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自分らしさを貫いた渡部暁斗
北京冬季五輪では個人LHと団体で銅メダルを獲得した渡部暁斗
この冬を振り返ってみると日本のエース渡部暁斗(北野建設)は、今シーズンのメイン試合である五輪に集中していたことがよくわかる。
これは以前のように若さで飛んで、勢いだけで疾走するクロカンスキーの姿ではない。
もはや確かなベテランの域にある彼だからこその熟練味溢れたテクニックと試合の駆け引きを合わせ、自分の持ち味を十二分にコース内で表現していた。
「やり切った、ということですかね。まだ、やれなくもない気持ちはあるにせよ、ここで、ひとつの区切りを迎えたのは、そうですね、確かなのかも知れません」
いつまでも潔いアキトである。このような姿勢が欧州の選手やFISコーディーネーターの人々に親しまれ、その一挙一動を暖かく見守られていたのだった。さらに欧州全域の選手たちからも尊敬の念を抱かれ、リスペクトされていたに他ならない。
いまだ、その去就は明らかにしてはおらず、今後の進退は不明のようであるが、それはそれだ。そこにアキトらしさがあればいい。
珠玉のメンバーと関係者一丸で掴んだ銅メダル
今シーズン飛躍を遂げた山本涼太
さて、今シーズンに彗星のごとく現れたヒーロー山本涼太(長野日野自動車)の存在を忘れてはならない。
W杯複合前半のジャンプではしばしば首位を記録し、後半のクロスカントリースキーで後続の強豪選手らにあっさりと抜き去られ、厳しく言えば無残にも置いていかれること幾度となく。だからこそ、その走力を上げようと懸命になっていた。
彼の父は、かつて明大スキー部で活躍した元全日本複合チームの山本直鋭さん。複合の日本選手権で2度優勝した名選手で長野冬季五輪出場を目指したが、叶わず1996年に引退。その後、長野県木島平村でジュニアの育成に力を注いでいたが5年前に50歳で亡くなった。かつて直鋭さんを取材したときは気迫充分でいつも熱心に応えてくれたのを思い出す。現・複合チームコーチで、あの日の丸イカ帽が格好よく似合い、日本複合を燦然とアピールしてくれた北村隆さんとは同僚の良きライバルであった。いまやその北村コーチが山本選手をしっかりと指導してくれているのだ。
また、長年に渡る複合クロスカントリースキーのサービスマンを務める山崎
(正しくは右上が「立」)正晴さんも、昔のいわば同僚のひとりで、北京五輪用に開発された圧勝のワックス、ガリウムを駆使して、ものすごく滑るスキーを作り上げてくれた。
ここに五輪表彰台の条件は見事に揃ったのである。
渡部暁斗の個人戦フィニッシュ直前の快走や、団体戦における4選手の激走はまさしく数々の歴戦を経験する山崎(正しくは右上が「立」)サービスマンのおかげであった。
さらに試合を観ていてくれた人々の中には、このシーンが見られたはずだ。
それは4走の大役を果たすべく果敢に走り抜き、突き放されず。そう、最後の競技場へ入る昇りから亡き父・直鋭さんのおぼろげな手が山本涼太の背中をぐいぐいと押し上げていたのを。その勢いと気力を受けて3位争いで、強豪オーストリアを綺麗にまいていったのだ。
北京冬季五輪でついに日本複合チームは28年ぶりのメダルとなる3位銅メダルを獲得した。
テレビ解説者で『行け、行けっ!』と、周回コースのシーンにおいて言葉短く叫び続けた前複合ヘッドコーチ阿部雅司(札幌オリンピックミュージアム名誉館長)、リベレツ世界選手権団体戦で金メダルをもたらした成田収平SAJ前競技本部長、同じく日本最強クロカンランナーで、そのリベレツで怒涛の走りを見せた湊祐介(イトイ産業スキー部コーチ)らの想いが一気に爆発したのだ。
一走に好調ジャンプで飛ばしまくった渡部善斗、二走はベテラン36歳の永井秀昭、三走で駆け引きが長ける渡部暁斗、そしてアンカーに新鋭の山本涼太という斬新きわまりない珠玉のメンバー。それもスキーストラクチャーとワックス選択に成功して抜群に滑るスキーがあればこその快挙だ!
より良き仕事を終えた山崎(正しくは右上が「立」)サービスマンは帰りの空港で4人に銅メダルを4つかけて貰い、それはもう、いやいやいやと恐縮したものの、なにやらうつむき加減で至極、うれしそうな表情を見せていた。
来シーズンに向けて
海外勢に目を移そう。COVIT-19の感染がみられ、強者リーベル(ノルウェー)やら実績あるフレンツェル(ドイツ)などは、やはりトレーニング不足に陥り、他にもW杯選手では精彩に欠ける選手が相次いだ。
また好調を維持した若きランパルタ(オーストリア)や大型選手のオフテブロ(ノルウェー)、好ランナーのガイガー(ドイツ)、経験豊富なリーゼック(ドイツ)、姉も優秀なジャンプ選手だった若手ファイスト(ドイツ)などは、来るシーズンの台風の目になってこよう。
それで簡単には負けてはいけない、いまの日本チームには若手で期待の星、谷地宙(早大)と木村幸大(中大)、そして五輪メダリストで勇者の次期エース山本涼太がいる。
希望と夢がたくさんある日本複合チームから来シーズンも目が離せない。
●ノルディック複合FISワールドカップ2021/2022シーズン全成績
1. M.リーベル(NOR)1383
2. J.ランパルタ(AUT)1362
3. V.ガイガー(GER)979
4. J.グラーバク(NOR)783
5. K.イルベス(EST)627
6. J.L.オフテブロ(NOR)618
7. E.フレンツェル(GER)592
8. T.ウェーバー(GER)542
9. I.ヘロラ(FIN)530
10. M.ゼイドル(AUT)529
11. 渡部 暁斗(北野建設)528
12. J.シュミッド(GER)480
13. J.リーゼック(GER)468
14. E.アンデルセン(NOR)450
15. 山本 涼太(長野日野自動車)447
22. 渡部 善斗(北野建設)235
25. 永井 陽一(岐阜日野自動車)140
30. 谷地 宙(早大)83
32. 木村 幸大(中大)78
文:岩瀬孝文
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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