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ラグビー コラム 2022年9月6日

日本代表HO坂手淳史キャプテンが語る 大学ラグビーの見どころ&期待感

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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坂手淳史選手(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

6月、7月のラグビー日本代表戦は大いに盛り上がった。その中心にいたのは新しくキャプテンに就任した坂手淳史選手(埼玉パナソニックワイルドナイツ)だった。坂手選手といえば、帝京大学時代に前人未到の大学選手権7連覇を達成したキャプテンである。帝京大は坂手選手の卒業後も勝ち続け、9連覇を達成した。しかし、その後は毎年優勝チームが変わる。2018年度は22年ぶりに明大が優勝、2019年度は11年ぶりに早大が頂点に立ち、2020年度は天理大が初優勝を飾った。そして、昨季は帝京大が王座に返り咲いている。坂手選手は現在の大学ラグビー、そして、岩出雅之監督から相馬朋和監督にバトンタッチした帝京大をどう見ているのか。新シーズンへの期待と注目ポイントなどを聞いた。

坂手淳史選手(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

――昨シーズン、母校・帝京大が大学王者に返り咲きました。その戦いぶりをどう感じましたか。
「強かったですね。シーズンが深まるにつれて凄みが出てきました。スクラムを中心に相手を圧倒していく戦いぶりも成長を感じたし、岩出雅之監督の(監督として)最後のシーズンを10回目の優勝で祝えたのも良かったです。準決勝の京産大戦で苦戦しながら勝ち切ったのが大きかったです。あの勝利でさらに結束が固まった気がします」

――王座から遠ざかった3年間はぎりぎりの試合で勝てないことが多かったですね。
「大学ラグビー全体のレベルが上がっていますよね。ラグビーの理解度やプレーの質も高くなっている。その中で毎年のように優勝するというのは難しくなっています」

――細木康太郎キャプテンの雄叫びも印象的でしたね。
「見ていて熱くなりました。いいプレーや、いいスクラムがあったときに雄叫びを上げ、チームの勢いを引き出していましたね。彼の率いているものの重さ、気持ちの強さが出ていました」

――この春の帝京大の試合はご覧になりましたか。
「ジェイ・スポーツで見ました。良いSO(高本幹也)がいて、トライを取り切る選手もたくさんいる。スクラムもさらに強くなりそうだし、去年よりレベルが上がるのではないかと楽しみにしています」

【インタビュー動画】帝京大学OB・坂手淳史選手インタビュー

――キャプテンの松山千大選手の印象はどうですか。
「話したことはないのですが、プレーを見ていると、派手ではないけれど仕事をし続ける選手だし、他の選手からの信頼は厚いでしょうね。彼の為にという思いで周りの選手も動くと思います。それが大学ラグビーの良さだし、帝京としても良いラグビーを見せていけるのではないかと思います」

――今年のチームで注目している選手はいますか。
江良颯(3年)は僕と同じHOですが、本当に良い選手です。セットプレーのレベルも高いし、フィールドプレーでの推進力もある。昨季の終盤で見せたディフェンス力も素晴らしかったです。総合力の高い選手なので注目しています」

――京都成章の後輩たちはどうですか。
「LO本橋拓馬(2年)は一緒に練習したこともありますが、人間性もいいし、去年よりさらに強さを増したLOになっているんじゃないかと見ています」

――延原秀飛(3年)選手も高校の後輩ですね。
「高校時代から身体能力が高くて賢い選手でした。高校に教えに行ったことがありますが、理解するのが早くて、そんな良い部分が大学でも生きていてチームの中でコネクション役ができていると思いますね」

坂手淳史選手(帝京大学時代)

――坂手選手は7連覇のシーズンのキャプテンでした。そのときのチームと今のチームを比較するとどちらが強いですか。
「全体のレベルが上がっているので、今のほうが強いのではないですか? 7連覇のときは、SO松田力也、WTBは竹山晃暉、尾崎晟也、FBに森谷圭介がいました。今年も良いSO、WTBがいて、それをつなぐCTBもいい選手がいる。当時と似ているチームなのではないかと思います。これからの日本ラグビーを引っ張っていけるスキル、メンタルの強さを持った選手が今の帝京には揃っていますよね」

