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ニース世界選手権4月1日に終了した2012年ニース世界選手権では、日本が過去最多となる、合計4個のメダルを獲得した。
■日本代表ペア、初メダル
ペアでは高橋成美&マーヴィン・トランが3位に入賞し、日本代表ペアとして初の世界選手権メダルを手にした。SPでは今季苦労していた3サルコウもきれいにきまり、3位スタートだった。フリーの前にトランは高橋の目を見つめて「3位を維持しようとせずに、思い切って滑ろう」と言ったのだという。若干細かいミスはあったものの、大きく崩れることなく全体をよくまとめた。
ペアの人材不足で悩んでいる日本の選手に向けて、どんなメッセージを送りたいかと聞かれると、トランはこう答えた。「とにかくトライしてみること。ぼくも最初はペアをやるなんて気が進まなかった。でもコーチに強引に進められてやってみた。あの時やめていたら、今の自分はここにいなかったでしょう。気持ちをオープンにしてトライしてみて」
昨年に続いて優勝したのは、ドイツのアリオナ・サフチェンコ&ロビン・ゾルコーヴィ。SPでスロウ3アクセルを成功させるなど、全体を通してレベルの高い演技で4度目の世界タイトルを手にした。SP8位と不調なスタートをきったロシアのタチアナ・ヴォロサザール&マキシム・トランコフは、フリーでは素晴らしい「ブラックスワン」を滑りきって、昨年度に続いて銀メダルを手にした。
■男子、史上初の日本複数メダル
男子のフリーは、24人中13人が4回転を成功させるという、かつてないほどレベルの高い試合だった。そんな中で、高橋大輔がSP、フリーともに4回転トウループをきめて、2007年に続いて2度目の世界銀メダルを手にした。膝の怪我から回復してから、試合で4回転を2度成功させたのは今回が初めてのことである。
「この大会全体を通して、楽しむことができました」と嬉しそうに語った。
17歳の羽生結弦は、SP7位からいっきに総合3位へと駆け上がった。フリーでは冒頭の4回転をきれいに成功させ、途中思わぬところで転倒したものの、最後のステップシークエンスでは会場が揺れるほどの声援で盛り上がった。滑り終えるとあふれる涙を拭いながら、四方の観客にお辞儀をした。「表彰台に上がれるとは思ってもみなかった。驚いて声も出ないとは、こういうことかと思った」3月11日の震災で仙台のホームリンクで被災してからおよそ1年。「応援してくれた方々の力をもらった。これでようやく震災を乗り越えられたという気がした」
カナダのパトリック・チャンは、フリーで4回転を2度きれいに成功させて二連覇を果たした。最後の2アクセルがパンクして変な転び方をしたものの、相変わらずスピードがあり、ジャンプの着氷もよく流れる質の高い演技だった。「予想しないところでミスしないと、ぼくらしくないと思って」とジョークを口にする余裕も見せた。
今季全体を通して靴の調整で苦しんだ小塚崇彦は、フリーでは4回転を着氷したが得意のフリップなどでミスが出て今回は11位に終わった。
■タイトルを奪い返したヴァーチュー&モイア
アイスダンスは予想通り、五輪チャンピオンのヴァーチュー&モイアと世界タイトル保持者であったデイビス&ホワイトの接戦となった。ショートダンスでは僅差でヴァーチュー&モイアがリードし、フリーの「ファニーフェイス」ではさらに点差をつけて、2年ぶり2度目の世界タイトルを手にした。デイビス&ホワイトはフリー「こうもり」では最初から最後までスピードのある演技を滑りきったが、要素点、5コンポーネンツともにヴァーチュー&モイアには及ばず、2度目の銀メダルを手にした。
この大会の2週間前に、練習中の事故で女性が鼻の骨を折るという災難に見舞われたフランスのペシェラ&ブルザだが、どうにか回復してニースにやってきた。地元の観客たちの盛大な応援におされるように、ノーミスでショートダンスを滑りきるとブルザのほうが感極まったように涙ぐんだ。エジプト風のフリーダンスも最後までミスなく滑りきり、3位入賞。念願の世界選手権メダルを手に入れた。
キャシー・リード&クリス・リードは、NHK杯でのクリスと他のチームメンバーとの接触事故で骨折し、ようやく氷の上に戻ったのが大会わずか2週間前だったという。ショートダンスのツイズルの最中にクリスが転倒してしまい、残念ながらフリー進出が適わなかった。「本当に大変なシーズンだった」とキャシーは涙ぐみながら悔しそうに語り、来季へ向けての再スタートを誓った。
■鈴木明子、初の世界メダル
女子は、27歳の誕生日を迎えたばかりの鈴木明子が3位に入って初めて世界選手権の表彰台に到達した。SPでは3+3トウループを成功させたものの、ルッツが2回転になって5位スタート。だがフリーでは5種類、6回の3回転を成功させ、後半の二度目のルッツが1回転になった以外はほぼノーミスの演技で2位。総合3位で銅メダルを手にした。
優勝したのは、今回で世界選手権10回目だったイタリアのカロリナ・コストナー。SP、フリーともに全体をまとめて、初の世界タイトルを手にした。SPで1位だったロシアのアリョーナ・レオノワはフリー3位、総合2位でやはり初めての世界選手権メダルを手にした。
勢いのある演技でSP2位だった村上佳菜子は、フリーでは2アクセルで失敗して総合5位。「すごく勉強になった大会だった」と明るい表情で語った。
浅田真央はSPの3アクセルで転倒し、フリーでも本来の力を出せないで6位に終った。「今季は練習でやってきたことをついに試合で見せることができなく、応援してくださった方々に申し訳ないなあと思っています」と試合後で口にした。来季はぜひ、明るい笑顔を取り戻してもらいたい。
田村 明子
盛岡市出身、ノンフィクションライター。1977年留学のため単身渡米し、現在ニューヨーク在住。長い滞米生活と語学力を生かして多様な方面で執筆活動を行う。フィギュアスケートは1993年からはじめ、これまで15回の世界選手権、3度の冬季五輪を取材。選手のみならず、コーチ、ジャッジ、ISU関係者など幅広い人脈を駆使して多面的な視点から執筆。著書に「氷上の光と影」(新潮社)他。
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