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日本代表が乗り越えなければならない相手だ。ラグビーワールドカップ(RWC)フランス大会で日本代表と同じプールにはラグビー発祥の母国イングランドがいる。プール戦の対戦順はチリ、イングランド、サモア、アルゼンチン。決勝トーナメントに進出できるのはここから2チーム。2019年の日本大会2戦目のアイルランドと同じく、ここで勝てば勢いに乗ることができる大事な一戦だ。
ラグビーワールドカップ2023 特集ページ
本稿執筆時点でイングランドは世界ランキング6位。今年のシックスネーションズでは2勝3敗の4位に終わった。特にホームのトゥイッケナムでフランスに喫した10-53という大敗はショッキングだった。ここから9月のRWCまでどこまで復調してくるか。元日本代表ヘッドコーチだったエディー・ジョーンズ氏は昨年12月に解任され、スティーブ・ボーズウィック(43歳)が新ヘッドコーチに就任している。ボーズウィックは元イングランド代表LOでラインアウトのスペシャリスト。2014年からが日本代表のFWコーチとして2015年のRWCで南アフリカを破る快挙に一役買った。
当時、コーチングを受けたリーチ マイケルは「スティーブはラインアウトを細かく教えてくれた。強いFWでキックを多用するイングランドらしいチームを作って来るのではないか」と話す。屈強なFWでスクラム、モールなどを制圧し、キックを使って上背のあるBKを走り込ませるのが伝統的なスタイルだ。
ラグビーはイングランド北西部にあるラグビーという街のラグビースクールで形作られ、1845年にルールが成文化された。1871年には、スコットランドと世界最古のテストマッチが行われている。世界でもっとも分厚い選手層を誇り、代表チームも常に世界をリードしてきた。しかし、1987年に始まったRWCでは、2003年のオーストラリア大会での優勝があるだけで、自国開催の1991年、フランス開催の2007年で準優勝。2度目の自国開催になった2015年大会では、ホストユニオンとしてプール戦で敗退する初めてのチームとなった。才能あふれる選手を擁しながら、どこか勝負に淡白なところがあるのだ。2019年も準決勝でニュージーランドを倒しながら決勝では南アフリカに敗れた。つまり、北半球で開催されたRWCでイングランドはいまだ優勝していない。今度こその気持ちは強い。
オーウェン・ファレル
2023年6月30日、イングランド代表候補メンバー41人が発表された。キャプテンは情熱的なプレーでチームを引っ張るSO/CTBオーウェン・ファレル。2018年11月、日本代表はイングランドに肉迫した試合で、後半に登場して流れを変えたのがファレルだった。力強いタックル、正確なキックでチームの勢いを引き出す。ファレルは現在アイルランド代表ヘッドコーチのアンディ・ファレルを父に持ち、17歳で父とともにプロデビューを飾っている。自身3度目のRWCで過去最高の成績を目指す。
このほか、100キャップのPRダン・コール、97キャップのLOコートニー・ローズ、卓越した身体能力で攻守に働き続けるLOマロ・イトジェ、パワフルなCTBマヌ・トゥイランギ、俊足WTBジョニー・メイら経験豊富な選手に加えて若手も多く選ばれている。2021年代表デビューのSOマーカス・スミス(24歳)はフィリピン出身で、シンガポールでラグビーを始めたという変わり種。サイズは小さいがクリエティブなプレーを見せる。身長196 cm、体重107 kgのFBフレディー・スチュワート(22歳)も今が伸び盛りで日本代表にとっては脅威になる選手だ。イングランドは、8月にウェールズ、アイルランド、フィジーとウォームアップマッチを行って最終調整をはかる。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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