人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

野球 コラム 2023年5月2日

MOBYのMLB取材ノート 〜シカゴ・カブス、4月の現状~

野球好きコラム by オカモト"MOBY"タクヤ (SCOOBIE DO)
  • Line

一昨年7月のチーム解体から、適度な派手さも含みつつ、けれども身の丈に合った補強を経て2023シーズンを迎えたシカゴ・カブス。新加入選手と生え抜き選手、若手とベテランがしっかりかみ合い、3・4月は2019年以来の勝ち越しを決めました。とはいえ、最終シリーズの対マーリンズに3連敗、貯金はわずか1なんですが……。

左脇腹のけがで開幕12試合目から復帰した鈴木誠也選手は、連日クリーンアップに名を連ね、安定した成績を残しています。本人いわく昨シーズンは「ほとんど見なかった」データ、つまりは相手バッテリーの配球や攻め方を整理し、狙い球を絞って毎打席に立つことで、打席の中でも余裕が出てきたとのこと。その鈴木選手は「選手たちそれぞれが役割を理解していて、やるべきことをやっている。チームとしてまとまっている雰囲気があり、勝利に向かっている感覚がある」とも発言しています。中継を観ていても、選手たちのマインドセットが明らかに「今シーズン、オレたちは勝ちに行ける」という流れに変わっているのが随所に感じられます(若干のファン目線を含みますが……!)。今回はその中でも、特に大活躍の生え抜き選手を、野手と投手、一人ずつご紹介しましょう。

野手は何といっても開幕から全試合でリードオフマンとして出場している5年目のニコ・ホーナーでしょう。4月終了時で25試合連続出塁中、開幕27試合で出塁出来なかったのはわずか1試合。安打数は現在首位打者のルイス・アラエズ(.438/マイアミ・マーリンズ)らと並び39でMLBトップタイ、打率は.328はナ・リーグ6位。打撃だけではなく盗塁もナ・リーグ4位タイの10を記録、1番打者として相応しい数字を残しています。

ここまでの彼の活躍について、デヴィッド・ロス監督から「正にトーンセッター。プレーでチームの雰囲気を高めている」と、ジェド・ホイヤー編成総責任者から「今シーズンの彼は、常に彼が望んでいるプレーが出来ている。そして常に得点圏にいるように感じる」と、手放しに絶賛されています。また、カブスとしては1番打者を固定出来るようになったことも、チームにとって非常に重要なのです。108年ぶりの世界一に輝いた2016年に不動のリードオフマンとして活躍したデクスター・ファウラー以降、カブスはずっと1番打者を固定することが出来ませんでした。合計31人の選手を1番打者として1試合以上先発出場させてきましたが、ホーナーがその人材捜しに終止符を打ったことになります。ホーナー自身も「毎日同じ役割を与えてもらえるのは非常に贅沢なこと。そのお陰で自分のルーティンに集中し、先に進むことが出来る。チームに感謝している」と述べています。

現地シカゴで連日取材している記者から伺ったところ、例えば18:40試合開始のホームゲームだと、ホーナーは試合開始の5時間以上も前の13時半時点で、既に日本でいうところの早出特打ちを連日こなし、チーム全体の打撃練習時にはハンドリング=守備練習に取り組んでいるとのこと。その日々の練習量の多さが今シーズンの飛躍に繋がっていることは間違いありません。また、今季開幕直前には2024年から3年3500万ドルの契約延長にも合意しました。「勝利が視野に入っていない組織で自分自身が成長していくという考えは、ボクにとってあまりに現実的ではなかった。だからこの契約はチームが進む方向(=勝ちに行く)への信任投票なんだ」と述べています。同じく生え抜きのイアン・ハップ(4月13日に2024年から3年6100万ドルで契約延長)、鈴木誠也、そして今季新加入のダンスビー・スワンソンの4選手が、少なくとも2026年までカブスでプレーすることになります。カブスの未来は彼らの手の中にあるのは間違いないでしょう。

投手は3年目のジャスティン・スティール。今シーズンは開幕から6試合に先発し4勝0敗、防御率1.49はナ・リーグ1位。更には、昨年7月22日から先発登板13試合連続で自責点2以下、うちクオリティ・スタートが8試合という抜群の安定感を魅せています。2014年ドラフト5巡でカブス入団。同年のドラフト1巡(全体4位)のカイル・シュワーバー(現フィラデルフィア・フィリーズ)との契約で浮いた資金の一部を使い、カブスは5巡目としては破格の契約金100万ドルを支払いました。2021年にメジャーデビューするまで、チームがワールドシリーズに向けてトレード・デッドラインで放出されることも、再建モードに入ったここ数年も見過ごされることもなく、チームに大切に扱われながら着実に成長してきました。

