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ラグビーワールドカップ(RWC)フランス大会に最後に滑り込んだのがポルトガルだった。ヨーロッパ予選では3位で出場権を獲得できず、アメリカ(北米・南米予選3位)、香港(アジア・パシフィック予選2位)、ケニア(アフリカ予選2位)の4チームでの敗者復活戦にまわった。2022年11月6日から18日にかけてドバイで開催された最終予選は総当たりの末、全勝同士だったポルトガルとアメリカが最終日に対戦することになる。接戦となったが、終盤にポルトガルがSHサミュエル・マルケスのPGで16-16としてノーサイドとなった。同点であれば得失点差で上回ることを理解してのPG選択。まさに紙一重の出場権獲得だった。
ラグビーワールドカップ2023 特集ページ
4大会ぶり2回目の出場となるポルトガルは、1926年にラグビー協会が設立され、ヨーロッパの中堅国として存在感を放ってきた。代表チームのエンブレムには、ポルトガルの国章があしらわれ、チームの愛称は「オス・ロボス」(狼)だ。RWCには縁がなく、地区予選が導入された1991年大会以降、予選を突破できたのは2007年のフランス大会だけだ。日本代表とは、2021年11月13日、首都リスボンの北に位置するコインブラで初対戦し、25-38で敗れた。しかし、予想以上の健闘だった。
今大会では混戦模様のプールCに入る。8月28日現在の世界ランキング順に並べると、7位フィジー、9位オーストラリア、10位ウェールズ、11位ジョージア、16位ポルトガル。プール突破の本命はオーストラリア、ウェールズだが、フィジーはウォームアップマッチでイングランドに勝っており、何が起こるか分からないプールだ。ポルトガルもその中で波乱を起こしたい。
ヘッドコーチは、元フランス代表の名WTBパトリス・ラジスケ。1983年から1991年にフランス代表で活躍し、世界のラグビー史にその名を刻むCTBフィリップ・セラ、FBセルジュ・ブランコらと黄金バックスラインを形成した。瞬時の加速でタックラーを置き去りにする走りで、「バイヨンヌ・エクスプレス」と呼ばれた。バイヨンヌは所属クラブの名前である。奔放にボールを動かし、変幻自在のサポートコースで世界を席巻したフランスラグビーの名選手だけに、ポルトガルでも展開ラグビーを志向する。
RWCフランス大会の登録メンバー33名のうち17名がフランスのクラブでプレーしている。RWC経験者は不在。キャプテンは、CTB/WTBトマス・アップルトン(182cm、92kg、30歳)。WTBをこなせるスピードを持ち、タックルもパワフル。2021年の日本代表戦にはCTBで出場している。2014年11月22日のナミビア戦で21歳の若さで代表デビュー。以後、オス・ロボスの中心選手として活躍してきた。WTBラファエレ・ストルティ(178cm、83kg、22歳)は、フランスのベジェでプレーする期待の選手で怪我があったが、なんとか間に合った。ラジスケヘッドコーチ仕込みの展開ラグビーで混戦のプールCをどう戦いぬくか。16年ぶりのRWCで輝いてもらいたい。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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