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レーシングカート雑誌「ザ・カート」(写真:筆者提供)
先週の6月18日にヤマハ発動機とグループ会社のヤマハモーターパワープロダクツ、株式会社菅生が2027年12月末でレーシングカート事業から撤退という発表があった。
ボクは、モータースポーツ記者という仕事をスタートしたのは、レーシングカート雑誌の編集助手から。今から47年前のこと。
12歳でレーシングカートライセンスを取得。兄貴と共有したカートフレームは日本カート製、エンジンはロビン。ロビンというのは当時の富士重工業、現在のSUBARUの汎用エンジン。1970年代の半ばになるとモータースポーツ雑誌にヤマハのコンプリートレーシングカート【RED ARROW】の広告が掲載された。フレームからエンジンまでをヤマハが製造し販売。その時のエンジンは汎用のMTだった。お値段は198,000円。現在の価値だと倍ぐらいの値段くらいかな。高校生になっていたがその値段には手が出せなかった。そして、数年後にカート専用エンジンKTを搭載したRC100Sが発売された。KTは国産エンジンとして現在まで半世紀に渡ってレーシングカート界を支えてきた名機。ヤマハのレーシングカートへの参入によって一気にブームとなった。ハードウェアだけではなく、ヤマハは、スポーツ&レジャー カートクラブ(SLKC)を設立して、普及にも力を注いだ。1975年にスポーツランドSUGOがオープンし、そこに国際的なカートコースが造られた。1977年に日本初の国際カートレースジャパンカートグランプリレースを開催。全国各地にカートコースが出来、各サーキットでSLシリーズが展開されて、SUGOで日本一を決める全国大会が行われた。ヤマハの牽引によって新たな国産フレームメーカー、エンジンメーカーが誕生し、外国製のフレーム/エンジンもどんどん入ってきて、全日本選手権は80年代には大人気となり、4輪モータースポーツのエントリーカテゴリーとしての確固たるポジションが確立した。しかし、2000年あたりから業界の元気がなくなってきてしまった。参加人口が少なくなってきてしまったというのが理由なのだけれど、それは、ハードウェア、フレーム/エンジンのコストの高騰。本格的に活動しようとするとイニシャルコストが100万円を軽く超えてしまうほどになってきてしまった。顧みると国産カートフレームメーカーはなくなり、エンジンメーカーはヤマハだけとなった。そして、そのヤマハも冒頭のように撤退を決定した。悲しいばかり。
今年のスーパー耐久の第3戦「富士24時間レース」開催の会場、富士スピードウェイ内のカートコースでトヨタの入門用カート【GRカート】の試乗会が行われたという。安価なコスト設定。海外メーカーの4分の1ほどの価格設定を目指しているという。トヨタがカート業界への救世主となるか。そして、カートを通じてモータースポーツの健全な入門カテゴリーの整備を目的に一般社団法人 日本カート協会の設立発表が6月24日に行われた。
6月24日に行われた日本カート協会の設立発表記者会見(写真:J SPORTSスタッフ提供)
文:高橋 二朗
高橋 二朗
日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。
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