昨シーズンから回転数の多い4シーム、MLB平均に比べ約2倍の変化量を誇るスライダーに球種を絞り(今シーズンはこの2球種だけで全投球の96%を占めます)、開幕からけがで戦列を離れる8月末まで先発ローテーションを守りました。また、昨年6月にチームの大先輩ジョン・レスターからロス監督へのメールを通じて伝えてもらった「速球をインサイドに投げなさい」「右打者の軸足近くを狙うスライダーを身に付けなさい」というアドバイスを忠実に守っているとのこと。本人も「あと一歩で解決するために何をすべきとか、そういうことではない。常に何が正しいのかを探しながら投げている」「現状に満足することなく、投球の質を向上させていきたい」と言及し、チームを代表する先発投手に向けて日々成長の一途を辿っています。生え抜きの先発投手が本格的にローテーションの中心を担うことになれば、ケリー・ウッドやマーク・プライヤー、カルロス・ザンブラーノが一気に輝いた2003年以来、およそ20年ぶり。もちろんファンもスティールの快投を待ち望んでいることは間違いありません。

2019年以来の3・4月貯金スタートといった明るい話題の一方、リグレーヴィル(リグレーフィールド一帯の呼称)には、悲しいニュースも流れました。リグレー・フィールドのセンターにあるスコアボードがある一角に面した老舗パブ“マーフィーズ・ブリーチャーズ(Murphy’s Bleachers) ”の女性オーナー、ベス・マーフィーさんが5年間に及ぶ腎臓がんとの闘病生活の末、4月24日に68歳の生涯を閉じられました。1980年に開店したこのパブは、デヴィッド・ロス監督いわく「リグレーヴィルのホチキス(Staple)」的存在。カブスファン定番の酒場であることはもちろん、地方から来る観光客やビジターファンにとっても定番スポットとして知られ、シカゴにゆかりのあるセレブリティ、そしてカブスの選手やスタッフにとっても行きつけの場所として知られています。ロス監督は就任一年目の2020年、パンデミックで無観客試合が続く中、いつもこのパブで食事をテイクアウトし、オーナーのベスさんとのお喋りを楽しんでいたそう。

マーフィーズ・ブリーチャーズ(Murphy’s Bleachers)【筆者撮影】

また、今シーズンからオリックス・バファローズでプレーしているフランク・シュウィンデルは、カブス入団から1カ月が経過した2021年9月初旬のホーム4連戦、初戦終了後(この日は5打数1安打0打点)にマーフィーズに飲みに行ったものの誰からも声をかけられず、ファンの認知度を痛感。それに発奮したのか翌日から3試合全ての試合で勝ち越し打を放ち、最終戦を終えたあと再び店に入ろうとしたところ、一転してファンが殺到し揉みくちゃにされたそう。「この街に歓迎してもらったと実感し、非常に良い気分だった」というエピソードなんかもありました。

当然、カブスファンのボクにとっても、リグレー・フィールドを訪れる=マーフィーズにも必ず立ち寄る、というくらい非常に強い思い入れがあります。ここで沢山のカブスファンと知り合いになりました。その中には2021年までカブス戦略コーチだったマイク・ボーゼロさんも。彼が試合後にユニフォーム姿のまま一杯ひっかけに来たのを見つけ、知り合いを通じて乾杯させて頂いたことがあったのですが、先日ボクがWBCプールAの取材で台中を訪れていた際、ボーゼロさんはイタリア代表の投手コーチとして帯同されていて、「以前あなたとマーフィーズで乾杯させて頂いたことがあります!」と声をかけたところ「ああ、あそこはいつだって最高だ。また機会があったら一緒に飲もう!」と応えてくれました。

カブスを愛する人々にとって、マーフィーズはリグレー・フィールドでの毎試合の思い出、そしてその日に出会った人たちとの思い出なんかもホチキスで留めてくれる、そんな場所なのかもしれません。ボクにとって世界で一番好きなスポーツチームはカブスであり、そして世界で一番好きな酒場はマーフィーズなのは間違いありません。オーナーのベスさんには残念ながらお会い出来なかったのですが、次回訪れる際は必ず献杯しようと思います。

まだ開幕から一カ月が終わったばかり。今シーズンのMLBも様々なドラマが待ち構えていることでしょう。皆さんもご贔屓の選手、ご贔屓のチームをしっかり応援しつつ、今シーズンもワールドシリーズまでしっかり楽しんでいきましょう!ボクもJ SPORTSでの解説、またこのコラムを通じ、そのお役に立つことが出来れば幸いです!

文・オカモト"MOBY"タクヤ (SCOOBIE DO)

オカモト"MOBY"タクヤ (SCOOBIE DO)

1995年結成、"LIVE CHAMP"の異名を持つロックバンド「SCOOBIE DO」のドラマー兼マネージャー。
MLBコメンテーターとしても精力的に活動し、J SPORTS「MLBミュージック」メインMC、そして2023年シーズンからMLB中継の解説を担当予定。2022年4月には初の著書『ベースボール・イズ・ミュージック~音楽からはじまるメジャーリーグ入門』(左右社)を出版。MLBに関するラジオ出演や執筆活動も多数。2021年にはテレビ東京系ドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』で俳優としてもデビュー。

SCOOBIE DO http://www.scoobie-do.com/
Twitter: @moby_scoobie_do
Instagram: @moby_scoobiedo

  • Line

関連タグ

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

人気ランキング(オンデマンド番組)

J SPORTSで
野球を応援しよう!

野球の放送・配信ページへ