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3月17日に終了した2013年ロンドン世界選手権は、パトリック・チャンが3度目のタイトルを守るという結果となった。フリーでは転倒などのミスがあって2位だったものの、完ぺきだったSPで史上最高スコアを更新させ、逃げ切った形でのタイトルとなった。サプライズで2位に入ったのは、カザフスタン出身韓国系のデニス・テン。ジュニアのころからその才能が注目されていたが、シニアに入ってから長い間苦戦していた。だがこのロンドンではSP、フリーともにほぼ完ぺきな演技で大ブレーク。祖国に初の世界選手権メダルをもたらした。3位は、スペインのハビエル・フェルナンデスだった。ミスもあったが、フリーでは2回4回転を成功させてスペイン初の世界メダルを勝ち取った。
日本チームは、予想外の苦戦を強いられた。優勝を期待されていた高橋大輔、羽生結弦がいずれも不調で4位と9位のスタート。特にインフルエンザから回復後に無理をしたのがたたって左ひざを痛めたという羽生は、フリーの4分半を滑りきることができるのか危ぶまれた。本人は「棄権はありえなかった」と試合後語ったものの、得意の3アクセルですら転倒する体調だったのだ。だがソチ五輪の3枠を死守するためには、もうこれ以上の後退は許されなかった。
フリーでは、羽生が精神力のみでもたせたという演技で総合4位に上がり、4回転が絶不調だった高橋大輔は6位だった。SP11位から挽回した無良崇人は総合8位まで上がった。メダルは逃したものの、ソチ五輪の3枠を死守してどうにか面目を保った。不調の原因がわからないという高橋は「練習していなかったわけではない。正直、少しへこんでいます」と翌日語ったが、これまで何度も修羅場を乗り越えてきた彼だけに、きっと次へと続く道を見つけてくるに違いない。
女子は2年ぶりに復帰したキム・ヨナがSP、フリーともにほぼノーミスの演技で圧勝した。試合に向けての調整は完璧で、久しぶりの試合とは思えない、まったく危なげのない安定した演技だった。フリーの直前に鼻血が出てしまうというアクシデントに見舞われたカロリナ・コストナーが2位。SPとフリーの両方で3アクセルは降りたものの、勿体ないミスがいくつかあった浅田真央が3位と、2年ぶりに表彰台に上がった。村上佳菜子がSP3位、総合4位と素晴らしい演技で健闘した。
今回はキムが20点近くの点差で優勝したが、コストナー、浅田ともにベストではない内容の演技だっただけに、これからの勝負はまだまだわからない。特に3アクセルを安定させてきた浅田には、まだ点を伸ばせる要素がたくさんある。来季まで、じっくりと見守っていきたい。
ペアはロシアのヴォロソジャルル&トランコフが、初の世界タイトルを手に入れた。王者らしい大きな滑りで、2位のサフチェンコ&ゾールコヴィと20点近い点差をつけたが、トランコフは「この点差など何の意味もない。試合ごとに選手の調子は変わるし、ジャッジも変わる。特にドイツは勝ち方を知っている強いチーム」とライバルの顔をたてた。
アイスダンスではショートダンス、フリーダンスともにデイヴィス&ホワイトが独走してトップを保ち、2度目の世界タイトルを手にした。2位がヴァーチュー&モイア、3位はロシアのボブロワ&ソロヴィヨフが獲得し、初めて表彰台に立った。
田村 明子
盛岡市出身、ノンフィクションライター。1977年留学のため単身渡米し、現在ニューヨーク在住。長い滞米生活と語学力を生かして多様な方面で執筆活動を行う。フィギュアスケートは1993年からはじめ、これまで15回の世界選手権、3度の冬季五輪を取材。選手のみならず、コーチ、ジャッジ、ISU関係者など幅広い人脈を駆使して多面的な視点から執筆。著書に「氷上の光と影」(新潮社)他。
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