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【プレビュー:ロシアフィギュアスケート選手権2020 ペア】ボイコワ/コズロフスキー組にかかる初優勝への大きな期待。若手組の爽やかな魅力に注目。
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部話題の女子シングル3人娘に負けないほど、ペアの世界でも、ロシアの若手3組が瑞々しく爽やかな魅力を振りまいている。
昨世界選3位ナタリヤ・ザビアコ/アレクサンドル・エンベルト組と、ソチ五輪銀メダリストのクセニヤ・ストルボワが新たにアンドレイ・ノボセロフと結成したペアとが、いずれも男性側の故障で長期欠場を余儀なくされている。なによりロシアナショナル2連覇中のエフゲーニャ・タラソワ/ウラジーミル・モロゾフ組が、今シーズンここまで決して本調子ではない。
するとグランプリシリーズで大活躍し、GPファイナルでも高いポテンシャルを披露した3組が……一気にロシアナショナルで世代交代を印象づけてしまうかもしれない!
中でも初優勝への大きな期待がかかるのが、来年1月に18歳の誕生日を迎えるアレクサンドラ・ボイコワと、12月23日に20歳になったばかりのドミトリー・コズロフスキーの2人だろう。2017年世界ジュニア銀の同組は、昨シーズン、本格シニア転向1年目で早くも高い将来性を証明済み。昨ナショナルでは3位台乗りを成功させ、続く欧州選手権でも銅メダルを手に入れた。
今季のボイコワ/コズロフスキー組は、さらなる成長を見せた。GPシリーズでは「先輩たち」をまさしく凌駕。タラソワ/モロゾフ組と同じ2大会へのアサインは、一見不利に思われたが、2大会ともに堂々たる演技で金メダルをさらいとったのだ。特にロステレコム杯は、難度も質も高いエレメンツを次々と成功させ、プログラム通してほぼノーミス。TES(テクニカルエレメンツコンポーネント)だけで見れば、ショート、フリーのいずれでも、今GPシリーズ全体を通しての最高得点を記録した。現役世界チャンピオンにして、GPファイナル覇者のウェンジン・スイ/ツォン・ハン組のスコアさえも上回った!
2人の魅力は技術力だけに留まらない。美しいユニゾンに、柔らかく丁寧な所作、甘くノーブルな気品。昨季までのFSくるみ割り人形ではクラシカルな雰囲気を見事に醸し出したが、FSジェームス・ボンドはクールでかっこいい。そう、PCS(プログラムコンポーツネンツスコア)だって、GPシリーズではスイ/ハン組に次ぐハイスコアを記録しているのだ。
ロステレコム杯FS演技直後に、雄叫びと共にガッツポーズを幾度となく突き上げたボイコワ/コズロフスキー組は、ファイナルSPでも力強い演技を実現させた。「自分たちの魂、自分たちの進む道」という意味を込めたSPマイ・ウェイで、首位に肉薄するスコアで2位につけた。ただ残念ながらFSは序盤から小さなミスが重なり、最終盤のリフトで失敗。最終的に4位で涙をのんだ。
コーチが「明日はまた別の日。ぐっすり眠って、また前に進むだけ」と語ったように、ボイコワ/コズロフスキー組の2人は、きっとロシアナショナルへと向けて精力的に調整を積んできたはずだ。「この経験を糧に、もはや同じ失敗を繰り返さない」と本人たちも固く誓う。
16歳(大晦日に17歳になる)と20歳のダリア・パブリュチェンコ/デニス・ホディキン組と、18歳と20歳のアナスタシア・ミーシナ/アレクサンドル・ガリャモフ組も、若く、フレッシュで、やはり高い技術力には定評がある。
パブリュチェンコ/ホディキン組は昨季すでに、GPシリーズ銅メダル2つでファイナルへと駒を進めた。スピード感とキレのあるステップが小気味良い2人は、今季はさらに進化して銀2つ。しかもファイナルのSPでは、3位に食い込む好パフォーマンスさえ披露した。FSでは序盤ステップでのまさかの転倒が影響したか、思い通りのパフォーマンスが出来ずに最下位6位に沈んだが……。
それでもロシアナショナルに向けた手応えはつかんだはず。ペアのソロジャンプとしては基礎点の高い3Fを……GPシリーズではアテンションやエッジエラーがついたものだが、ファイナルのFSではついにクリーンに着地した!
高難度ジャンプなら、ミーシナ/ガリャモフ組も負けてはいない。NHK杯FSでは3S+1Eu+3Sのコンビネーションをピタリと決めた。ロシアナショナルでも成功させれば、ものすごい得点源になる。
安定感のある演技も、ミーシナ/ガリャモフ組の強みだろう。おかげで結成3年目、シニア転向1年目にしてGPファイナル進出、さらにはGPファイナル3位という「サプライズ」を成し遂げた。それにしても元パートナーとジュニアGPファイナルを、現パートナーとジュニアGPファイナル&世界ジュニアを制したミーシナは、身体能力がとてつもなく高い。その彼女をがっちりと受け止めるガリャモフの、逞しさと包容力もピカイチ!
そのガリャモフが「GPファイナルよりロシアナショナルのほうが重要」と強調するように、伝統的にロシアは国内選手権の結果を重視してきた。つまりヨーロッパ選手権と世界選手権への出場権(それぞれ3枠)の行方は、GPシリーズの出来ではなく、国内のライバルたちとの直接対決で決するのだ。
だからこそ今季のGPファイナル行きを逃したタラソワ/モロゾフ組にも、シーズン後半に向けて立て直すチャンスは十分にある。
世界選では3年連続でメダルを持ち帰り、欧州は優勝2回を含む5年連続表彰台を実現させてきたロシアナンバーワンペア。GPシリーズ中の調子がイマイチだったのは……おそらく自己改革の真っ最中だから。今季の2人は新たにフロリダヘ飛び、ロシア人ズエワの下でトレーニングを開始した。モロゾフ曰く「僕らに足りないもの」を探し求めるため。それが表現力や芸術性であり、ことスケーターたちの表現力を引き出す手腕に関しては、ズエワは間違いなく指折りのコーチと言える。
単にモロゾフが、トレードマークの赤毛を長髪にしただけではない。今季のタラソワ/モロゾフ組はSPボレロではドラマチックな、FSティ・アモではコンテンポラリーな雰囲気を身にまとう。高いツイストやリフト、驚くべき高さと幅を誇るスロージャンプに、新たに表現力が溶け込みさえすれば……まだまだ後輩たちに負けはしないはずだ。
また今季のジュニアGPファイナル金メダルペアのアポリナ-リア・パンフィロワ& ドミトリー・ルィロフ、同銅メダルのクセニア・アハンチェワ&ヴァレリー・コレソフも、シニアに混ざってロシアナショナルに挑戦する。
文:J SPORTS 編集部
J SPORTS 編集部
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