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中国杯のわずか数日前、高橋大輔が右膝の負傷で欠場が発表された。欧州選手権チャンピオンのトマーシュ・ベルネルの独り舞台になるかと思いきや、意外な結末が待っていた。
SP、フリーとトップを独走して優勝したのは米国の23歳ジェレミー・アボットだった。昨シーズンは全米選手権4位、初出場した世界選手権11位だった彼。北京では安定した3アクセルなどで233.44という今シーズンの男子最高点を叩き出して、GP初優勝を飾った。
2位はやはり米国の若手、19歳のスティーヴン・キャリエール。昨年度の全米選手権3位、世界選手権10位とアボットと激しく競っている選手だが、この大会では2枚目の星条旗を揚げて、米国の選手層の厚さを改めて見せつけた。
トマーシュ・ベルネルはフリーではこの大会で唯一の4回転を成功させたものの、他にいくつかミスがあり総合3位に終わった。
女子では、予想通りキム・ヨナがSP、フリーともにトップを独走してスケートアメリカに続いて優勝。今季は韓国で開催されるGPファイナルへの出場権を早々と手にした。安藤美姫も安定した演技を見せて、2位に入賞。スケートアメリカ3位だった彼女がGPファイナルへ進出がかなうかどうかは、他の選手たちの結果待ちとなる。3位には、フィンランドの新星、ローラ・レピストが入った。
グランプリシリーズ第3大会が終了し、11月半ば現在、今季の男子のベストスコアはジェレミー・アボットの233.44。2位がスケートアメリカで優勝した小塚崇彦の226.18。こんな結果になると、一体誰が予想しただろう。今季のフィギュアスケートは、本当に何が起きるかわからず目が離せない。
田村 明子
盛岡市出身、ノンフィクションライター。1977年留学のため単身渡米し、現在ニューヨーク在住。長い滞米生活と語学力を生かして多様な方面で執筆活動を行う。フィギュアスケートは1993年からはじめ、これまで15回の世界選手権、3度の冬季五輪を取材。選手のみならず、コーチ、ジャッジ、ISU関係者など幅広い人脈を駆使して多面的な視点から執筆。著書に「氷上の光と影」(新潮社)他。
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