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ラグビー コラム 2018年12月6日

未熟と紙一重の「きれい」~早明戦とラグビーの魅力~

be rugby ~ラグビーであれ~ by 藤島 大
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象徴的な場面があった。前半37分過ぎ。明治は、中央線上左の自軍投入スクラムを、ほぼ10mも押した。ペナルティーをもらう。そこから左展開。このアタックがうまく運んで、ふたつラックのあとも滑らかにゲイン、そこで左タッチラインの外に惜しくも出た。直前、アドバンテージは消えていた。ゴール前まで迫ったのだからレフェリーが間違ったわけでもない。ただ、早稲田にしたら、最初の反則に戻されてタッチキック→モール、あるいはスクラムをさらに組まれたほうが難しかっただろう。

しかし、明治は、できればスクラムの反則に戻してもらおう、なんて素振りすら感じさせず、実に堂々とオープン展開、紫紺と白のジャージィらしく、迷わず走り、どーんとラックを制して、いわば、いけるところまで前へ出た。早明戦だ。「すがすがしい」。そんな取り置き言葉を用いてはスポーツライター失格か。「無私」。これも少し違う。ただ全力を尽くす。未熟と紙一重の「きれい」。ぶちかますほうも倒すほうも、体は痛く、息も上がるだろうに、なんだか気持ちがよさそうなのだ。激しいのに、根源がきれいなので、おもしろさがじゃまされない。

古くからのファンには、明治の選手が、部訓にも近い「まっすぐ」を体現してくれてうれしかった。ゴールラインに垂直という「前へ」ではなく、斜め方向に走っても、その軌道がまっすぐであること。フランカーの井上遼(4年、報徳学園)のためらいを死語とするランと当たりに、見たことはないのに戦前の重戦車の勇士が想像された。

本稿だけの敢闘賞は、明治大学の背番号23、山崎洋之(3年、筑紫)。インパクトではもったいないほどのインパクトだった。マン・オブ・ザ・マッチは、早稲田大学の鶴川達彦(4年、桐蔭中等)。背番号1。劣勢のスクラムにあってヒットで対抗、元CTBらしく2トライにつながる見事なパスを成功させた。

再戦が楽しみ。大学日本一の行方は。そう文章を終えるべきかもしれない。でも、その気になれない。ひとつの早明戦があった。それはラグビー競技の魅力をよく伝えた。おしまい。

藤島大

藤島 大

1961年生まれ。J SPORTSラグビー解説者。都立秋川高校、早稲田大学でラグビー部に所属。都立国立高校、早稲田大学でコーチも務めた。 スポーツニッポン新聞社を経て、92年に独立。第1回からラグビーのW杯をすべて取材。 著書に『熱狂のアルカディア』(文藝春秋)、『人類のためだ。』(鉄筆)、『知と熱』『序列を超えて。』『ラグビーって、いいもんだね。』(鉄筆文庫)近著は『事実を集めて「嘘」を書く』(エクスナレッジ)など。 ラグビーマガジン、週刊現代などに連載。ラジオNIKKEIで毎月第一月曜に『藤島大の楕円球にみる夢』放送中。

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