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2月15日、パシフィック・コロシウムでバンクーバー五輪フィギュアスケート初メダルが授与された。ペアの金メダルを獲得したのは、中国の申雪&趙博宏。31歳と36歳のベテランチームで、1998年長野五輪から連続4回出場してようやく手にした悲願の金メダルだった。
その道程は、楽なものではなかった。長い間、中国のペアは、運動能力は高くても表現力がないという評価を受けて、ロシアや北米の選手よりも1ランク低い扱いを受けてきた。ソルトレイクシティ五輪はトップ2チームの間に起きたジャッジスキャンダルにばかり焦点が当てられて、彼らがスロウ4サルコウに挑んで銅メダルを獲得したことを覚えている一般人は、ほとんどいないだろう。
優勝候補になるはずだったトリノ五輪では、その半年前に趙がアキレス腱断裂という重傷をおって再び3位に終わった。2007年東京世界選手権で優勝した後、いったん競技からの引退を声明した。
「でもどうしても、五輪の金メダルが欲しかった。今回が最後のチャンスだと思った」と語る趙は、パートナーで妻でもある申雪と、このバンクーバーで念願の、フィギュアスケートにおける中国チーム初の五輪金メダルを手にした。2位になったのは、彼らのチームメイト、2007年世界チャンピオンのパン&トンだった。SP4位スタートだったが、フリーでは会心の演技を見せて1位となり、総合2位。3位はドイツのサフチェンコ&ゾルコーヴィだった。
SP3位と健闘した川口&スミルノフは、フリーでいくつかミスが出て、惜しくも4位となってメダルを逃した。コーチに演技直前に、スロウ4回転サルコウを封印されて、心の整理がつかないままに挑んだ結果だった。「ストレスに対処しきれなかった」とコメントした川口だが、同じ4位に終わるのでも、夢だったスロウ4回転に挑んだ結果だったら、もっと納得もいったのではないだろうか。彼らにとっては、次に向けての課題が残った五輪になったに違いない。
田村 明子
盛岡市出身、ノンフィクションライター。1977年留学のため単身渡米し、現在ニューヨーク在住。長い滞米生活と語学力を生かして多様な方面で執筆活動を行う。フィギュアスケートは1993年からはじめ、これまで15回の世界選手権、3度の冬季五輪を取材。選手のみならず、コーチ、ジャッジ、ISU関係者など幅広い人脈を駆使して多面的な視点から執筆。著書に「氷上の光と影」(新潮社)他。
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