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【プレビュー:ロシアフィギュアスケート選手権2020 アイスダンス】アイスダンス大国ロシア復活への狼煙。ヴィクトリア・シニツィナ「手を繋いだ瞬間に、ひとつになれた」
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部ロシアがアイスダンス大国としての復活を果たしつつある。ヴィクトリア・シニツィナ/ニキータ・カツァラポフ組はいよいよカップルとして完成し、アレクサンドラ・ステパノワ/イワン・ブキン組もさらに一段階レベルを上げた。この2組こそが、国内ナンバーワンの座を巡って、ロシアナショナルでぶつかり合う。
「難しい決断だったし、長い道のりだった」。昨世界選手権の記者会見で、カツァラポフはこう振り返った。ソチ五輪で銅メダルを手にしたシーズンの終わりに、長年のパートナーと関係を解消。新たなキャリアを歩むことに決めた。たしかに元ワールドジュニア金メダリストとはいえ、格上のパートナーと組むのは「最初は少し怖かった」、とシニツィナも素直に告白した。ただし「だけど手を繋いだ瞬間に、ひとつになれたの」と続けると、隣に座るカツァラポフと優しく微笑みあった。
昨季までの5年間で3度もコーチを変えた。お互いの元パートナー、つまりイリニフ/ジガンシン組が結成直後にロシアナショナルを制した一方で、2人はしばらく苦戦を強いられた。両者のスキルの差や関係性が批判されたことも。それでも昨季、とうとうロシアナショナルで頂点に立った。世界選手権では銀メダルに輝いた。
かつてのパートナーの幻影は、完全に振り払った。今シーズンは中国杯でGP大会初制覇。続くロステレコム杯でも優勝をさらいとった。
魅力的なプログラムも2本揃った。RD「雨に唄えば」は軽やかでスピードに乗ったステップが見どころ。楽しそうに口ずさみながら踊るカツァラポフからは、2人の関係性の良さもうかがい知れる。一方のFD「イジョルニ・我が母の教えたまいし歌」は、叙情的に踊り上げる。繊細なメロディに乗って、シニツィナの美しさがひときわ際立つ。
メダルを期待されたGPファイナルでは、予想外の6位に沈んだ。FDのコレオスライディングに「転倒」の判定が下されたのだ。この減点がなければ、スコア的には表彰台争いにも加われたはずだった。
ならばミスさえきっちり修正すればいい。ロシアナショナル連覇へ向けて、シニツィナ/カツァラポフ組は準備が出来ている。
結成6年目のシニツィナ/カツァラポフ組に対して、24歳ステパノワと26歳ブキンは、すでに13年もの長い年月を共有してきた。カツァラポフたちの3年後、シニツィナたちの翌年に、2人でジュニア世界王座に上り詰めた。「次代のチャンピオン」と期待され、シニア転向2年目からは早くもGP大会の表彰台常連となった。欧州選手権でも、昨季を含む3度の表彰台に乗っている。
カルガリー五輪のアイスダンス金メダリストを父に持つブキンと、モデル顔負けのすらりとした肢体を持つステパノワは、ただし思わぬ足踏みを余儀なくされた。平昌五輪へのロシア代表メンバーに選ばれながらも、IOCから出場を認められなかったのだ……。「いまだに理解できないし、衝撃だった」と振り返る2人とチーム陣営は、今季に関しては(特に4位で終えたGPファイナルに関しては)、採点が少々厳しすぎると悩んでいるようだ。
それでも今季GPシリーズでは2大会共に2位に食い込んだ。スケートアメリカのFDではトップスコアをマーク。NHK杯ではスケートアメリカ以上の高得点を叩き出し、パパダキス/シゼロンの次点にもつけている。
それにしてもRDムーランルージュは、なんたる眼福だろう。真紅のドレスに身を包み、美しいブロンドを夜会巻きにしたステパノワが、燕尾服姿のブキンにエスコートされる姿は、まさにゴージャスとしか言いようがない。演技の合間にキュートな工夫がたっぷり詰め込まれ、極めつけはフィニッシュポーズ……!もちろん得意の高速ツイズルでは、はっとするような独創的な入りを披露してくれる。対するFDはシンプルな黒のコスチュームで、2人の美しいシルエットがいっそう際立つ。
ロシアナショナルの注目はシニツィナ/カツァラポフ組とステパノワ/ブキン組の頂上決戦だけではない。今年は特に3位争いも見逃せない。なにしろロシアはアイスダンスで、5年ぶりに、世界選手権3枠を取り戻したのだ!
3番手候補の筆頭は、単純に考えれば、五輪出場経験を持つティファニー・ザゴルスキー/ジョナサン・ゲレイロ組だろうか。RDでは3位と好発進ながらも、FDでゲレイロの靴紐が切れるという不幸なアクシデントのせいで7位に泣いた昨季ナショナルの雪辱を、絶対に果たしたいところ。もちろん入れ替わりで表彰台に上ったソフィヤ・エフドキモワ/エゴール・バジン組だって、3番目の場所を譲るつもりなどないはずだ。
2年前のジュニアGPファイナル&ジュニアワールド金メダリストのアナスタシア・スコプツォワ/キリル・アリョーシン組、1年前のジュニアGPファイナル王者&ジュニアワールド銀のソフィア・シェフチェンコ/イーゴリ・エリョーメンコ組という若いカップルも、先輩たちに負けない高いポテンシャルを誇る。
大会直前の12月23日、残念なニュースも飛び込んできた。2年連続でロシアナショナル4位につけ、今年こそメダル獲得が期待されたベティナ・ポポワ/セルゲイ・モズゴフ組が、男性側の故障で棄権を発表したのだ。回復を願いつつ、独特すぎる楽しいプログラムが再び見られる日を、首を長くして待ちたい。
文:J SPORTS 編集部
J SPORTS 編集部
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