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モーター スポーツ コラム 2025年10月1日

ジョイ&ストレス

今日も今日とてプッシュ&ルーズ by 高橋 二朗
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勝利を手にしたアルピーヌ・エンデュランス・チーム

ジョイフルとストレスフル――。
この対義語(反義語)の表現が渦巻く一戦だった。

FIA 世界耐久選手権(WEC) 2025 第7戦 富士スピードウェイ6時間レースが開催された。日本開催の一戦。ここ数年海外の取材ができていないので、国際映像を観ながらコメントするレースとは違っているのは当然。練習走行から現場で観ることができる貴重な一戦でもある。そして、現行WECの100戦目となる記念すべき大会でもあった。

ご存知のようにWECは、毎戦の事前にバランス・オブ・パフォーマンス(BoP)が直近の3レースの結果を考慮して変更され、発表される。これによって各参加車両のパフォーマンスの拮抗をコントロールしている。単なる速さだけではなく、レース中の展開でも突出したパフォーマンスを発揮できなくなっている。これは、実によくできているシステムであって、誰が勝つのか、勝てるのかは分からない。勝敗を決するのは、予測できないインシデントが鍵を握ってしまうということになる。この100戦目で勝利を得たのは、アルピーヌ・エンデュランス・チームだった。メーカーとしてのワークスチームでの参戦では初優勝。当然、ジョイフルパワーがピット周辺で爆発していた。表彰式でフランスの国歌が流れるのは久しぶりのことだった。

一方、ストレスフルだったのは、やはりTOYOTA GAZOO Racing (TGR)。BoPは、依然として最も重い車重が設定されて、時速250kmまでのパワーは低く、時速250km以上のパワーゲインは、0.3%上げられたけれど、相対的には厳しいBoPであるのは、変わらず。コーナリングで速さを示しても富士スピードウェイの特徴であるロングストレートで勝負できないという状況の中で順位を上げる闘いをしなければならなかった。7号車は、前半戦の終わりでハイパーカークラスのBMW M・チームWRTがクラッシュし、このアクシデントでガードレールの修復が行われバーチャルセーフティカー(VSC)とセーフティカー(SC)にレースコントロールが変化する前にピットインしていたのでVSC & SCでピットインが行えないチームに対して順位をアップできた。しかし、その後再びのアクシデントが起こってフルコースイエロー(FCY)からSCに移行した際には給油をせざるを得なくなったため、2度ピットインをした。その結果、2位から13位へ順位を落とした。また8号車は、序盤で接触を受けて左リアタイヤがパンク、カウルも損傷を受けFCY中にピットインして作業後、レースに復帰。FCY中は8秒の給油は許され、解除された後に再度ピットインする必要がある。チームは、マシン損傷でやむを得ずピットインしたので、給油のためではなく再度のピットインは必要ないという解釈をした。しかし、それは間違っていると裁定が下り、3分間のピットストップペナルティを科せられ、上位フィニッシュのチャンスを完全に失った。レース後に行われたTGRの会見では小林可夢偉チーム代表の悔しさとフラストレーションメーターの針は振り切って、飛んでいた。

なお、TGRは来年に向けて車両の一部改良が許されるジョーカーEvoによって空力パッケージ改良に着手していることを明言。10月の上旬からテストを開始するという。

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文:高橋 二朗

高橋 二朗

高橋 二朗

日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。

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