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スキー コラム 2014年1月27日

鈴木芙由子(バイアスロン女子):きれいでかわいく、速くて強い。そういう選手になりたい!アスリートとしても輝く女性自衛官

それぞれの4年間 ~冬の一瞬に縣ける女性アスリートの肖像~ by J SPORTS 編集部
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バイアスロンはクロスカントリースキーとライフル射撃の2種目を組み合わせた競技。コースを1周するごとに射撃(伏射または立射)を行う「動」と「静」の二つの性格を併せ持つ。日本では知名度は低いが、発祥地の北欧を中心にヨーロッパでは人気が高い。銃を扱う競技の特性上、日本では陸上自衛隊冬季戦技教育隊(札幌市、略称冬戦教)が国際級のほぼすべての選手を輩出している。高校で、クロスカントリー競技で力を発揮していた鈴木は、平成19年3月、この冬戦教にスカウトされて入隊。そこでバイアスロンと出合った。ちなみに、冬戦教は積雪寒冷地の行動のスペシャリストを養成する自衛隊部隊でもあり、バンクーバーオリンピックに続き、ソチオリンピックに2大会連続で出場する鈴木芙由子は、アスリートとしての顔のほかに、「女性自衛官」(階級は3等陸曹)としての顔も持つ。

「もともとクロスカントリースキーをやっていて、(フリー走法で滑る)スケーティングのほうが得意でした。バイアスロンはスケーティングだけだったので、軽い感じで始めました。隣の家の方が冬戦教のバイアスロン選手だったこともあり、競技に対して怖いというようなイメージもありませんでした」

また、鈴木はマタギ(伝統的狩猟)だった祖父・故市蔵さんの血を引き、射撃でも他の選手に秀でた才能を見せ、入隊後徐々に頭角を現した。持ち前のクロスカントリーの力もあり、入隊1、2年後に行われた日本選手権の15km個人でそれぞれ優勝、入隊からわずか3年でバンクーバーオリンピック出場を果たした。

バイアスロン競技とは?

スプリントはコース(2.5キロ)1周ごとに2回、パシュートは1周ごとに4回、射撃(伏射・立射)を行います。
パシュートは、スプリントの上位60人が出場します。
スプリント、パシュートともに、射撃ミス1発を出すとペナルティコース(150メートル)を走ります。
インディビデュアル(個人)は4回、射撃(伏射・立射)を行い、射撃ミス1発を出すと、タイムに1分加算されます。

初めて挑んだ前回バンクーバーオリンピックは、鈴木にとって世界トップレベルの選手との差を痛感させられた大会でもあった。7.5kmスプリント、10kmパシュート、15km個人と3種目に出場し、いずれも40~50位台で終え、入賞どころか、上位をうかがうことはできなかった。

「初めてのオリンピックということで、最初の種目は泣きたくなるくらい緊張しました。すべての3種目を終えた時、何もかもレベルが低過ぎると思いました。筋力、持久力、射撃の命中率すべてです。これからの4年間はそれら全部を高めていかないといけない、全体を底上げしないといけない、と感じました。また、何より足りないと思ったのは、自分を追い込んで全力を出し切ること。手を抜いているつもりはないのですが、いざつらくなると走れなくなってしまい、そこで外国選手との気迫の差を感じました」

ソチにつながる鈴木の4年間がこの時始まった。

バンクーバーから4年を経た今、まぎれもなく日本バイアスロン女子のエースに成長した。1月20日に東京都内で行われた日本代表選手団の結団式で主将を務めるスキージャンプの葛西紀明選手が掲げた「一意専心」の言葉のように、この4年間、真摯に練習を続けてきた。1秒でも速く、タイムを縮めるためにすべてのレベルを引き上げてきた。バンクーバーの時に21歳だった年齢は、25歳になり、心身も大きく変わった。

「バンクーバーが終わったばかりのころは先が見えず、ソチのことも考えられませんでした。強くなるためにはどうすればいいか、世界で戦える選手になるためにはどうすればいいか、という思いで1年1年、練習してきました」

