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レジェンドを目指して。ジャンプ界の新鋭が世界に挑む!
「青春の挑戦者」4年に1度のシーズンがやってきた!2017-2018ウインタースポーツ編 by J SPORTS 編集部2015-16シーズンに初のワールドカップ出場で7位入賞を果たし、日本ジャンプ界期待の新星として注目を浴びた小林陵侑。しかし、若きエースとしての自信と自覚を持って臨んだ昨シーズンは、悔しさの連続だった。負けから学んだことをかみしめて、今シーズン、初の五輪出場を目指す!
小林陵侑(土屋ホーム) RYOYU KOBAYASHI
スキージャンプ
1996年11月8日 岩手県八幡平市生まれ
2012年 全国中学校スキー大会スペシャルジャンプ 優勝、全国中学校スキー大会コンバインド 優勝
2014年 国体コンバインド(少年)優勝、国体スペシャルジャンプ(少年)2位
2015年 国体コンバインド(少年)優勝、国体スペシャルジャンプ(少年)2位
2016年 FISワールドカップ(ザコパネ) 7位、UHF杯優勝、FISワールドカップ(プラニツァ) 団体 4位
2017年 FIS世界選手権 団体7位、FISワールドカップ(オスロ) 団体 5位
悔しさからの出発
今年の8月、大倉山で行われたサマージャンプで、2本とも130メートルを超えるジャンプを見せ、2位に35.5点差を付けて優勝を飾った小林陵侑。今シーズンの彼の活躍を期待させるには十分なものだった。力強い飛び出しは、未来のメダリスト候補としての評価も高い。一昨年のシーズン、ジャンプ・ワールドカップ ザコパネ大会初出場で7位入賞。さらにジャンプアップをするはずだった昨シーズンは、20戦以上の戦いで、初戦の33位が最高位。彼にとっては悔しさしか残らなかったという。
「練習も試合も多くて、コンディショニングも含めて、思ったような成績を残せなかったんです。シーズン前、夏のトレーニングでジャンプに集中しすぎて、特に筋トレはやりすぎて燃え尽きちゃった感があって…。今年の夏はトレーナーと相談しながら取り組みました。ジャンプのための筋肉の動かし方を学びながら、運動機能の筋トレメニューを見直して、バランスのいいトレーニングを心がけました。」
ジャンプは、長いシーズンを戦うための、瞬発力、筋持久力、感性など様々な能力をバランスよく向上させる必要がある。小林は、世界で戦うための体作りを根本から始め、多彩なトレーニングメニューを採り入れ、必要となる運動能力はすべて向上させていった。サマージャンプの試合では、早くもその成果が表れた。それでも浮かれることなく、冷静さを保ちながら、
「去年はシーズン入りの部分でミスをしてしまったところがあったので、今年は慎重さを持ってシーズンに入っていきたい。夏の試合で調子は良かったので、このまま調子を落とさないように戦っていくつもりです。」
目標でありライバルの兄を超えて
小林の出身は岩手県八幡平市。八幡平はスキーどころとしては有名だが、決してジャンプのさかんな地域ではなかった。それでも、兄の潤志郎(雪印メグミルクスキー部)、姉の論果(CHINTAIスキークラブ)。高校生の弟龍尚(盛岡中央高等学校)もジャンプ選手。4きょうだいそろってジャンパーだ。
「父が教員をしていたとき、スキー部の顧問をしていて、ジャンプの担当になったのがきっかけです。父がジャンプの練習を見に連れて行ってくれて、そのとき初めてジャンプを飛んでいる姿を見たんです。小学校にも上がっていないときのことで、それから兄貴が始めて、みんな続くように始めました。」
八幡平には競技に利用できるようなちゃんとしたジャンプ台がなく、車で1時間ぐらいかけて、家族でジャンプの練習に出かけていったという。中でも兄の潤志郎は、とても大きな存在だった。コンバインドの選手としてジュニア世界選手権優勝。ジャンプ選手に転向した後、ワールドカップにも出場。憧れでもあり、目標だったという。陵侑自身も、高校までジャンプとコンバインドで好成績を残していたが、兄と同じジャンプ選手として土屋ホームに入社。選手として自分が成長してきた今、最大のライバルでもある。今年のサマージャンプグランプリ白馬大会では、兄弟で表彰台に乗ったものの、優勝は兄に譲ることに。
「普段も基本的にはジャンプの話はしないです。兄はチームも違いますし、一番のライバルなのでとにかく今は負けたくない!」
ちなみに姉、弟もジャンプ選手だ。
「姉もワールドカップに出て活躍して欲しいです。弟は今高校生ですが、すごく頑張っているので応援してあげたい、でも、将来的には兄と同じように敵になるかもしれない(笑)」
ゆくゆくは、4人そろってオリンピック出場の可能性もある。
「父は、きょうだい全員そろってオリンピックに出ることを願っていると思います。」レジェンドのように、長く強い選手を目指す
ライバルの兄がいる中、今シーズンは、4年に1度のオリンピック出場が最大の目標となる。所属する土屋ホームスキー部ではチーム監督で、現役選手でもあるジャンプ界のレジェンド、葛西紀明選手をはじめ、オリンピック出場経験のあるチームメートから、オリンピックについていろいろ耳にする機会も多い。
「オリンピックとワールドカップは違うとみんなから聞いているので、出場できたらそれを自分で実感したいと思っています。そして、今自分がやれる精一杯のことを全て出してきたい!」
もちろん、メダルのイメージもできている。ただ、小林が見ているのは平昌だけではない。2022年の北京。さらにもっと先まで見据えている。
「オリンピックで金メダルを獲るには、シーズンを通して強さを発揮できる選手にならないといけない。平均して勝てる強さをこれから身に着けたいと思っています。そのためには下半身の基礎筋肉をしっかり付けて、上半身は最低限の筋肉で脂肪も極力落とす。ジャンプは空中で姿勢をキープするので、それに耐えるための筋持久力。飛び出すときの足の力も必要です。」
昨年の反省と悔しさから学び、それを強さに変えていけるのは、一流のアスリートの証だ。そして、メンタルの面では、コーチングに当たるチームのヤンネ・バータイネンコーチからは「リラックス。焦らない気持ちが重要」。それができれば試合で勝てると、気持ちが入りすぎてしまう小林に対してアドバイスもあったという。
「ワールドカップクラスになるとみんな高いレベルの選手ばかりで、その差はわずかなんです。でも、ジャンプの勝敗は、最後は風の力がとても重要。でも、それがなくても安定して成績を残せるレベルの体を作って、葛西監督のように、長く、強い選手になることを目指します。」
その決意を持って、小林の2017-18シーズンの戦いが続く。
J SPORTS 編集部
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