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困難突破トーク スポーツは今! スポーツジャーナリスト編/ 山脇明子(ロサンゼルス在住)×杉浦大介(ニューヨーク在住)
J SPORTSプロデューサーコラム by 杉山友輝(J SPORTSプロデューサー)今、アメリカのスポーツジャーナリストは!
新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大に直面するアメリカでは、日本同様ほとんどのスポーツイベントが中止となっている。その中で、アメリカ在住の日本人スポーツジャーナリストは、今どんな困難に直面しているのか? そしてその困難を突破すべく、どのようなモチベーションで日々を過ごしているのか?
今回の困難突破トークでは、ロサンゼルス在住でMLB、NBAの取材を中心に活動を行う山脇明子氏と、ニューヨーク在住でMLB、NBA、ボクシングに精通した杉浦大介氏がオンライン上で対談。そして、アメリカンスポーツを熟知したスポーツアンカーの近藤祐司氏が、両氏から「今のアメリカ」を聞いた。
※日本時間5月8日に収録したものです。
アメリカの今
杉浦氏
近藤:現在のアメリカはどのような感じですか?
杉浦:ニューヨークはロックダウンされているので、不要不急の外出は出来ないですね。外出はスーパーに行くくらいです。パンデミック前は1年の大半を現場へ取材に行っていたので、生活も劇的に変わりました。基本的に「スポーツの現場」が存在しない状況です。
山脇:私はロサンゼルスに住んでいるのですが、NBAが中止になった3月11日を境に、生活が劇的に変わりました。それまでは出張から帰宅したら、またすぐに出張でしたが、現在の外出は1日1回のジョギングくらいです。そして、10日に1回の買い物から戻ってきたら、商品を「洗って拭いて」で大変です。
近藤:そうすると、取材が難しい現在、お仕事はどんな状況ですか?
杉浦:1年のうち300日以上現場に出ていました。特に、例年ですと4月5月は忙しいんです。MLBは開幕直後、NBAはプレーオフ、ボクシングは5月にビックファイトがありますが、今年はご存知の通り何もありません。
山脇:これまでは現場に出て、取材をして記事を書く、という流れでした。取材が出来なくなった当初は、何をしたらいいのかわからなかったです。現在は、ニュースや発表などをチェックして、そこから日本の方に伝えられるニュースを深堀りして、リサーチして記事にしているという状態です。
「現場が存在しない」ということ
近藤:今直面している困難は?
杉浦:やはり「現場が存在しない」というのがつらいですね。ジャーナリストは人と会って、インタビューするのが仕事の基本なのですが、今は出来ませんので、それが大きいです。インタビューして記事を書いて、そこから収入を得ることが出来なくなっています。
近藤:他のスポーツジャーナリストの状況は?
杉浦:今では友人の大半が、ジャーナリストなのですが、仲のいいボクシング関係の記者がコロナになってしまって、肺に血栓ができて歩けなかったそうです。今は病状も回復したそうで、安心しました。また、友人ではないのですが、ニューヨークポストのカメラマン、彼はいろいろな選手やチームからも親しまれていたのですが、彼がコロナに感染して亡くなりました。
山脇:同業者ではないのですが、息子のバスケットボールチームの、友達のお父さんがコロナになったと聞いて、とても心配です。
近藤:私は近しい関係では、かかった人はいないのですが、心配ですよね。「対面」できない今、取材方法はどうしているんですか?
杉浦:電話でのインタビューや、メールでのインタビューです。私はwebや雑誌の連載の仕事があるのですが、できることが限られているので、最近多いのは「アーカイブ」や「リーグやチームの歴史をまとめる」仕事が多いです。最近の電話インタビューでは、アメリカの大学から日本のBリーグに行くことになった、榎本新作選手のインタビュー記事を書きました。
アメリカでのスポーツ中継は? スポーツ団体は?
山脇氏
近藤:アメリカのスポーツ専門局ESPNは何を放送しているんですか?
杉浦:ESPNは、過去のアーカイブが非常に豊富にあるので、昔の名勝負を流しています。ただ、6月にやる予定だった「ラストダンス(マイケル・ジョーダンのキャリアとシカゴ・ブルズの黄金期を振り返るドキュメンタリー)」の放送を早めました。あとは韓国野球が始まったので、それも放送していますね。
近藤:日本もほとんどのスポーツが、止まっていますからね。
山脇:私はちょうどスポーツ施設のそばに住んでいるんですけれど、バスケットボールのリングも撤去されて、サッカーも出来なくなって、アーチェリー場も閉められました。ただ、その中でゴルフ場がオープンして、ソーシャルディスタンス保ちながら皆さんやっていますね。
近藤:MLBをはじめとする、各スポーツ団体の状況はいかがですか?
