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高校生の宮崎友花が初の日本A代表に選出
次世代に向けた改革の一端が見えた。日本バドミントン協会は25日に会見を行い、2024年の日本代表選手を発表した。夏のパリ五輪に出場の可能性がある世界ランク上位選手は、日本A代表をキープ。女子シングルスの宮崎友花(柳井商工高2年=4月から3年)、男子ダブルスの岡村洋輝/三橋健也(BIPROGY)がB代表からA代表へ昇格した。日本B代表には、23年12月の全日本総合選手権で初優勝した女子シングルスの杉山薫(BIPROGY)や、準優勝だった女子ダブルスの石川心菜/古根川美桜(NTT東日本)らが初めて選出された(文末参照)。
■桃田はA代表をキープ、世界ランクで上回る渡邉、大林はB代表
パリ五輪での活躍が期待されるA代表の主軸には、大きな変化がなかった。女子ダブルスの福島由紀/廣田彩花(丸杉)は、廣田が23年12月に左ひざ前十字じん帯断裂を負って戦列を離れているが、強化本部長も務める日本バドミントン協会の朝倉康善副会長は「大変な状況にあるのだろうとは思っているが、本人が手術をしないで(保存療法で)五輪に向けた取り組みをされることに関しては、しっかりと受け止めたい」と五輪レース継続に理解を示した。福島/廣田は、3月のフランスオープンで復帰の見込みだ。
男子シングルスは、世界ランク(1月23日更新)で、22位の渡邉航貴(BIPROGY)、31位の大林拓真(トナミ運輸)がB代表のまま。桃田賢斗(NTT東日本)は38位だが、A代表に残った。朝倉副会長は「桃田選手は、年末の全日本総合で優勝して、大変にインパクトもあった。五輪だけがすべてではないという見方もある」、「トマス杯やアジア大会など、五輪以外で日本がどれだけの成績を残すかという部分では、彼の存在は非常に大きい」と団体戦を念頭に置いた代表チームへの影響も含めた選考であることを説明した。
■A代表昇格の宮崎、岡村/三橋は、28年ロス五輪を見据えた次世代
男子ダブルスの岡村/三橋はペア結成1年でA代表入り
日本バドミントン協会の村井満会長は「五輪だけが代表の活動ではない。代表活動は、幅広くある。そこを視野に入れた人選。パリだけでなく、その次のロサンゼルス、ブリスベン、将来的な日本のバドミントン界を支える若手の人選等も進めている」と話した。今回の代表選考のポイントは、むしろ「パリ五輪以外」にあると言える。
例えば、新たにA代表に加わる宮崎、岡村/三橋は、28年ロサンゼルス五輪の主軸への成長が期待されている。高校生の宮崎は、22年の世界ジュニア選手権女王。23年は国際大会に本格参戦し、世界ランクも39位まで上昇。A代表が派遣されるBWFワールドツアースーパー500以上の出場権が確実になる32位に迫っている。岡村/三橋は、組み始めた23年シーズンに世界ランクを30位まで上昇。強化本部の舛田圭太テクニカルエキスパートは「組んで1年でここまで来れた、期待は大きい。男子ダブルスは、他種目に比べて世代交代が上手くいっていないところもある。活躍すれば選ばれる形を採れば、若い選手の励みにもなる」と次世代の旗頭としての活躍に期待をかけた。
B代表に初選出の舛木さくら(北都銀行)も19歳と若い。まだ国内の全国大会で16強レベルだが、朝倉副会長は「時間をかけて議論した。成績はないが、将来性に軸足を置いて見ていきたいというところで選考した」とポテンシャル評価して抜擢したことを明かした。
■シーズン中の代表選手の入れ替えを示唆
代表選手を発表する村井会長(左)、朝倉副会長
ほかに、見逃せない変化もあった。代表選手の人員削減だ。AとBを合わせて65人から58人に減少。男子ダブルスはA代表、B代表ともに4組から3組に減った。朝倉副会長は、男子ダブルスの選手数減少について「(4組目の)候補は出て来たが、決めかねた」と話した上で「1年間を通して、同じ選手が代表として頑張って行くという考え方ではなく、途中で伸びてくる選手を追加したりということは、今まで以上に柔軟にやって行きたいと考えている」と、シーズン中に代表選手が変更される可能性を示した。22年6月の日本ランキングサーキット終了後、男子シングルスでB代表だった奈良岡功大(FWDグループ)がA代表に昇格し、女子ダブルスで大竹望月/高橋美優(BIPROGY)をB代表に追加(→後に除外)した例など、過去にも代表選手の変更はあったが、今後は、国内の1種大会の成績や、選手のコンディションや伸びしろを考慮し、追加や入れ替えを行う方針だという。男子ダブルスについては「4枠目」を意識させ、競争を活性化する狙いが見える。
