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【RWC2023出場国紹介:南アフリカ】史上最多4度目の王座を狙うラグビー大国 日本のリーグワンでプレーする精鋭が軸
ラグビーW杯2023出場国紹介 by 村上 晃一
世界一パワフルで屈強なプレースタイルは唯一無二。キックを多用し、いったん相手にボールを渡して攻めさせながら、激しいタックル、ジャッカルでボールを奪い返し、俊足ランナーを軸に一気にトライを奪う。常に正確なプレースキッカーを擁して接戦をものにする。そのミスの少ないスタイルはノックアウト方式のトーナメントで勝負強さを発揮し、ラグビーワールドカップ(RWC)を3度制している(1995年、2007年、2019年大会)。
他の強豪国と同じく1800年代後期に英国からラグビーが伝わった。ラグビー協会の創立は1889年で、1891年に英国チームが来征し初の国際試合を行っている。1906~7年にかけて行われた英国遠征中に、エンブレムの胸のウシ科の動物から、「スプリングボクス」と呼ばれるようになったとされている。積極的に国際交流し、1912年の遠征でイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、フランスをすべて破った。以降は、ニュージーランドと並ぶラグビー大国として世界のラグビー界をけん引している。
ラグビーワールドカップ2023 特集ページ
アパルトヘイト(人種隔離政策)に反対する国際制裁でスポーツを禁じられ、1984年から8年間は国際舞台から姿を消した。1992年に国際舞台に復帰し、1995年に南アフリカで開催された第3回RWCでは初出場で初優勝の快挙を成し遂げる。黒人初の大統領となったネルソン・マンデラが、同国の白人が最も愛するスポーツだったラグビーの代表スクリングボクスのジャージーをまとい、フランソワ・ピナール主将にエリスカップを手渡すシーンは大会のハイライトだった。人種融合を推進するためにRWC南アフリカ大会が果たした役割は大きかった。そのストーリーはクリント・イーストウッド監督の映画「インビクタス」でも詳しく描かれている。
RWCでは1995年以降全大会で決勝トーナメントに進出し、2007年のフランス大会では決勝戦でイングランドを破って優勝。2019年の日本大会では、プール戦ではニュージーランドに23-13で敗れたが、準々決勝では日本代表に快勝し、準決勝でウェールズとの接戦を制し、決勝でイングランドを32-12で破った。黒人初のキャプンとなったシヤ・コリシがエリスカップを掲げた。チームをまとめあげたラシー・エラスムスヘッドコーチは2021年に退任し、2019年大会でディフェンスコーチとして手腕を発揮したジャック・ニーナバー(50歳)がヘッドコーチに昇格した。
ハンドレ・ポラード
キーマンは正確無比なプレースキッカーであるハンドレ・ポラード(29歳)。キックを軸にゲームをコントロールする。ポラードもNTTドコモレッドハリケーンズ大阪に所属したことがあるが、中心選手の多くが日本のリーグワンでプレーしている。SHファフ・デクラーク(31歳)は横浜キヤノンイーグルスでアグレッシブなプレーを披露し、2022-2023シーズンのチームを初の3位に押し上げた。リーグワンで優勝したクボタスピアーズ船橋・東京ベイには、HOマルコム・マークス(28歳)がおり、スクラム、ラインアウトのセットプレーの中心になるだけではなく、ボールを持っての力強い突進、タックルした相手からボールを奪うジャッカルで試合の流れを変えるプレーを連発する。
強力FWの軸になるのはLOルード・デヤハー(30歳)、FLピーターステフ・デュトイ(30歳)あたり。デヤハーは埼玉パナソニックワイルドナイツでプレーするが、身長206cm、体重127gのサイズで運動量豊富に動き回り、パスなどのスキルも卓越している。デュトイは身長200cm、体重120kgという世界トップクラスのサイズを誇るFW第三列だ。2019年にはワールドラグビー最優秀選手に選ばれ、2022年からトヨタヴェルブリッツでプレー。骨惜しみしない動きで攻守に働き続ける。この他、ワイルドナイツBKの要となっているCTBダミアン・デアレンデ(31歳)、イーグルスのCTBジェシー・クリエル(29歳)、静岡ブルーレヴズでキャプテンを務めたNO8クワッガ・スミス(29歳)らがいる。唯一の懸念材料は主力選手の大半が2019年大会と変わっていないことだが、経験値はどのチームより高く、優勝候補の一角であることは間違いない。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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