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攻守でチームを支える福井。持ち前のキャプテンシーで「日本一」へ導く
昨季の秋季リーグ戦、あとアウト1つが奪えずに逃した優勝。新チーム始動に際し、主将・福井章吾(環4・大阪桐蔭)は「勝ちに貪欲に」と、泥臭く戦う姿勢を求めた。チームとして掲げた目標は「ワセダに勝つ、リーグ優勝、日本一」。昨季の雪辱を期して春季リーグ戦に臨んだ。
しかし、大事な初戦で法政大学のエース・三浦銀二(キャ4・福岡大大濠)の前にまさかのノーヒットワンラン。王座奪還を目指すチームにとって、あまりに厳しすぎる船出となった。試合後のミーティングでは、制球力の高い三浦が6四球を与えたことをポジティブに捉え、攻め方を大きく変えることなく、翌日の試合で打って勝とうと気持ちを切り替えたという。
堀井哲也監督が今季のターニングポイントだったと振り返った法大2回戦では、大型左腕・山下輝(キャ4・木更津総合)を打ち崩して快勝。自信を取り戻した慶應義塾大学の快進撃が始まった。
1敗からの5連勝と勢いに乗り、迎えた首位・立教大学との天王山。1回戦では打線が爆発し、大勝。一転、緊迫した投手戦となった2回戦では、4番・正木智也(政4・慶應)が値千金の勝ち越し3点本塁打を放ち、優勝を大きく手繰り寄せた。
翌週、ともに優勝の可能性が残されていた立大と明治大学のカードが1勝1敗という結果となり、両校の優勝が消滅。慶大の優勝が決まった。厳しいスタートとなったリーグ戦だったが、各々が各々の持ち場で力を発揮し、早慶戦を待たずして成し遂げた「リーグ優勝」。
だが、昨季の屈辱を晴らすべく臨んだ早慶戦は1勝1敗と痛み分け。「ワセダに勝つ」という目標の達成は来季に持ち越しとなった。
◆東京六大学 春季リーグ戦 順位表
1位 慶應義塾 勝ち点8 (8勝2敗)
2位 立教大学 勝ち点6.5(6勝3敗1分)
3位 明治大学 勝ち点6 (6勝4敗)
4位 法政大学 勝ち点4.5(4勝5敗1分)
5位 早稲田大 勝ち点3.5(3勝6敗1分)
6位 東京大学 勝ち点1.5(1勝8敗1分)
※各校10試合勝点制
◆慶應義塾大学 試合結果
● 1-2 法政大学
◯ 7-1 法政大学
◯ 6-5 明治大学
◯ 4-1 明治大学
◯ 7-0 東京大学
◯ 11-6 東京大学
◯ 11-4 立教大学
◯ 4-1 立教大学
◯ 3-2 早稲田大学
● 2-4 早稲田大学
森田が今季与えた四死球はわずか4つ。制球力を武器に試合を作る
今季、チームの躍進に大きく貢献したのが2人の先発投手。最優秀防御率を獲得したエース・森田晃介(商4・慶應)と、4勝を挙げベストナインに選出された好左腕・増居翔太(総3・彦根東)だ。ともに高い制球力が武器であり、常に安定感抜群の投球で試合を組み立てた。この2人の活躍なくして優勝は成し得なかっただろう。
また、今季から守護神に定着した橋本達弥(環3・長田)は防御率0.69と圧巻。時には8回から登板し、試合を締める役割を担った。さらに、中継ぎにはタイプの違う2人の左腕が控えている。
150キロに迫る速球が武器の生井惇己(総3・慶應)は、リーグ戦では不振に喘いだ。全日本選手権では鬱憤を晴らす快投に期待したい。もう1人は技巧派の渡部淳一(政3・慶應)。切れ味鋭い変化球と磨き上げてきた直球の緩急差で相手を翻弄し、チームに勝利を呼び込む。
一方、打線はリーグトップの52四死球を足掛かりに56得点(リーグ2位)を記録し、効率的に得点を重ねた。また、チーム本塁打数9本もリーグトップ。走者をためて1発で返す攻撃で相手にダメージを与えた。
破壊力抜群のリードオフマンがチームに勢いをもたらす
注目は恐怖の1番打者として打線を牽引した廣瀬隆太(商2・慶應)だ。今季放った14本の安打のうち7本が長打(1本塁打6二塁打)と、その長打力は群を抜いている。廣瀬の出塁が打線、そしてチームに勢いをもたらす。
続く、渡部遼人(環4・桐光学園)は俊足や小技が持ち味だが、今季2本塁打を放つなどパンチ力にも注目。3番には東京六大学通算打率3割超えの巧打者である福井。
プロ注目のスラッガー・正木。一振りで試合を決める
そして4番に座るのが、無類の勝負強さを誇る正木だ。今季は勝負を避けられる場面が目立ったが、4本塁打12打点はキャリアハイ。要所で相手の心をへし折る特大の一発を放ち、数字以上のインパクトを残してみせた。正木の後ろを打つのは、チームトップの打率.350を記録した下山悠介(商3・慶應)。走者をきっちりと返す仕事人だ。
また、下位にもタイプの異なる打者がそろい、一筋縄ではいかない繋がりのある打線を形成。相手投手にじわじわとプレッシャーを与える。全日本選手権ではDH制が採用されるため、リーグ戦よりもさらに破壊力の増したオーダーが見られることだろう。
初戦は6月9日(水)、神宮球場での第3試合(14時試合開始予定)。九州産業大学vs.和歌山大学の勝者との対戦が決まっている。ともにデータがなく組みしづらい相手であり、難しい試合となることが予想される。だが、負けるわけにはいかない。
「普段使っているグラウンドという地の利を生かして自分たちのプレーをしたい」と、主将・福井は慣れ親しんだ神宮での経験を武器に戦うことを誓った。開幕前に掲げた最後の目標、「日本一」達成まであと4勝。東京六大学の代表として、これまで戦ってきた5大学の思いを胸に「繋勝(けいしょう)」を続けていく。
文/写真:林 亮佑(慶應スポーツ新聞会)
慶應スポーツ新聞会
慶應義塾大学文化団体連盟所属の公認サークル。通称ケイスポ。全40ある体育会の取材から記事の執筆、年7回の新聞製作まで全て学生の手で行う塾内唯一のスポーツ新聞サークル。部員数約50名、35年の歴史を持つ。»慶應スポーツWebサイト
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