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ラグビー コラム 2023年8月29日

【RWC2023出場国紹介:チリ】唯一の初出場チームは、南米ラグビーの実力を示せるか

ラグビーW杯2023出場国紹介 by 村上 晃一
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ラグビーワールドカップ2023予選 チリvsアメリカ

今大会の参加20チーム中、唯一の初出場チームだ。8月21日現在の世界ランキングは22位。8月のウォームアップマッチでは、21位のナミビアに26-28と敗れているが、近年着実に力をつけている。チリのラグビー協会創立は1953年。代表ジャージのエンブレムはコンドル(鷹、チリの国鳥)、チームの愛称はロス・コンドレス。ヘッドコーチは、元ウルグアイ代表の名PRであり、2015年のラグビーワールドカップ(RWC)ではウルグアイ代表を率いたパブロ・レモイネ(48歳)だ。

レモイネヘッドコーチは、チリ代表をRWCに出場させるため、仕事とラグビーを両立していた選手たちにハードな練習を課し、チーム力を引き上げてきた。2016年にはアメリカ、カナダ、ウルグアイら7チームが参加したアメリカス・ラグビー・チャンピオンシップが発足。2020年には南米版のスーパーラグビー「スーペルリーガ・アメリカーナ・デ・ラグビー」(SLAR)が始まり、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル、チリの各国からクラブチームが参加した。チリは、セルクナムというチームを結成し、国代表との両輪で強化を進めた。SLARは2023年からはアメリカのチームも加わり、コロンビアは脱退。「スーペル・ラグビー・アメリカス(SRA)」として生まれ変わっている。

レモイネヘッドコーチの下、チーム力を上げたチリ代表は、RWCの常連国であるカナダ、アメリカを地域予選で下して出場権を獲得した。カナダには第1戦=21‐22、第2戦=33‐24、アメリカには第1戦=21-22、第2戦=31‐29とどちらも1勝1敗だったが、総得点で上回り、南北アメリカ大陸の勢力図を塗り替えた。SOロドリゴ・フェルナンデス(27歳)は2022年、世界のラグビーの統括機関であるワールドラグビーのトライ・オブ・ザ・イヤーに選ばれたことで世界にその名を知られることになった。2022年7月9日のアメリカ戦で相手のキックを自陣22m付近で確保。雨が降りしきり、芝に水が浮く悪コンディションの中で、右に左にステップを切りながら7人のタックラーをかわして約80mを走り切った。183cm、82kgのサイズは国際舞台では大きくないが、ぬかるむグラウンドで足を取られず走り切ったバランスの良さが際立った。戦略的キックも飛距離があり、日本との戦いでは要注意選手の一人だ。

ラグビー テストマッチ2023 チリvsナミビア

キャプテンはイングランド2部のドンカスター・ナイツに所属するFLマルティン・シグレン(27歳)。常に先頭に立って体を張る。このほか今回のスコッドには、フランスのバイヨンヌでプレーしていた34歳のLOパブロ・ウエテ、33歳のCTBホセ・ラレーナスら10年以上代表でプレーしている選手がいる。そして、RWC史上初となるのが、4組の兄弟だ。FLアルフォンソ、HOディエゴのエスコバル兄弟、WTBマティス、WTBニコラスのガラフリック兄弟、WTBサンティアゴ、SHベンジャミンのヴィデラ兄弟、LOクレメンテ、CTBドミンゴのサアベドラ兄弟だ。

チリ代表に関しては情報が少なく、その実力は未知数だが、RWCのデビュー戦となる9月10日(日本時間午後8時)の日本代表戦には全力で立ち向かってくるだろう。彼らにとってはチリ・ラグビーの存在を世界に知らしめ、同国ラグビーの未来を明るく照らすための戦いだ。日本代表としては侮ることなく丁寧に戦いたい。

文:村上 晃一
村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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