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保険会社の責務はオールブラックスの魅力そのもの
──なぜ、AIGはオールブラックスをサポートしているのですか。
「ニュージーランド・ラグビー協会はラグビーを世界に普及させることを熱心に考えていました。オールブラックスとともにラグビーを広めていけるグローバルブランドを探していたのです。一方、私たちAIGは独自性のあるフランチャイズを求めていました。オールブラックスはあらゆるプロフェッショナルスポーツのなかでも特別な存在です。ヨーロッパ、南太平洋など多様なバックグラウンドを持つ選手たちの集まりで、その活躍ぶりはとてもユニーク。経験豊富で、優れたスキルを持ち、それを一つにまとめて強いチームとなっているオールブラックスは、我々としてもぜひとも連携したいチームでした。
保険業は、何かを作り出すわけではありません。その代わりに約束をかわします。もし、あなたに万が一のことが起こったときにはわれわれが寄り添って助けますよ、というビジネスです。お客様の要望は、万が一のことが起きたときの適切な対応。正直に迅速に対応し、保険会社としての責務を果たすことが求められています。それはまさにオールブラックスの魅力そのものなのです」
──日本で撮影されたスペシャルムービー「タックル・ザ・リスク」は、とても面白かったです。
「これまで、世界で1.7億回再生されています。昨年撮影したものは多様性を表現するために女子選手も出てくれました。そして、7月18日リリースの第3弾では、キアラン・リード、ジョーディー・バレット、アーディ・サヴェアらが昨年秋のヨーロッパ帰りに立ち寄ってくれて撮影しました」
──ラグビーを初めて見たのはいつですか。
「私が初めてラグビー観戦をしたのは、29年前の香港セブンズ(国際7人制ラグビー大会)です。その時、私は日本に住んでいて、イギリス人の上司と彼の友人に香港に行かないかと誘われたのです。とても魅力的でエキサイティングな大会でした。その後、フィリピンのマニラに赴任したのですが、その年がラグビーワールドカップ(RWC)イヤーで、イギリス人、オーストラリア人の上司とランチタイムにパブで観戦しました。私はラグビーのルールには詳しくなったのですが興奮しました。そのときオールブラックスことも知り、魅了されました。以降14年間、マニラ、バンコク、香港とアジア諸国を移り住みましたが、どこへ行ってもラグビーは人気があり、テレビの放送もありました。
その後日本に戻ったのですが、アメリカ人の上司はラグビーを一度も見たことがないというので、日本と香港の試合に無理やり連れて行きました。すると、彼もラグビーに魅了されたのです。香港セブンズにも連れていき、その活気に満ちた雰囲気を体感してもらいました。その約4週間後、我々のアメリカ本社のCEOが、私の上司に連絡をしてきて『ニュージーランド代表オールブラックスへのスポンサーシップの話を持ちかけているのだが、どう思う?』と意見を聞いたのです。彼は、すでにラグビーに魅せられていましたから、ぜひやりましょうと言いました。こうして、オールブラックスとの縁ができたというわけです」
選手は真のアスリート 学びの多い紳士のスポーツ
──ノディンさんもアメリカご出身ですね。アメリカにはアメリカンフットボール、バスケットボール、ベースボールなどたくさんの人気プロスポーツがあります。ラグビーがそれらと違うのはどんな点でしょうか。
「興味深い質問です。アメリカ人はアメフトとラグビーがあまり変わらないと思っていますが、私は違うと思います。ラグビー選手の運動能力の高さは、アメフト選手を大きく上回っていると思います。アメフトは役割が細分化されており、ディフェンスとオフェンスでメンバーが変わります。その一方で、オールブラックスのコーディー・テイラーや、オーストラリア代表ワラビーズのマイケル・フーパーを見てください。彼らは、パス、キック、キャッチ、タックル、ジャンプ、なんでもできます。体格の大きさには関係なく、なんでもできる真のアスリートです。
試合中は2つのチームが激しく体をぶつけて戦うのに、試合が終わると一緒にビールを飲みに行く。互いに敬意を払い、語り合います。レフリーに対する接し方も独特です。アメリカのスポーツは、レフリーに対する態度はひどいものです。ラグビーのレフリーは敬意を払われている。子供たちにとっても模範となるものです。私自身の人生にとっても学びが多いスポーツです」
──先日、今年のRWCでレフリーを務めるアンガス・ガードナーさんの話を聞く機会があったのですが、レフリーの役割は試合をファシリテートすることだと話していました。
「とても興味深いコメントです。レフリーマイクを通して、レフリーと選手のやり取りを聞いているも面白いですよね。AIGは、レフリーの協賛もしています」
──ラグビーのレフリーは反則をさせないのが仕事です。AIGのビジネスとも相性が良いのではないですか。
「たしかにそうです。保険というのは事後のケアというイメージがありますが、我々は能動的にお客様と連絡を取り、彼らの生活習慣の改善など、いかにリスクを回避するかに取り組んでいますから」
──ラグビーとビジネスの共通点はありますか。
