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ついに出た。パトリック・チャンがカナダ選手権で男子史上初の300点台を叩き出し、302.14という前代未聞のスコアで優勝したのである。もちろん国際試合ではないので、ISUの公式な記録には残されない。それにしても、SPで101.33、フリーで200.81とどちらもそれまでの記録を塗り替えてしまったのだから、すごい。
SP「テイクファイブ」では4+3のトウループコンビネーション、3アクセル、3ルッツと完璧な演技だった。フリーの「アランフェス協奏曲」では、4+2のトウループコンビネーションとソロで二度目の4回転、3アクセルなど、4回転を2度、3回転を7度成功させた。唯一難癖をつけるとすれば、最初の4回転の着氷で体重が少し後ろに行きバランスを崩しかけたくらいだろう。
どの国でも国内選手権では国際試合よりも高めの点が出るが、2位のケヴィン・レイナルズはかなりシビアに減点を受けているので、あながち甘いジャッジばかりとも言えないだろう。チャンとレイナルズの総合点差は、なんと60点以上である。
同じカナダで開催された試合でも、スケートカナダ、そしてGPファイナルのときとは出てきたときのチャンの表情は全く違っていた。どれほど失敗しても優勝を逃すことはない、という自信があっただろうし、またそれだけの練習を積んできたのに違いない。まるで自分のための試合であるかのように堂々とし、落ち着いて見えた。ここでまた自信をつけたチャンが、四大陸、そして世界選手権でどう出てくるか。今回のような彼の演技を上回るためには、日本勢もおそらくSP、フリー合わせて3回の4回転が必要になる。
アイスダンスは予想どおり、ヴァーチュー&モイアが優勝した。今季のプログラムをより一層洗練させて、高い完成度を見せて5コンポーネンツはほぼ満点に近い点を獲得。2位も予想通りウィーバー&ポジェが入賞した。ペアはデュハメル&ラッドフォードが優勝、デュベ&ウルフが2位に入った。
3種目はこうして順調にメダリストが世界選手権の代表に選ばれたが、女子は4大陸選手権に送られる3人のうち、上位者トップ2名をニース世界選手権に送ると発表。初優勝したのはアメリ・ラコステだが、フリーでは2位のシンシア・ファヌーフが上だった。だがいずれも160点に満たないレベルでの戦いだっただけに、カナダの連盟としても頭が痛いところであろう。今のままのレベルだと、最悪の場合、ソチ五輪にカナダの女子の出場枠を獲得できなくなる可能性もある。連盟としては、ぜひジョアニー・ロシェットに戻ってきてもらいたいと願っているのではないだろうか。
田村 明子
盛岡市出身、ノンフィクションライター。1977年留学のため単身渡米し、現在ニューヨーク在住。長い滞米生活と語学力を生かして多様な方面で執筆活動を行う。フィギュアスケートは1993年からはじめ、これまで15回の世界選手権、3度の冬季五輪を取材。選手のみならず、コーチ、ジャッジ、ISU関係者など幅広い人脈を駆使して多面的な視点から執筆。著書に「氷上の光と影」(新潮社)他。
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