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4月25日から、3月に東京で開催される予定だった世界選手権がモスクワにて開催される。このたび東日本を襲った大震災により、やむなく開催地と開催時期を変えることになった。だが開催運営の段取りがどうなるのか、また選手たちがどのようなコンディションで試合に来るのか、今回の状況は前代未聞のことなので予測するのが難しい。そんな中で、4月15日、カナダのパトリック・チャンの電話での公式記者会見が行われた。
「東京世界選手権に向けていたトレーニングを、再び新たな日程に合わせて調整しなおさなくてはならなかった。普段ならもうオフシーズンの時期だけれど、一ヶ月余分にトレーニングできた分、より強くなれたと思う」と前向きに語った。
2年連続、世界銀メダルを獲得し、今季GPファイナルのタイトルも手にしたチャンは優勝候補の一人だが、あくまで立場はチャレンジャー。世界タイトルを保するのは高橋大輔である。「このたびの状況で、日本の選手は、きっとこれまで以上にモチベーションを上げて試合に挑んでくるだろうと思う」とコメント。SPで1回、フリーで2回、4回転に挑むと宣言した。
本来、東京ではチャンと日本男子3人との激しいメダル戦いが予想されていた。だがこの一ヶ月をどのように各選手が過ごしてきたのかによって、試合結果は大きく左右する。特に日本の選手にとっては、たとえ被災はしなくても精神的にも影響は少なくなかったはずである。
また開催地がヨーロッパに移ったことで、ブライアン・ジュベール、トマーシュ・ベルネル、フロラン・アモディオ、そしてロシアのアルトゥール・ガチンスキーなどといったヨーロッパ勢が普段以上に力を発揮する可能性もある。最後までどうなるのか目が離せない、男子の戦いになるだろう。
田村 明子
盛岡市出身、ノンフィクションライター。1977年留学のため単身渡米し、現在ニューヨーク在住。長い滞米生活と語学力を生かして多様な方面で執筆活動を行う。フィギュアスケートは1993年からはじめ、これまで15回の世界選手権、3度の冬季五輪を取材。選手のみならず、コーチ、ジャッジ、ISU関係者など幅広い人脈を駆使して多面的な視点から執筆。著書に「氷上の光と影」(新潮社)他。
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