「大いにあります。我々はいま大掛かりなプロジェクトを終えたばかりです。2つの保険会社を統合したのですが、一社は伝統的な日本の保険会社で、もうひとつはグローバルで欧米的な保険会社。文化の融合が最大のチャレンジでした。社員の経験、バックグラウンドが異なる会社を一つのチームとして機能させなければいけなかった。いかにチームとして助け合い、それぞれの能力を最大限に出させるか。ラグビーも同じですね」
全国各地で開催されるRWC 日本が輝く大きなチャンス
──日本でRWCが行われる意義をどう考えていますか。
「2002年、日韓で開催されたサッカーのワールドカップを振り返ると、あの大会によって日本でのスポーツが大きく変わったと思います。それまで日本人が見るスポーツの代表といえば野球でした。それがサッカーの認知度が上がり、地域社会が参画し、国を挙げての盛り上がりになりました。私は、今回のRWCは日本ラグビー界に同じような影響を与えると期待しています。日本の人々にとって東京オリンピックがいかに大事なものなのか、私はよく分かっているつもりですが、開催するのは東京が中心です。RWCは、北は札幌、南は熊本、大分と全国各地で試合があり、釜石が災害からいかに復興したかなど、さまざまなエピソードが知られる素晴らしいチャンスです。日本が国として輝く大きなチャンスなのです。また、アジアの国々もラグビーに投資をするようになっており、今回のRWCによって、引き続き、日本がアジアのラグビーをけん引する存在になり、国際舞台でも大きな力を発揮できるようになると思います。昨季のトップリーグでは、神戸製鋼コベルコスティーラーズに加入したダン・カーターが活躍しましたが、RWC後も、キアラン・リード他、次々にスター選手がトップリーグに加入します。さらに盛り上がるのではないでしょうか」
──個人的には、どんなことを楽しみにしていますか。
「私は16試合観戦予定です。個人的にいろんなチケットを買いました。妻もラグビーが好きなので彼女を連れて釜石や神戸にも行きます。来日する外国人と日本人が交流する舞台にもなるし、日本各地の人たちがそれぞれの地域で自分たちの文化を共有し、誇りに思える瞬間だと思います。東京オリンピックと同じくらい、日本政府をあげての後押しがほしいところです。たくさんの人々が来日し、日本各地を旅するわけですから」
──聞くまでもないことですが、どのチームに優勝してほしいですか。
「もちろん、オールブラックスです(笑)。しかし、ラグビーだからこそ、他のチームが勝っても良いのではないかと思っています。ダークホースはアルゼンチンと見ています。スーパーラグビーのジャガーズは国代表ではありませんが、南アフリカカンファレンスで1位になり、決勝戦まで進出しました。ほとんどのメンバーがアルゼンチン代表選手です。ずっと一緒にプレーしていますから、対戦チームにとってはタフな相手です。イングランド対アルゼンチンは注目しています。また、今年のシックスネーションズではウェールズも素晴らしい出来でしたし、アイルランドも出来は少しがっかりでしたが、本番までを見据えると調子を落とすには良いタイミングだったのかもしれません。イングランドはエディー・ジョーンズヘッドコーチが率いますから注目です。オーストラリア、南アフリカも強い。日本は大変なプールに入っています。プールAの最終戦である日本対スコットランドは、絶対に見るべき試合になると思います。2015年と同じような熱量で戦えば、日本は相手にとって怖いチームになるでしょう」
──もし、日本がプールAで2位になった場合、準々決勝でオールブラックスを戦う可能性が高いですね。
「そのためには、オールブラックスは南アフリカを打ち負かしてプールBで1位となる必要があります。勝つと思っていますが、万が一負けた場合に備えて、そのチケットも用意していますよ(笑)」
──JSPORTSはご覧になっていますか。
「いつも見ていますよ。J SPORTS4も申し込みました。このチャンネルでもラグビーを放送していることを知らなかったんですよ」
──JSPORTSは、RWC2019の48試合をすべて生放送します。
「それは素晴らしいことです。アリガトウゴザイマス」
──RWC期間中は仕事になりませんね。
「それが問題なんです。16試合現地で観戦することに関しては、私の上司は不満だと思います。この数字は、記事には書かないでもらえますか?(笑)」
AIGジャパン・ホールディングス株式会社
日本におけるAIGグループの保険持株会社として、AIGの日本事業を統括し、AIG損保やアメリカンホーム保険など傘下保険会社および子会社の経営管理を行う。
http://www-510.aig.co.jp/
オールブラックス登場のスペシャルムービーはこちら
代表取締役社長兼CEO ロバート・ノディン
2013年2月よりAIGジャパン代表取締役社長兼CEO。日本・香港・フィリピン・タイのAIGグループで多くの要職を歴任。また、日本の外国損害保険協会にて会長職を含む役員を務める。ペンシルベニア州のゲティスバーグ大学で経営学士号取得。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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