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昨シーズン、世界のジャンプ界が震撼した小林陵侑(土屋ホーム スキー部) の飛翔。第2戦のW杯初優勝を皮切りに、全28戦で13勝と圧倒的な強さを見せつけ、アジア人初のW杯総合王者に輝いた。
周囲は連覇を期待する中、 “王者”は何を想い、どのように今シーズンに臨むか?欧州に飛び立つ直前の空港でインタビューを行った。
良い緊張感を生んでくれたメンタルトレーニング
──昨シーズンはどのようなシーズンになりましたか
小林:
最初から最後まで凄く好調で楽しいシーズンでしたね。
──今シーズンいけるな、と手応えを掴んだタイミングはあったのでしょうか
小林:
手応えという面では、開幕前のサマージャンプからジャンプには自信がありました。
──一昨年シーズンと昨シーズン、何か違いはあったのでしょうか
小林:
ジャンプの内容が全く違いますね。具体的にはアプローチを見直しました。アプローチを夏場に変えて良い感触を得て、開幕からもずっと良い感触でした。昨年からメンタルトレーニングや脳波トレーニングも始めましたし。
──脳波トレーニングについて教えてください
小林:
脳波を図り、カウンセリングをしてそれを基にトレーニングします。試合前の心理状況をコントロールしやすくするために昨年の夏から取り組み始めました。元々緊張しやすいタイプなのですが、その効果もあり心理状態を一定に保つことができました。緊張が無くなるということはないのですが、良い緊張感をもって飛ぶことができました。
──ジャンプという競技は2本揃えて結果を出すのが難しいと言われています。ジャンプ競技特有の難しさはメンタルトレーニングで変わりましたか。
小林:
変わりましたね。1本完璧に飛ぶことさえも難しい競技だと思っていますから。
──勝つことで海外のライバル選手たちから視線はかわりましたか
小林:
いえ(笑)去年も一昨年もサマーグランプリでは勝っていたので、周りは小林の好調はどうせ冬まで持たないだろと思っていたでしょうからね(笑)あれ、今シーズンは冬でも調子を持たせてきたぞ!と皆が思ったでしょうね。
──海外ファンからの視線は変わりましたか
小林:
街に行ったら大騒ぎになりました。マクドナルドで食事をしているのを見られていて……次の会場で「この前マクドナルドで食べてたよね? ここでも食べるんだろ?」って言われましたし(笑)
──勝利を重ねる度に自信もついていったのでしょうか
小林:
最初はそうでした。ただ、途中からはプレッシャーが掛かりましたね。特に連勝中は「次も大丈夫でしょう!」って周囲から言われていたので。
──途中で調子を崩した時期もあったかと思うのですが、そういったプレッシャーを感じていた時期だったのでしょうか
小林:
心理面もそうでしたが、フィジカルの面ですね。シーズン中ずっと維持するのは難しくて、同じ動作をしていたとしても同じジャンプが出来るわけではありません。ジャンプ台など環境面も変わりますからね。転ぶことさえもありましたから。
考えさえもしていなかったジャンプ週間グランドスラム
──ジャンプ週間の凄さを実感してみていかがでしたか
小林:
一昨年カミル・ストッフ選手がグランドスラムを達成した時、会場は異常な盛り上がり方でした。近年こんなことは2度と起きないだろうと思っていたのですが…昨年自分が達成しちゃいました(笑)あの時と同じような会場の盛り上がり方だったので、素直に嬉しかったですね。
──W杯の1勝とジャンプ週間の1勝、勝利の重みは違いますか
小林:
自分は一緒だと思っています。ただジャンプ週間は伝統ある大会ですし、グランドスラムは史上3人目しか達成していません。盛り上がり方も他の大会とは全く違いますからね。
──ジャンパーとしてW杯の総合優勝と五輪の金メダルはどちらに重きを置いていますか。
小林:
五輪で金メダルを獲得した日本人はいるので、獲得をイメージできるのですがW杯の総合優勝となると前代未聞なので、考えもしなかったです。そもそも出来るものではないだろうと。
「自分が飛んでいて楽しい」ジャンプを見せたい
──今シーズン磨いてきたことは
小林:
技術は全体的に年々進歩していくものなので、先ずはそれに置いて行かれないようにすることです。今年の春からコーチが変わったこともあり、トレーニングは新鮮です。(今シーズンからリヒャルト・シャラート氏がコーチに就任)フィジカルト面ではジャンプのGに耐えられるように下半身強化を中心にトレーニングしています。前コーチのヤンさんは日本語が堪能だったのですが、シャラート新コーチは英語とドイツ語のみなので、ある意味プレッシャーですが(笑)語学面も強化されていますよ。
──総合王者として臨む新シーズンはどのような気持ちですか
小林:
総合連覇はかなり難しく、誰もするとは思っていないでしょうから(笑)そういった意味でプレッシャーはないです。ただチャンスはなくはないと思っています。
──開幕戦(11/23-24 ヴィスワ/ポーランド)の見どころを教えてください。
小林:
ヴィスワは凄く小さな台ですが、ジャンプ台の形状的に大変です。シーズン初めなので雪も少なく路面はカリカリのアイスバーン、落ちた瞬間にもの凄いGが掛かります。初戦にしては辛い台で、転ぶ選手もいるなど技術的に難しいところが見どころですね。ただ自分にとって苦手意識はないのでチャンスはあると思います。
──今シーズンの意気込み、目標は
小林:
先ずは目の前の1戦1戦を大事にクリアーしていくことですね。そして自分が一番大事にしていることは、「自分が飛んでいて楽しい」というジャンプをすることです。「自分が飛んでいて楽しいジャンプ」は見ている人たちも楽しんでくれるはずですから。色々な人に見てもらってジャンプが楽しい競技だと感じて欲しいですね。
今シーズン先ずは1勝して、テレビの前の皆さんを沸かせたいです!
J SPORTS 編集部
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