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南仏のニースで、2012年世界選手権が開幕した。
3月28日ペアSPでは、高橋成美&マーヴィン・トラン組が3位と好調なスタートをきった。「練習で普段やっていることができただけなので、今日の演技には驚いていない」とトラン。今季は試合で苦戦していた高橋の3サルコウも、きれいにきまった。「ウォームアップのやり方を少し変えてみたのがよかったと思う」二人は30日、決勝に挑む。もしメダルを獲得すれば、日本代表ペアとして史上初の快挙となる。2位は今季ずっと競技を休んで体調を整えることに専念していたベテランのパン&トン。トップにはサフチェンコ&ゾルコーヴィが立った。
アイスダンスのショートダンスは、五輪チャンピオンのヴァーチュー&モイアがラテンのフレーバーたっぷりのプログラムを滑りきってトップに立ち、昨年度の世界チャンピオン、デイビス&ホワイトが2位、そして2週間前に女性が練習中に鼻を骨折して出場を危ぶまれていたフランスのペシェラ&ブルザが地元の盛大な応援を受けて3位スタートとなった。
29日はいよいよ女子のSPが行われる。3度目のタイトルを狙う浅田真央、初タイトルを目指すカロリナ・コストナー、今季ずっと安定した演技を見せている鈴木明子、そして米国のベテラン、アリサ・シスニー、新全米チャンピオンのアシュリー・ワグナーらの間で、メダルが競われることになるだろう。もちろんベテランたちの演技のできによっては、17歳の村上佳奈子にもチャンスがある。
男子は昨年のパトリック・チャンの連覇を誰が阻止できるのか、注目される。過去2シーズンに出た試合でチャンが優勝しなかったのは2010年のロシア杯のみ。以来ずっとどの試合でも優勝してきたチャンの独走を、食い止めることができるだろうか。もっとも期待されるのは、やはり高橋大輔である。彼が4回転を含むすべてを完璧に滑ることができれば、二度目の世界タイトルを手にすることも夢ではない。また世界銀メダリストの小塚崇彦は、今季はさらに上を目指したいところ。今季はGPファイナル進出を逃した分、この大会でピークを迎えることも十分可能だ。また17歳の羽生結弦のシニア世界選手権初挑戦にも大きな期待がかかる。初の大舞台で世界のジャッジに実力を印象づけることができれば、彼は本格的にシニアトップ選手の仲間入りを果たすだろう。
五輪のない年は、この世界選手権がもっとも重要な大会である。どの選手もこの大会をシーズンの最終目的としてきただけに、どの種目も高レベルの充実した戦いを期待できる。
田村 明子
盛岡市出身、ノンフィクションライター。1977年留学のため単身渡米し、現在ニューヨーク在住。長い滞米生活と語学力を生かして多様な方面で執筆活動を行う。フィギュアスケートは1993年からはじめ、これまで15回の世界選手権、3度の冬季五輪を取材。選手のみならず、コーチ、ジャッジ、ISU関係者など幅広い人脈を駆使して多面的な視点から執筆。著書に「氷上の光と影」(新潮社)他。
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