代表選手を減らすことは、次世代の若手の底上げを図る方針との両立が難しい。一方、可能になれば、代表活動の費用を抑え、国内大会を活性化できる。村井会長に聞くと「世界で戦う選手が、常に高い緊張感とテンションで戦えるように、あえて枠を減らしたところがある、と考えている。五輪レースの最後になると(代表選手の入れ替えは)難しくなるかもしれないが、4年(スパン)の早いタイミングでは、いろいろな人が代表を経験することも、底上げには良いのかもしれない。少しずつ、その辺のチューニングはしていくのではないかと思う」と、今後の代表選考の構造変革を見越した変更であることを示唆した。
■代表選手数削減の裏に見える、次期構造改革の狙い
パリ五輪を目前に控え、大きな変更は難しい時期だ。しかし、23年6月に就任した村井会長の下で構造改革を進める協会は、次のサイクルを見据えた改革案を練っている。現在は、A、B代表を編成し、B代表をA代表に近付けるために、B+と呼ばれる枠組でA代表と同じ上位大会の出場選手を増やしているが、初戦敗退が続き、強化に結び付いていない選手も見受けられる。この点を指摘すると、朝倉副会長は「組織の作り方も議論を始めている。長年、A、B代表の形でやっているが、一度枠を外したらどうか(という案もある)。できるようになると、解決策が見えて来る」と代表組織の改革を検討していることを明かした。
舛田テクニカルエキスパートも「所属企業の意向も強く、上へ(できるだけ上位大会へ)とやってきたが(戦略の)欠点も見つかって来た。(個々の)選手たちに合わせたプランを考えると、A、B(の枠組みが適切か)も議論しないといけない。(今は)五輪も控えているので、現状のままだが、今後は変えて行く方針も検討している」と国際大会への選手派遣について話した。
代表に選考されることや、世界ランクのポイントを稼ぐことばかりに傾倒せず、本来の目的である、いかにして勝ち続けられる選手を育てるかを考える。そのための最善策を考え直す時期が来ている。パリ五輪後、代表活動や現役生活を引退する選手が出てくれば、次の代表チーム編成に向けた動きは加速する。新たに選出された24年の日本代表選手への期待が高まるが、シーズン中の追加や入れ替えが示唆されたことで、変化も楽しみとなった。次の時代に向け、代表チームの選手選考、派遣方針がどう変わっていくのかも注目されるシーズンとなる。
■2024年バドミントン日本代表選手
▽日本A代表
<男子シングルス>
奈良岡功大(FWDグループ)、西本拳太(ジェイテクト)、桃田賢斗(NTT東日本)、常山幹太(トナミ運輸)
<女子シングルス>
山口茜(再春館製薬所)、大堀彩(トナミ運輸)、奥原希望(太陽ホールディングス)、宮崎友花(柳井商工高校)
<男子ダブルス>
保木卓朗/小林優吾(トナミ運輸)、古賀輝/齋藤太一(NTT東日本)、岡村洋輝/三橋健也(BIPROGY)
<女子ダブルス>
福島由紀/廣田彩花(丸杉)、志田千陽/松山奈未(再春館製薬所)、櫻本絢子/宮浦玲奈(ヨネックス)、永原和可那/松本麻佑(北都銀行)
<混合ダブルス>
渡辺勇大/東野有紗(BIPROGY)、緑川大輝/齋藤夏(NTT東日本/ACT SAIKYO)、金子祐樹/松友美佐紀(BIPROGY)、山下恭平/篠谷菜留(NTT東日本)
▽日本B代表
<男子シングルス>
大林拓真(トナミ運輸)、田中湧士(NTT東日本)、渡邉航貴(BIPROGY)、高橋洸士(トナミ運輸)、秦野陸(トナミ運輸)、小川翔梧(ジェイテクト)
<女子シングルス>
高橋明日香(ヨネックス)、仁平菜月(ヨネックス)、栗原あかり(筑波大学=再春館製薬所内定)、水津愛美(ACT SAIKYO)、杉山薫(BIPROGY)、舛木さくら(北都銀行)
<男子ダブルス>
柴田一樹/山田尚輝(NTT東日本)、金子真大/大田隼也(トナミ運輸)、霜上雄一/野村拓海(日立情報通信エンジニアリング)
<女子ダブルス>
中西貴映/岩永鈴(BIPROGY)、廣上瑠依/加藤佑奈(再春館製薬所)、石川心菜/古根川美桜(NTT東日本)
<混合ダブルス>
西大輝/佐藤灯(龍谷大学/ACT SAIKYO)、霜上雄一/保原彩夏(日立情報通信エンジニアリング/ヨネックス)
■2024年バドミントン日本代表スタッフ
朴柱奉HC
<A代表>
中西洋介、今別府香里、タン・キムハー、中島慶、ジェレミー・ガン
<B代表>
舛田圭太、崔相範、カレル・マイナキー、リー・ワンワー、浦井唯行
平野 貴也
1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。
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