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ドジャース、32年ぶりのワールドシリーズ制覇
レイズとドジャースが覇権を争った2020年のワールドシリーズは、第6戦を3-1で勝利したドジャースが4勝2敗でシリーズ制覇を果たし、1988年以来となるワールドチャンピオンの称号を手にした。
シリーズ全体を振り返って見ると、投打でレイズを上回ったドジャースが総合力の高さを見せつけて優勝を成し遂げたということになるのだろうが、結果的にシリーズの結末となった第6戦のみに焦点を当てると、レイズの継投ミスが、彼らのワールドシリーズそのものを犠牲にすることとなったと言えるだろう。
もちろん、これはあくまで結果論であるが、スポーツは結果が全ての世界である。厳然たる事実として、第6戦で先発したレイズのブレイク・スネルは5回1/3を投げた時点で2安打無失点9奪三振と、完全に試合を支配していた。
しかし、ケビン・キャッシュ監督は自軍が1-0でリードしている状況で、5回一死からスネルが9番のオースティン・バーンズに、この日2本目の安打を許し(打球が内野を越えたこと自体、これがこの日3度目だった)、一死1塁。
ここで打順がこの試合3巡目となるトップのムーキー・ベッツに戻るタイミングで、無双状態にあった(しかも投球数もまだ73球だった)エースを降板させたのである。
そして2番手のニック・アンダーソンはベッツに二塁打を許すと、暴投で1点を献上し、さらに内野ゴロ(フィルダースチョイス)でもう1点を失い、最終的にはこの2点目が決勝点となり、その後、レイズを零封したドジャースがコミッショナーズトロフィーを掲げることになった。
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現地スポーツ局『ESPN』が現地27日付で電子版に掲載した記事によると、試合後キャッシュ監督は継投の場面について次のように述べている。
「まあ、確かに上手く行かなかったので、あの判断は後悔している。でも、私は正しい思考プロセスだと思っていた。もう一度やり直したとしても、ニック・アンダーソンがあの回を乗り切ってくれることに最大限の自信を持っていたと思う」。
そして、あの場面でスネルを降板させた理由については、「あの判断に関する疑問は完全にリスペクトしているし、理解もしている。ブレイクは我々に勝つ機会をもたらしてくれた。彼は傑出していた。簡単な決断ではなかった。ムーキーやシーガーが、ブレイクと3巡目に対戦するのを避けたかったんだ」とコメント。
スネルが投げ続ける上で、あれ以上何かできることがあったのかと問われると、「今は、最適な答えがあるかどうか分からない。彼は我々が求めることができたもの以上のことを果たした」。
「あの打線を彼のやり方で限定したのは傑出していたし、彼は我々に勝利の機会をもたらしてくれた。それは良い質問であり、厳しい質問だ。最良の答えがあるかどうか、私には分からない」と答えたとのこと。
ちなみに、『ESPN』の記事によると、試合後ドジャースのデーブ・ロバーツ監督はスネルの交代について、「私はかなり嬉しかった。というのも、彼は我々を支配していたし、我々は彼が全く見えていなかったから」。
「我々は皆、スネルが試合からいなくなることに興奮したね」と述べ、ベッツは監督を見て微笑んだことを明かしたとのこと。確かに、ベッツ、コリー・シーガー、ジャスティン・ターナーの1番から3番打者は、2巡目までの計6打席で3人合わせて6三振していたのだから、それもそのはずである。
なお、『MLB.com』が試合後に掲載したスネル降板の是非を問う対談形式の記事の中で、同サイトのアナリストであるマイク・ペトリエッロは、「一般的に投手はオーダーとの対戦回数を重ねる毎に旗色が悪くなるのは理解しているが、彼らとて打順が1周すると自動的に木偶の坊になるわけではないし、スネルは3巡目の対戦に値した」。
「これは疑う余地のない事実だ」とした上で、スネルが対戦打者に許した1巡目のOPSを.592とし、2巡目と3巡目をそれぞれ.711と.742としている事実を指摘しつつ、「これがあの場面で彼を降板させる理由にはならない」と批評した。
さらに、この日の2番手としてマウンドに上がった救援投手がアンダーソンだったことが「より大きな問題」と述べ、レギュラーシーズンでは安定した救援を見せながらも、ポストシーズンでは、14回2/3で9失点していた右腕への継投について、「ポストシーズンでは顎髭を生やして、アンダーソンのユニフォームを着ていただけの男が出てきた」とコメントしている。
一方、『MLB.com』のデビッド・アドラー記者は同記事のなかで、「特定のチームを応援していない野球ファンとしては、個人の素晴らしい達成を応援しているし、そういう意味ではブレイク・スネルが彼自身のため、素晴らしい時間を作るところが見たかった」とした。
その上で、「しかし、レイズファンであれば、こういうタイプのイノベーションや戦術、そして戦術に対するコミットメントが、自分たちの応援するチームをワールドシリーズへ導いたことを理解しなければならない」と、データ重視の戦術履行がチームの成功に大きく貢献してきたことを指摘した。
しかし、SNS上ではアレックス・ロドリゲス、フランク・トーマス、そしてチッパー・ジョーンズといったレジェンドたち、さらにはトレバー・バウアーやノア・シンダーガードといった現役選手がこぞってスネル降板の判断を批判しており、反キャッシュ監督派(あるいはスネル続投支持派)が大勢を占めている模様。
『ワシントンポスト』は電子版に掲載した記事の中で、データ偏重の野球について、「現代野球のこういう部分は正直、うんざりだ』。
「これは分析と確率の上に成り立っており、問題はない……人間が感じたことや見たことを基に判断して試合をプレーし、運営する能力を奪わない限りは」とした上で、「情報は素晴らしいが、野球には心と魂があり、それがむしり取られている」と憤りを露にした。
MVP獲得のシーガーや走攻守で見せたベッツの躍動、シリーズ2勝で遂に念願を叶えたクレイトン・カーショーの勇姿、さらには歴史を塗り替えたランディ・アロザレナの怪物振りなど、今年のワールドシリーズはこれまで同様、後生に語り継がれるであろうストーリーに事欠かない。
だが、第6戦におけるスネル降板劇もまた、今後、事ある毎に何かと引き合いに出されるエピソードになりそうだ。
J SPORTS 編集部
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