――帝京大の連覇の前に立ちはだかるチームはどこだと思いますか。
「明治、早稲田、東海は強いでしょう。明治は安定感もあるし、爆発力もある。早稲田もテンポの速い良いラグビーをします。東海もフィジカルが強い。東海は僕らの頃からフィジカルは強いのですが、脈々と伝統が受け継がれていますね」

――関東大学対抗戦では帝京大、明大、早大が軸になるということですか。
「僕はそう見ています。高校の後輩でいうと、明治には山本嶺二郎(3年)、早稲田には宮尾昌典(2年)がいます。各大学で頑張ってくれて嬉しいし、どこが勝つのか楽しみにしています。関東大学リーグ戦のほうは東海大が中心になると思いますが、菊谷崇さん(元日本代表キャプテン)がヘッドコーチに就任した日大も楽しみです」

――他大学の高校の後輩以外で注目している選手はいますか。
「どうしても自分と同じポジションを見てしまうのですが、早稲田の佐藤健次選手ですね。高校時代から凄い選手でしたが、NO8からHOになってどんな選手になるのか。悩むことも多いと思いますが、それも楽しんでほしいです。僕も大学2年からHOにポジションチェンジしました。タイミングも似ていて注目しています」

坂手淳史選手(帝京大学時代)

――大学時代の話も聞かせてください。グラウンドと寮を行ったり来たりする時間が長かったのでしょうね。
「勉強もちゃんとしていましたよ(笑)。学校、グラウンド、寮の往復がほとんどでした。繁華街に行く時間はあまりなくて、多摩センターにご飯を食べに行くくらいでした(笑)」

――息抜きはどうしていたのですか。
「選手同士の仲が良くて、先輩ともいい関係ができていたので、寮での生活が楽しかったです。僕は1年生の時、中村亮土さんと同じ部屋でしたが、リラックスできる空気を作ってくれていました」

――当時は大学日本一を義務付けられたような時代ですよね。
「あの頃は、日本選手権でトップリーグのチームと対戦出来たので、トップリーグに勝つというのが目標でした。大学日本一に目標を置きつつ、もう一つ上の目標を持つことでさらに成長することができます。また、ラグビーだけではなく、私生活の部分でも成長し、社会で生きる力を身に着けることにも取り組んでいました」

――4年間でもっとも印象に残っているのはどの試合ですか。
「自分の代で優勝した瞬間は、ほっとした気持ちがあふれました。その気持ちは下級生での優勝では味わえないものです。4年生の大学選手権では、僕は12月27日の中央大学戦で左ひじを痛めてしまいました。決勝戦はリザーブでしたが、最後にフィールドに立つことができました。僕がプレーできる時間を作ってくれた仲間たちへの感謝もあり、いろんな感情が入り混じった優勝だったので印象に残っています」

――大学ラグビーを経験したからこそ、成長できたところはありますか。
「ラグビーだけではなく、フィジカルの部分も鍛えていただきました。それはトップリーグ、日本代表で活躍する土台になりました。また、ラグビー、そしてラグビー以外に対しての向き合い方、リーダーとしての考え方なども大学4年間でたくさん教えていただきました。それがあったからこそ、いまの自分があります。たくさん考えさせてもらった4年間でした」

――大学ラグビーの面白さはどんなところですか。
「高校ラグビーではスクラムは1.5mまでしか押せませんが、大学からはフリーで押し合います。試合時間も、30分ハーフから40分ハーフとなり、いろんなことが大人と同じになるんですね。そして、フィジカル面、プレーの強度などもトップレベルに近づいていきます。100名を超える部員の中で試合に出られる、出られないという心の葛藤もありつつ、みんなで同じ釜の飯を食べながらひとつになって戦う。毎年メンバーが入れ替わり、それぞれの学年が強い思いを持っている。そんな熱さを感じるのが大学ラグビーの魅力だと思います。ファンの皆さんにとっては、まだ完成してない選手が、どんどんうまくなって、成長を遂げていく過程を見るのも楽しいでしょう。日本代表になるところまで見届けていただくと、より楽しめるのではないでしょうか」

