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桃田賢斗
バドミントンの国別対抗戦トマス&ユーバー杯が27日、中国の成都市で開幕する。男子トマス杯、女子ユーバー杯は、ともに2複3単で3勝を競う団体戦だ。男子日本代表では、シングルスの桃田賢斗(NTT東日本)が、この大会を最後に日本代表活動から引退する。桃田は、2014年に日本代表入り。その年のトマス杯で日本の初優勝に貢献した。約10年にわたる代表活動の最初と最後をトマス杯での世界一で飾れるか、注目される。
日本のメンバーは、シングルスに奈良岡功大(NTT東日本)、西本拳太(ジェイテクト)、渡邉航貴(BIPROGY)、桃田の4人。ダブルスに、保木卓朗/小林優吾(トナミ運輸)、古賀輝/齋藤太一(NTT東日本)、岡村洋輝/三橋健也(BIPROGY)の3ペアという布陣だ。2複3単は、単、複、単、複、単の順番で行われ、同じ種目は、世界ランクの高い順に起用しなければならない。シングルスなら、奈良岡を起用する場合は1番手となり、桃田を起用する場合は3番手となる。第3シングルスまでもつれた場合、その試合の勝敗が、チーム戦の結果を決める。大一番で桃田に回って来る可能性は、十分にある。2018年~19年にかけて、勝率90%以上を誇って勝ち続けた桃田の知名度は、世界的。出場すれば、大きな注目が集まり、声援も受けるだろう。桃田に出番は回るか、最後に強い輝きを放つかという点において、男子の日本代表は、世界中のバドミントンファンが注目するチームとなる。
■大きなカギは「団体戦で活躍する奈良岡」が誕生するかどうか
西本 拳太
日本は、上位を狙える戦力を有している。シングルスの奈良岡と西本、ダブルスの保木/小林は、五輪出場権を獲得。五輪のメダル候補に名乗りを挙げるためにも、各国のエースを破る活躍が期待される。保木は「チャンスは、あると思う。本当に世界一を目指して頑張りたい」と意気込み、小林は「(緊張感が高く)集中力を使う部分は、五輪と似たようなところもあると思うが、伸び伸びとプレーしたい」と大舞台に備えた。
日本が躍進できるかどうか。大きなカギとなるのは、シングルスのエースとなる奈良岡だ。前回の2022年大会は、準決勝の第3シングルスで出番が回って来たが、緊張感に飲み込まれ、後に「気が付いたら、終わっていた」と言うほどに力を発揮できなかった。23年は、男女混合の国別対抗戦スディルマン杯に出場したが、中国のエース石宇奇(シー・ユーチ)に91分の激闘で逆転負け。アジア大会は、準々決勝まで出場していたが、勝負所となった準決勝は欠場。チームの力になれなかった。苦い思いをしながら、若手有望株からエースへ成長して来た。これまでの団体戦のイメージを払しょくしたい。
奈良岡は4月14日に閉幕したアジア選手権の戦いを終えた際に「団体戦で良いところがないので……(苦笑)。気合いは入っているんですけど、入り過ぎたら空回りするし、冷静に行こうとすると負けるし、よく分からないですけど(アジア大会の団体戦で活躍した)西本さんを見習って、やりたい」と意気込みを語った。ただし、パリ五輪を夏に控える中、負傷は避けたいところ。アジア選手権では、大会中に足の痛みを訴えていた。「団体戦で、第1シングルスに出る可能性が高いので、しっかり勝たないといけない。足を攣って負けているようじゃ、ダメ」と話していたが、どの程度、コンディションを整えられるか。気がかりなところだ。
■五輪レース直後の難しさ、若手の台頭で勢い乗れるか
奈良岡に限らず、今大会は、各チームの選手がどれだけ心身のコンディションを合わせられるかが、大きく影響しそうだ。五輪の出場権を獲得した選手は、五輪レースを終え、夏に向けてコンディションの再調整を始める時期になる。一方、五輪の出場を逃した選手、特にベテラン勢は、大目標を逃した後で、モチベーションを立て直すことが難しい時期となる。その点も分かっているシングルス3番手の渡邉は、28年ロサンゼルス五輪を目指す選手でもあり「盛り上げますよ、応援も含めて」とムードメーカーを買って出る姿勢を示した。世界ランクが高い順に出場するため、1番手、2番手同士の対戦で勝敗が決まると思われがちだが、五輪を控えるエース格は、実力を発揮できる状態を整えることが難しい。
ランキング下位の選手たちがどれだけ戦力になるかという点が、勝敗を左右する可能性も無視できない。その点で期待がかかるのは、ダブルス3番手となる岡村/三橋。昨年から本格的に組み始めたばかりで、今季初めて日本A代表入りしたペアだ。ともにサイズがある後衛タイプだが、横並びで相手にプレッシャーをかけるなど攻撃力は、強敵相手に通じるものがある。まだ戦い方の選び方、変え方をまだ学んでいる最中ではあるが、爆発力のある攻撃でチームに勢いを与えてもらいたいペアと言える。文字通りの総力戦。朴柱奉ヘッドコーチが、どのようなオーダーを組むかも注目される。
■2大会連続のベスト4を上回れるか、グループ戦のライバルは台湾
日本は、2020年、2022年と連続でベスト4。近年の一つの壁と言える。グループリーグを突破し、決勝の舞台に進出したい。優勝候補は、唯一、五輪出場権を単複で2枠ずつ獲得した中国。開催国の面子にかけてタイトルを奪いに行く。次いで、シングルスで2枠を勝ち取ったデンマーク、インドネシア、日本、インドが上位候補に挙がる。中でも、デンマークは、シングルスで世界ランク1位、4位、ダブルスで世界ランク4位と豪華な布陣(ランクは、いずれも4月16日更新時)。インドネシアは、単複ともに3番手まで強いのが特長。もつれたときほど底力を発揮しそうなラインナップだ。
過去の成績では、インドネシアが最多14回、中国が10回の優勝を誇るが、前回22年は、初めて4強入りしたインドが初優勝。少しずつ、上位を狙えるチームが増えており、混戦ムードが強まっている。上記チーム以外でも、マレーシアや台湾は割って入る可能性を秘めている。
大会に参加するのは、16チーム。4チームずつ4組に分かれてグループリーグを行い、各組上位2位が決勝トーナメントに進む。日本は、B組で台湾、ドイツ、チェコと同組。日本と台湾がグループ内の2強。まずは、1位通過を目指すことになる。台湾は、シングルス勢が24年に入ってから好調だ。24年の通算成績を争うワールドツアーランクでは、トップ10に5人がランクインしている。世界一タフな試合を制する男、周天成(チョウ・ティエンチェン)がシングルスのエース。2番手となる林俊易(リン・チュンイ)もワールドツアーランク1位の実力者だ。ダブルスのエースは、21年東京五輪金メダルの李洋/王齊麟(リー・ヤン/ワン・チーリン)。日本は、実力十分のライバルを破り、勢いに乗って決勝トーナメントを戦いたい。最大目標は、もちろん、初優勝を果たした2014年以来2度目の世界一。桃田が代表活動を始めた年の初戴冠から10年。有終の美を飾れるか、注目だ。
平野 貴也
1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。
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