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野球 コラム 2022年6月15日

大好きな野球を、聖地神宮球場でプレイできることを噛み締めて|第71回全日本大学野球選手権まとめ

野球好きコラム by 岩瀬 孝文
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ここまで20年の時を擁した。
東都の強豪亜大が全日本大学野球選手権で優勝するのは5回目となる。
それほどまで時がたっていたのか、近年は東都代表の早々の敗退もあり、東都の実力が問われそうな雰囲気さえあった。しかし、やはり伝統の亜大である。

その昭和の雰囲気を残したスパルタ野球と揶揄されたりもするが、そこから近代野球の好ましい面と昨今の学生気質とを上手くアレンジした新しい野球をメイクせしめた。それに費やした時間がおよそ20年。
前回2013年の決勝戦ではサヨナラホームランで上武大に敗れて準優勝に終わり、そのリベンジ達成となるが、いまの生田監督にそんな思いは皆無。
いつも最高のチームで最高な相手と切磋琢磨していきたい、そういう望みが根底にあった。

戦国東都の熾烈な試合を象徴する入れ替え戦、その苦しさとまた勝った場合の安堵は途方もなく大きい。そして負けた場合は一気に奈落の底に突き落とされ、そこから立て直して、這い上がる道がとめどもない。
「そんなタフな入れ替え戦の1試合目、2試合目、3試合目を想定して勝負に挑みました」
と意図を明確にした生田監督、いわば選手権の準々決勝、準決勝、決勝がそれである。

【ハイライト】上武大学 vs. 亜細亜大学

第71回 全日本大学野球選手権大会 決勝 ~神宮球場~(6/12)

病気入院から復帰後すぐに練習がしたいと、ひとり亜大の日の出のグラウンドに立つ小柄な田中主将、それを支えた部員が一人二人と集まり大きな輪となっていた。もうそれは単なる精神野球の範疇は超えていた。
「そうだ明るい顔で、笑顔でバットを振ろう。楽しく野球をやろうよ」
大好きな野球を、この偉大な野球の聖地神宮球場でプレイできること、それらを充分に噛み締めようではないか。 生田監督が言う、「どうしてそんなに思いつめた暗い顔をしているのだ、もったいないよ」その言葉が妙に心に響いた。そして心軽やかに亜大主砲の4番指名打者山下はバックスクリーンへ特大な本塁打を放ち、やったとばかりに嬉しそうな表情を見せた。
それは優れた指導者の教えであった。さらに選手それぞれに感謝の気持ちが芽生え、丁寧にありがとうと言いながら野球を続けた。その成果がこの20年ぶりの優勝なのである。

亜大の名物とまで表現される統制が取れたシートノックに、守備の際にベンチ前に並んだ選手らの掛け声が、良いリズムとなってチームに流れを引き寄せる。
ただこれはあくまで亜大野球のカラーであり、それもひとつ、東都1部チームはそれぞれに威厳と風格を持って試合に挑んでいる。

今大会は初戦から好試合が続いた。それも僅差の近大-亜大、富士大の好投手金村を攻略した大商大、東海大北海道の快投渡部投手に環太平洋大はそれを崩せずノーヒットノーラン。さらに東農大オホーツクの健闘ぶり、佛教大が明大戦でみせた粘りと延長タイブレイク勝利や、亜大-東日本国際大の1点をめぐるシリアスな攻防、福岡大との対戦で9回上武大の見事な逆転劇など、実に見応えがあった。

亜大-東日本国際大

福岡大ベンチ前

好投手ではツーシーム系の落ちるボールで優勝に貢献した青山投手(亜大)、最優秀投手賞を獲得した山本投手(佛教大)、しっかりと投げ切った加藤投手(上武大)、右横手から伸びやかに投げた松本投手(名城大)、右下手でつなぎに徹した上村投手(上武大)、その存在感が充分な金村投手(富士大)など。

青山投手(亜大)

上村投手(上武大)

山本投手(佛教大)

また、打者では大会新記録4本塁打と首位打者賞を受賞した上崎外野手(東日本国際大)、大砲感に満ちあふれた指名打者山下選手(亜大)と河野選手(上武大)、青山投手の落ちる球を本塁打した野口捕手(名城大)、強肩好打の進藤捕手(上武大)、シュアな打撃が光る宗山内野手(明大)などが注目を浴びた。

上崎外野手(東日本国際大)

この彼らが加わる侍ジャパン大学代表候補の合宿や試合も観戦の価値がありそうだ。
そして、ひと呼吸おいて始まる各地での夏合宿を経て、選手の成長がまた一層、素晴らしい。
そこから迎える秋季リーグ戦がとても楽しみになってくる。

文・写真:岩瀬孝文

岩瀬 孝文

ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。

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