打率.204・OPS.656と明らかに物足りない数字でした。しかし5月22日の(今季負けまくっている)アスレティックス戦から8試合連続安打、うち6試合連続含む7試合でマルチヒット、3本塁打・OPS1.339と憑き物が落ちたかのように打ちまくり、現在.247・OPS.762。5月28日には自身2度目となるア・リーグ週間MVPも受賞しました。チーム状態もロドリゲスの成績と共に上向きその間6勝2敗、借金生活から抜け出しました。今年はオールスターが地元シアトルで開催されることもあり、出場出来る成績までなんとか状態を上げていって欲しいものです。一方、ナ・リーグ新人王のマイケル・ハリス(アトランタ・ブレーブス)は開幕から間もない4月5日の試合で守備時にフェンスに激突、その際に腰を痛めてしまい故障者リスト入り、19試合の欠場に見舞われました。復帰した4月28日以降の打率.141、OPS.462と状態は上がらず……。ロドリゲスは抜け出しつつあるとはいえ、昨年の新人王ふたり、どちらも完全に喰らっていますね。
【2021年のトッププロスペクトたちは】
アメリカの野球専門誌『Baseball America』が発表しているプロスペクト・ランキングにおいて、フリオ・ロドリゲスは2021年の全体2位でした。ではその前後、1位と3位の選手たちはどうでしょうか?
まずは3位、昨年のア・リーグ新人王投票では4位にランクインしたボビー・ウィットJr.は、ロイヤルズ内野陣の要として連日出場。打率.232・OPS.708は昨年より若干劣るものの、16盗塁はチームトップ、10本塁打もチーム2位と頭角を現し始めています。そして1位、昨年のア・リーグ新人王投票では2位だったアドリー・ラッチマンは、再建が完了し新時代に突入しつつあるオリオールズの象徴的存在として、捕手での貢献はもちろんのこと、打撃では打率.273がア・リーグ捕手3位、出塁率.397は同6位、41四球は何と同1位。空振りをせずボール球を振らず、三振が少なく四球を稼ぐ、リーグを代表する出塁マシーンとして、スタットキャスト上の数値でも各分野で上位にランクしています。
【日本出身選手で今季唯一のソフォモア】
日本出身選手だと唯一の「ソフォモア」、鈴木誠也選手はどうでしょうか。打率はそこそこだったものの、今季初出場4月15日に第1号本塁打を放ってから5月14日に第2号が出るまで実に26試合・111打席もかかってしまいました。しかしながら5月9日の対カーディナルス戦で四球を選んだ際、デビッド・ロス監督が「誠也はここから調子が上がって来る。タイミングと投球見極めがアジャストし始めた」と発言、その翌日から16試合で打率.321・OPS1.105・5本塁打と絶好調。その間3打席連続本塁打も記録(日本出身選手としては初)しました。中でも注目すべき数値は「HardHit%」、95マイル以上の打球速度を打った割合を表す数値が50.5%。これはMLB全体で26位にランクし、大谷翔平選手(ロサンゼルス・エンジェルス)の47.7%(同50位)を上回っています。オフに取り組んだ肉体改造の成果が徐々に現れているのでしょう。
【今季絶好調のソフォモア】
一方「ソフォモア・スランプ」なんかどこ吹く風、才能を開花させている2年目の選手を二人、ご紹介しましょう。ノーラン・ゴーマン(セントルイス・カーディナルス)は5月8日から25日まで15試合連続安打を記録、5月22日にはキャリア初のナ・リーグ週間MVPにも選出されました。現在40打点はナ・リーグ3位、長打率.575は同4位、OPS.932は同5位、そしていずれもチーム1位、とチームの中軸を担う存在になりつつあります。弱点とされていたボールになる高めの速球、いわゆる釣り球に手が出なくなった結果、三振が減り四球が増えています。また今季13本塁打のうち、ど真ん中のストライクが11本と失投を見逃さず確実に捉えている、という数値も出ています。
もうひとりはクリストファー・モレル(シカゴ・カブス)。今季初出場となった5月9日から12試合連続長打、13試合連続安打、5試合連続含む9本塁打と大爆発。シーズン初出場から12試合で9本塁打は1900年以降だと2位タイ、史上4人目の記録だったそうです(1位は1976年マイク・シュミットの11本)。昨年はデビューから22試合連続出塁と華々しいデビューを飾ったもののシーズン後半に失速。また今季はチームが積極的に選手を補強した影響から「ベンチに座らせておくことは間違っている」とジェド・ホイヤー編成総責任者はモレルをマイナーで開幕させました。すると本人曰く「三振を減らすよう、沢山のコンタクトが出来るようアジャストした」結果、トリプルAでの29試合で打率.330・OPS.1.156・11本塁打と無双状態に入り、ロースターに怪我人が出たこともあってようやく昇格し、堰を切ったかのようにメジャーで打ちまくっています。
ちなみにこの二人、5月26日にMLBが発表した「Hitter Power Rankings」ではモレルが8位、ゴーマンが6位にランクイン。MLBからもバッチシ注目されています。
吉田正尚選手(ボストン・レッドソックス)、千賀滉大投手(ニューヨーク・メッツ)といった日本出身選手、また4月の月間最優秀新人を受賞したジョシュ・ジャン(テキサス・レンジャース)、ジェームス・アウトマン(ロサンゼルス・ドジャース)といったルーキーたちの活躍はもちろんのこと、今回ご紹介した二年目の選手たちにもしっかり注目していければと思っています。
※全て5月29日終了時点での成績
文・オカモト"MOBY"タクヤ (SCOOBIE DO)
オカモト"MOBY"タクヤ (SCOOBIE DO)
1995年結成、"LIVE CHAMP"の異名を持つロックバンド「SCOOBIE DO」のドラマー兼マネージャー。
MLBコメンテーターとしても精力的に活動し、J SPORTS「MLBミュージック」メインMC、そして2023年シーズンからMLB中継の解説を担当予定。2022年4月には初の著書『ベースボール・イズ・ミュージック~音楽からはじまるメジャーリーグ入門』(左右社)を出版。MLBに関するラジオ出演や執筆活動も多数。2021年にはテレビ東京系ドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』で俳優としてもデビュー。
SCOOBIE DO http://www.scoobie-do.com/
Twitter: @moby_scoobie_do
Instagram: @moby_scoobiedo
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