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女子は、五輪史上に残る素晴らしいレベルの闘いだった。
中でもSP、フリーを通してノーミスの演技を滑りきったキム・ヨナの強さは圧巻だった。フィギュアスケートでこれまでスターが出たことのない韓国からたった一人、彗星のように現れたキムにかけられていたプレッシャーは、おそらくアルベールビル五輪当時の伊藤みどり以上だっただろうと思う。まるで鉄の心臓を持っているかのように落ち着いて見えたキムでも、緊張したのだろう。フリーの演技後に涙を流した。
彼女は3アクセルこそ持っていないものの、SP、フリーともに3ルッツ+3トウループという難易度の高いコンビネーションを成功させた。五輪チャンピオンとしては1992年アルベールビル五輪のクリスティ・ヤマグチ以来のこと。そのヤマグチも、3アクセルを跳ぶことのできる伊藤みどりに対抗するためにマスターした技だった。キム・ヨナも、浅田真央という天才に押されていなければ、このコンビネーションをやる必要はなかったかもしれない。
一方浅田真央も、素晴らしい戦いぶりだった。今シーズン、SPで一度も成功できなかった3アクセル+2トウループを五輪という大舞台でみごとにきめた。苦手意識のあったSPを克服して2位という立場で挑んだフリーでは、3アクセルを2回成功させて歴史を作った。だが惜しくも後半で3フリップの着氷がもたついて回転不足になり、3トウループはテイクオフでエッジがひっかかった。金メダルには手が届かなかったけれど、立派に戦った銀メダルは勲章である。
銅メダルを獲得したカナダのジョアニー・ロシェットは、SPの2日前に観戦に来ていた母が心臓発作で急死という悲劇に見舞われた。それでもけなげに最後まで滑り、カナダの女子として22年ぶりの五輪メダルを獲得した。
また総合5位だった安藤美姫、8位だった鈴木明子ともに、それぞれができることをきちんと見せて、精一杯戦った。日本チームの優秀さを世界に見せることのできた試合だったと思う。五輪フィギュアスケートの最後に相応しい、充実した競技となった。
女子の前に開催されたアイスダンスでは、カナダのヴァーチュー&モイアが品格のある滑りと確かな技術で、カナダに初のアイスダンス五輪金メダルをもたらして、地元のファンを歓喜させた。2位は勢いのあるアスレチックな演技を見せたアメリカのデイビス&ホワイト。3位はコンパルソリーのタンゴ・ロマンチカでは大人の滑りでトップだったが、OD、フリーで点の延びなかったロシアのドムニナ&シャバリンだった。
田村 明子
盛岡市出身、ノンフィクションライター。1977年留学のため単身渡米し、現在ニューヨーク在住。長い滞米生活と語学力を生かして多様な方面で執筆活動を行う。フィギュアスケートは1993年からはじめ、これまで15回の世界選手権、3度の冬季五輪を取材。選手のみならず、コーチ、ジャッジ、ISU関係者など幅広い人脈を駆使して多面的な視点から執筆。著書に「氷上の光と影」(新潮社)他。
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