杉浦:いろいろなアイデアが出てきて、いい方向に向かっています。一部のチームには6月10日キャンプ再開、7月に開幕と言うアイデアを近いうちに選手会に提案するとの話があります。そうなると、日本にも戻っている田中投手なども戻るだろうと言われています。具体的な話が出てきているのは、良い傾向だと感じています。
近藤:WWEも試合をやったりしていますよね。
杉浦:フロリダではレスリングは不可欠なサービスだと認められたので、興業が認められているんだと。WWEもそうですね、そしてUFCは5月9日からフロリダで再開して、しかも1週間で3興業やるという。9日の興行に関しては、かなりESPNでも派手にPRしていましたね。
山脇:NBAもなかなか進んでいませんが、日本時間の5月9日から練習施設もかなり限定して、練習していいとしています。でも、まだこれからですね。
近藤:NFLはドラフトが行われましたが
山脇:生のスポーツが行われなくて、ドキドキに飢えているので、ドラフトは視聴率もよく、盛り上がりましたね。あと、NFLのニュースが一番元気だと思います。NBAとNHLはシーズン終盤で、これからプレーオフだぞ!というところで中止、MLBはこれから開幕だぞというところで、中止でした。これからシーズンに向かっていくNFLは、元気なニュースが入ってきますね。
近藤:全米オープンテニスについてはいかがですか?
杉浦:全米オープンテニスについては、8月下旬から9月上旬のニューヨークでもかなり大きなイベントですよね。開催に向けて進んでいるという話もありますが、会場のクイーンズ地区は仮設の医療施設になっているので、できるのかどうか難しいところです。とりあえず、しばらくは無観客イベントになるのですが、全米オープンテニスの主催者サイドは無観客ならばやらないとしています。果たして、夏までにお客さんを入れられる状況になるのかなど、開催は微妙です。
近藤:選手たちはこのような状況でどのような取り組みをしていますか?
杉浦:メッツの昨年の新人王である、ピーター・アロンソが母校のオンライン授業に、zoomで飛び入りして生徒に指導したんです。それはとても印象に残っていますね。
コロナ終息後にやりたいことは?
近藤:今後のスポーツで、開幕・再開後の注目ポイントを教えてください
山脇:地元ロサンゼルスのことで申し訳ないんですけれど、優勝するチャンスを逃したドジャーズが、そのリベンジをシーズンでどう見せてくれるかが楽しみですね。
杉浦:私も地元の話、ニューヨーク・ヤンキースの話で申し訳ないのですが、今の状況は2001年の世界同時多発テロの時と雰囲気が似ているように感じます。あの時もヤンキースが奇跡的な形でワールドシリーズまで進んで、あと1勝のところまで進んでファンを喜ばせたと。今年に関しては、コロナで厳しい時間を過ごしているのはニューヨークだけではないんですけれど、被害の大きい地域ということではあります。シーズンが再開されれば、ヤンキースが大きな期待をもって戦ってくれると思いますね。
近藤:私はMLBが7月に開幕して、大谷選手が投打で活躍してくれるのが、楽しみですね!さて、コロナが終息したら何をしたいですか?
山脇:取材がしたいです! とにかく生で試合を見て、自分で聞いた話を、見た様子を伝えたいです。
杉浦:もちろん仕事もそうなんですが、今、家族と一緒にいることで、家族の大切さがとても分かりました。私には2歳の娘がいるんですけれど、公園かプレイルームに連れて行ってあげて、家以外で遊ばせてあげたいですね。そして、いちばん仕事が増えて大変なのが妻なので、どこかのレストランで、肉が好きな妻にステーキを食べさせてあげたいですね。
近藤:今、誰に会いたいですか?
山脇:自分がお世話になったチームの広報や、スタッフの方です。皆さんに早く会いたいです。
杉浦:同僚の記者には会いたい、どう過ごしていたか聞きたいですね。ある意味、運命共同体的なところもあるので。これまで冷たくしていた人にも、優しくしたりできそうですね(笑い)
近藤:おしまいに、スポーツファンの方にメッセージを
山脇:スポーツは必ず戻ってきます。絶対戻ってくるので、みんなで待ちましょう。そして、スポーツが早く戻ってくるためには、私たち一人一人が感染を防ぐためにできることを、頑張って行くことが大切だと思います。
杉浦:こんなにスポーツがなかったことは、今までなかったこととして、ファンにとっては非常につらいことです。ただ、スポーツが見られなくてさみしいと思える体調の人はラッキーです、もっと大変な状況の方もいるわけですから。もうしばらく我慢して、この間に学んだことを忘れないようにしましょうと、お伝えしたいです。
近藤:お二人とも、スポーツが再開した時には、取材がんばってください! ありがとうございました。
文:J SPORTS 杉山友輝
杉山友輝(J SPORTSプロデューサー)
若手のADを見るとすぐに「メシくってるか?」という昭和臭いプロデューサー。担当競技は卓球・ラリー・ゴルフ。毎日自らで作ったカスピ海ヨーグルトを食べるのが健康法。ニックネームはスギP。
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