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何と言う強さなのだろうか。29歳のプルシェンコが、シェフィールドで開催された2012年欧州選手権で7度目のタイトルを獲得した。
6月に手術した膝を公式練習中に傷めたことを理由にSPでは4回転に挑まず、後輩であるアルトゥール・ガチンスキーに続いて2位スタートという位置に立った。だがフリー「ロクサーヌのタンゴ」では、4回転トウループ、2度の3アクセルなど、最後までノーミスの演技を滑りきり、演技が終ると雄叫びを上げてこぶしを固めて見せた。
「ミスなく最後まで滑りきることができてすごく嬉しい。感情をこめて滑ることができたし」とコメントした彼に、フランスのジャーナリストが「本物のロシア人のようにですね」と言うと、「いや、本物のプルシェンコのように」と訂正した。試合に出ると宣言したら本当に出てくる。そして出てくるからには、勝つ。アスリートとして、みごとな生き様というより他はない。だが残念なことに、また膝の再手術のために3月の世界選手権には出場しないという。
2位には18歳のガチンスキーが、3位には欧州タイトル保持者であったフローラン・アモディオが入った。いずれもGPシリーズでは不調だった2人だが、シーズン後半に向けてきっちり調整をしてきているところは、やはり本物の実力があるということなのだろう。
女子はカロリナ・コストナーがSP、フリーともにトップを保って4度目の欧州タイトルを手にした。「これまでは優勝しても、楽しむ余裕がとてもなかった。でも今回は、試合の最初から最後まで楽しみながら滑ることができたことが一番の収穫」と語った。2位はフィンランドのキーラ・コルピが、3位にはグルジアのエレネ・ゲデバニシヴィリが入賞した。SPで3位だったクセニア・マカロワはフリーでミスが目立って総合6位、メダルが期待されていたアリオナ・レオノワは不調な演技で7位に終った。
ペアは川口&スミルノフ組は、スミルノフが盲腸の手術からまだ回復しておらず、欠場。またドイツのサフチェンコ&ゾルコーヴィも、サフチェンコが腿の腱を傷めて欠場した中で、予想通りヴォロサザール&トランコフが初優勝を飾った。2位がバザロワ&ラリオノフも予想通りだったが、ナンバー3のストルヴォワ&クリモフが予想外に健闘し、3位に入賞。ロシアがペアの表彰台を独占したのは、2005年以来のことである。
アイスダンスは、ショートダンスで2位と出遅れていたフランスのペシェラ&ブルザがフリーで挽回。無事にタイトルを守った。ロシアのボブロワ&ソロヴィエフが2位、イリニキ&カツァラポフが3位。一時低迷を見せていたロシアが、ソチ五輪に向けて着々と実力を上げてきているのを実感させられる大会だった。
田村 明子
盛岡市出身、ノンフィクションライター。1977年留学のため単身渡米し、現在ニューヨーク在住。長い滞米生活と語学力を生かして多様な方面で執筆活動を行う。フィギュアスケートは1993年からはじめ、これまで15回の世界選手権、3度の冬季五輪を取材。選手のみならず、コーチ、ジャッジ、ISU関係者など幅広い人脈を駆使して多面的な視点から執筆。著書に「氷上の光と影」(新潮社)他。
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