それでもまだまだ目指すところの70%ぐらいとは言う。だが、この4年間で積み重ねてきた努力と経験は今回のソチで大きな力になっていく。

「20歳のころは疲れって何?というぐらい勢いがありました。年齢を重ねるとともに、少しずつ疲れが取れにくくなり、体が凝りやすくなってきましたが、どれくらいのマッサージをすればいいかなど、今のほうが自分の体を知りコントロールできています」

シーズンオフの夏季に、ローラースキーを履いて行う「サマーバイアスロン」の2012年の大会で、女子3種目を完全制覇するなど着実に力を付けてきた鈴木。昨年5月には、自衛隊体育学校(東京都練馬区、略称体校)で行われた合同練習で大きな収穫を得た。体校は冬戦教とともに「特別体育課程」を置き、国際大会等で成果を挙げることを“任務”として与えられ、日夜練習に励んでいる。ロンドンオリンピックではレスリングで小原日登美選手、米満達弘選手の2人が優勝するなど合わせて4個のメダルを獲得した。合同練習では両選手とともに、体幹部を鍛えるトレーニングなどを行った。

「幅広い鍛え方があることが分かりました。クロスカントリースキーで走る際に膝を内側に入れるくせがあり、それは直らないと思っていたのですが、直すことができ、直すことによって推進力を高めることができました。また、体校の皆さんから応援されていることが本当に伝わりました」

一端ライフルを構えると、凛々しい姿を見せる鈴木だが、普段の生活はと言うと、練習や大会出場に続く中、時には競技を忘れて自分を開放するために、カラオケで歌うと言う、20代の女性らしい素顔も覗かせる。「一人でカラオケにいくのが好きです。みんなでは行きません。一人で大きい声で歌うとストレス発散になります。よく歌うのは絢香の曲です」

今はそのカラオケも封印して、チームメイトとともにソチへと向かった。今大会では、個人3種目に加えて、4人でつなぐリレーにも出場する。「個人種目の目標は10位以内。本当に難しいと分かっているけど、できると信じて挑むことで、ソチ以降にもつながる何かに気付けると思う。自分自身の可能性を信じて挑戦します。リレーではチームワークを大切にしてみんなの力を一つにします。一走を務めるので、自分の順位がそのままチームの順位になると思い、入賞できる順位でつなぐ、という使命感を持って戦います」

バイアスロン競技は経験がそのまま力につながっていく競技だけに、当然次のオリンピックも視野に入っているという。そんな鈴木に、さらなる目標を訊いてみると、女性アスリートとして輝くこともまた“目標”の1つだと言う。

「ずっとこの競技に打ち込んできましたが、まわりは結婚したり子どもを産んだりしている、という話を聞くと私って出遅れているのかな、と思ったりもします。でも、競技を通して、ちょっとしたいいことがあるだけで毎日が幸せだし、目標を見つけることで充実感も得られます。これから先も選手として成長したいというのはもちろんですが、それだけでなく、きれいでかわいく、元気があって、速くて強い。そういう選手になりたいですね!」

PHOTO=望月仁

鈴木芙由子(陸自冬季戦技教育隊)すずき ふゆこ

1989年1月13日秋田県出身。
秋田県・米内沢高でクロスカントリー選手として活躍。同高卒業後、陸上自衛隊冬季戦技教育隊に入隊し、バイアスロンを始める。高校時代に鍛えた走力に加え、射撃でもマタギ(伝統的狩猟)をなりわいとしていた祖父の故市蔵さんの血を引いた才能を見せ、入隊1、2年後の2008年、2009年日本選手権15キロ個人を連覇。先輩らを抑えバンクーバーオリンピック代表に選ばれた。同オリンピックでは3種目で健闘し、その後も2012年世界選手権(独)の15キロ個人を国際大会自身最高位の18位で終えるなど、女子バイアスロンの第一人者として活躍している。

J SPORTS編集部

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