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今年のル・マン24時間レースは、昨年のように天候に翻弄されることもなく、結果としてトップ4台が僅差でフィニッシュするという大接戦で幕を閉じた。決勝のスタート、土曜日の午後4時直前までお祭りの雰囲気満載だった当地は、スタートと同時に激戦の場へと一変した。
歴史的なトップ4が30秒以内フィニッシュという結果は、現在の世界耐久選手権(WEC)のハイパーカークラスのレギュレーション内のバランス・オブ・パフォーマンス(BOP)を見れば、納得できる結果だったと言っても良いかも知れない。最低車両重量、時速250キロまでの最大出力、時速250キロ以上となった時の出力加減、その他4項目で規定値が設定されていて参加している各メーカー繰り出す車両のパフォーマンスが均衡するようレース毎に発表されて、戦うこととなる。オーガナイザーは、常に各車が規定値内で走行しているかを各車に装着されているセンサーによってチェックしている。
ハードウェアでは大差がない。いや差がないように設定されている状況でどのようにしてライバルと闘うのか。供給されるタイヤは、自らが用意しているものではない。そして、そのタイヤもドライコンディションではミディアムとソフトの2種類あって、最大使用本数が決められている。それをどうやりくりして使いこなすか。
モータースポーツでありながら、他の頭脳競技、将棋や囲碁、チェスのような盤上のゲームにも似ている面がある。レース中のコンディションなどが変わりそれに対して作戦を変える点では、自分と対戦相手がサイコロを振って異なる状況を創り出して、それに対応する点ではバックギャモンの様相を呈しているのが今のWEC、ハイパーカークラスの戦いであると思えてきた。プレイヤーであるドライバーは、コックピット、シートに収まりながら高度なレーシングテクノロジーが満載されたレーシングマシンを操り、順位を争いながらマシンをゴールへと導く。今年のル・マン24時間レースの国際映像を見つつ、つくづくそう感じた。
アクシデント、バイチャンスのインシデント、トラブルが起きるかどうかで順位の変動があって、勝者が決まる。また、ドライバーのミスは絶対に許されないというとてつもなく厳しい状況。今後新たに二つのメーカーがハイパーカークラスに参戦してくることもわかっていてWECのトップクラスは活況を見せ続けている。決勝の前にハイパーカーの規定は、2032年末まで延長されることが発表された。エントラントにとって過酷な戦いの場はこれからも続く。
文:高橋 二朗
高橋 二朗
日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。
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