――坂手選手にとって、大学ラグビーとはどんなものですか。
「しんどかったけど、しんどいなりに得るのもが大きい4年間でした。試合に出ているメンバーだけが偉いわけではなくて、他の選手も含めてチームを作っていくのですが、試合に出られない4年生がみんなのサポートをするんですね。僕もサポートしてもらったし、人間としてのつながりを感じて、すごくいい経験でした。同級生は40名いました。リーグワンではあり得ないことです。優勝という目標に向かってみんなが切磋琢磨しながら、たまにはぶつかって成長した。全員がラグビーを続けるわけではなく、就活しながらサポートしてくれる選手もいました。今も応援してくれています。卒業後も続く絆が生まれるのも良いことだと思います」

坂手淳史選手(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

――最後に日本代表のことも聞かせてください。6月、7月、ウルグアイ代表、フランス代表とのテストマッチシリーズは、キャプテンとして臨みました。改めてどんなシリーズでしたか。
「勝てなかったのは悔しかったのですが、たくさんの選手がプレーし、新しいリーダーグループでプレーできました。多くの選手がさまざまな経験を得ることができたのは収穫でした。若い9番(齋藤直人)、10番(李承信)はすごく良かった。負けたけれど、こうしなくてはいけない、こうすれば勝てるという道筋が徐々に見えてきています」

――キャプテンとしては、反省点などありますか。
「チームを引っ張るために、自分のプレー、行動、態度で示さなければいけないと思っていました。その中で自分たちがどういうラグビーをしたいか、相手に対して日本代表はどう戦っていくかをビジョンとして見てもらえるようにコメントしていたつもりです。ゲームの中での意思疎通は潤滑に進めることができました。ただ、チームを勝たせることができませんでした。僕自身の判断ミスもありました。特にフランス代表との2試合で痛感したのは、強豪国とのテストマッチは、ひとつの判断ミス、チャンスでのミスで勝てなくなるというということです」

――10月、11月のテストマッチはどう戦いたいですか。
「このオフの期間は、世界に通じるフィジカリティを身に着け、どのプレーでも負けない体をつくるためにトレーニングに励んでいます。6月、7月のテストマッチで通用した部分、通用しなかった部分を考えながら、チームに勢いを与えられるようなプレーをし続けないといけないと思っています」

――フランス代表戦では坂手選手もからんで、パスをたくさんつなぎながらのトライがありましたね。
「リーチさんがいい声をだしてくれたので、つながって良かったです。オフロードの精度はサポートコースも含めて、みんな良くなってきているので、アンストラクチャーのラグビーがうまく進めていけるのではないかと思います。阿吽の呼吸、運動量が大切な部分であり、コミュニケーションをたくさんとって、みんなで一体となってプレーすることを伝え続けていきたいです。そうすれば、アンストラクチャーからの攻撃が日本ラグビーの文化になっていくのではないかと思います。」

――2023年ラグビーワールドカップへの意気込みをお願いします。
「あと1年と少しですね。楽しみだし、僕自身もそのメンバーに選ばれるように自分のプレーを向上させたいと思っています。メンバーに選ばれて活躍し、日本代表が勝って、現地フランスでも、テレビの前でも、たくさんの人と一緒に喜べるように、良い準備をしていきたいです。応援していただけたら嬉しいです」

――自分自身を向上させていくという意味では、年齢を重ねてますますレベルアップする堀江翔太さんという先輩が身近にいますよね。
「一緒にトレーニングをしたときには、体の使い方などを教えてもらっています。良い身体の使い方でプレーするという意味では、昨シーズンは良い部分が見えてきて、プレーの中で考えることが習慣化してきています。深みが出てきて、いま、ラグビーをしているのが楽しいです。まだまだ成長できると思っているので、コンタクト一つから、考えながらプレーしたいです。世界のトップと戦うためには、世界一のプレーヤーにならなくてはいけない。もっともっと上手くなりたいですね」

文:村上 晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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