【ル・マン特集 | 決勝まであと10日】CarGuy木村武史が挑む7度目のル・マン24時間

決勝レーススタートまであと10日

世界三大自動車レースの一つ「ル・マン24時間レース」が2025年6月14日（土）〜15日（日）に開催されます。「J SPORTS」ではFIA WEC（世界耐久選手権）の中で最も重要なこのレースを今年も24時間完全生中継。このレースをより楽しんでいただくために、決勝レースがスタートするまでの間に24個のトピックスを取り上げ、今年のル・マンの見どころをご紹介しています。第15弾は日本を代表するジェントルマンドライバー「木村武史の挑戦」についてです。

「第93回ル・マン24時間レース」に出場する日本人ドライバーは僅かに4人と例年に比べて少なめになっています。今はFIA WECの「HYPERCAR」クラス参戦メーカーの増加、「LMGT3」クラスに参戦を希望するメーカーの増加によって、まさに参戦枠の奪い合い状態になっています。「LMGT3」もメーカー色が強めになっていますし、今はジェントルマンドライバーも限られた選手しか年間参戦できない状態なのです。FIA WECに参戦するとなると、そのコストも莫大ですからね。

ただ、ル・マンだけは違います。FIA WEC以外にも参戦枠を獲得できる方法があります。現在の「LMGT3」クラスにはELMS（ヨーロピアン・ルマン・シリーズ）、ALMS（アジアン・ルマンシリーズ）、IMSA（ウェザーテック・スポーツカー選手権）、そしてGTWC（GTワールドチャレンジ）の参戦チームにも参戦枠を獲得できるチャンスがあります。

「LMGT3」クラスに「Kessel Racing」のフェラーリ296GT3で第93回大会に出場するのが、7回目の出場となる木村武史です。昨年はレクサスRC Fをドライブし、FIA WECに年間参戦していた木村ですが、今年はル・マンのみの参戦です。昨年、彼はFIA WECだけでなく、ELMSに「Kessel Racing」のフェラーリ296GT3で年間参戦。2勝を飾り、ランキング2位を獲得したのが評価され、主催者であるACO（フランス西部自動車クラブ）よりル・マンへの特別招待枠を獲得しました。

不動産業でビジネスマンとしても成功をおさめる木村は2015年にランボルギーニ・スーパートロフェオでレースデビュー。40代半ばでレースを始めたジェントルマンドライバーであり、その情熱は「CarGuy Racing」の設立後、留まるところを知らず、レース活動は世界へと広がっていきました。

レクサスRC F LMGT3

2018年〜19年のALMS（アジアン・ルマンシリーズ）では「CarGuy Racing」としてチャンピオンを獲得。2019年のル・マン24時間レースに初出場しました。初挑戦ながらGTE-Amクラスで5位完走を果たしました。

その後もル・マンに挑戦するために2022年からはELMSに毎年参戦。「Kessel Racing」と共にル・マン出場を目指し挑戦し続けています（昨年だけレクサスRC Fでの出場）。

つい最近まではジェントルマンドライバーのエントリーに頼りがちだったル・マンですが、先述のように今は状況が大きく変わってきています。連続して出場するチャンスを得ること自体が至難の業。しかし、ル・マンを主催するACO（フランス西部自動車クラブ）はル・マンイズムのシリーズであるELMSやALMSに参戦するチームやドライバーを大切にしています。

これまでもそういったシリーズで自らステアリングを握り、腕を磨き、今や国際的ジェントルマンドライバーとして結果を残している木村武史。7度目となる情熱的なチャレンジは悲願の表彰台へと向かっています。

文：辻野ヒロシ