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フィギュア スケート コラム 2010年4月7日

【フィギュア通信】 トリノ世界選手権

フィギュア通信 by 田村 明子
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イタリアのトリノは、4年前に荒川静香が、日本人として初の五輪金メダルをとった記念するべき街だ。この同じパラヴェラ競技場で、高橋大輔と浅田真央の二人の日本のエースが、世界選手権で男女揃って優秀を飾り、日本のスケート史に新たな記録を作った。

唯一の五輪メダリストとしてトリノにやってきた高橋大輔は、SP「eye」をパーフェクトに滑りきってトップに立った。フリー「道」では、史上初の4回転フリップに挑戦。惜しくも回転不足だったが、転倒することなく両足で着氷した。そのままスピードを落とさず、フェリーニの映画のサントラをイタリアの観客の前でみごとに表現しきってトップを保ち、日本男子初の世界チャンピオンになった。2位はカナダのパトリック・チャン、3位は不調だった五輪から回復してSPで1回、フリーで2回の4回転を成功させたものの、他のジャンプでミスの出たブライアン・ジュベール。3人ともそれぞれ、五輪での自分の演技を上回る滑りが見せることができたためなのだろう。どの選手もそれぞれハッピーという和やかな表彰台だった。

女子は予想外のスタートとなった。五輪金メダリストのキム・ヨナが3フリップ、スピンなどのミスがあってSP7位スタートに。そんな中で浅田真央は安定した演技を見せて、3アクセル+2トウループなどノーミスで滑りきった。だが惜しくもアクセルが回転不足と判定されて2位スタート。サプライズでSP1位に立ったのは米国の若手、長洲未来だった。

フリーで浅田は、五輪のときと同じように二度の3アクセルに挑戦。そして二度目の3フリップ、3トウループなどもしっかり成功させて最後まで集中して滑りきった。一見ノーミスの演技に見えたが、惜しいことに二度目の3アクセルがやはり回転不足と認定された。それでも総合で逆転優勝を果たし、日本人として初の二度目の世界タイトルを手にした。

キムは普段になく不安な表情のまま、演技を開始した。前半は好調だったが、後半では3サルコウで転倒するなど決してベストな滑りではなかった。それでも2度の3ルッツを成功させるなど全体をまとめて、総合2位に上がった。総合3位は、SPも3位だったフィンランドのラウラ・レピスト。フリーでは3回転を3度しか成功させずに6位だったが、4位と僅差で逃げ切った。SPでは転倒があって11位スタートだった安藤は、フリーをノーミスで滑りきって総合4位に。やはりSPでは失敗が目立って20位スタートだった鈴木明子は、フリーで7位と健闘して、初の世界選手権で総合11位だった。SP1位だった長洲は、フリーではミスが重なり総合7位に終わった。男子よりも女子のほうが順位も荒れたのは、やはり五輪の試合が後半だったための疲れが残っていた選手が多かったのだろう。

ペアではパン&トンが二度目の優勝を果たし、サフチェンコ&ゾルコーヴィが2位、川口悠子&アレクサンドル・シュミルノフが昨年に続いて3位に入賞した。

アイスダンスでは新五輪チャンピオンのヴァーチュー&モイアが初の世界タイトルを手にし、デイビス&ホワイトが2位、イタリアのファイエラ&スカリが3位に入賞。新たな世界メダリスト3チームが誕生した。

代替画像

田村 明子

盛岡市出身、ノンフィクションライター。1977年留学のため単身渡米し、現在ニューヨーク在住。長い滞米生活と語学力を生かして多様な方面で執筆活動を行う。フィギュアスケートは1993年からはじめ、これまで15回の世界選手権、3度の冬季五輪を取材。選手のみならず、コーチ、ジャッジ、ISU関係者など幅広い人脈を駆使して多面的な視点から執筆。著書に「氷上の光と影」(新潮社)他。

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