【ル・マン特集 | 決勝まであと16日】マグヌッセン加入でBMWは体制強化を図ってきた

決勝レーススタートまであと16日

世界三大自動車レースの一つ「ル・マン24時間レース」。第93回大会となる大会がフランスのモータースポーツの聖地、ル・マンを舞台に、2025年6月14日（土）〜15日（日）に開催されます。「J SPORTS」ではFIA WEC（世界耐久選手権）の中で最も重要なこのレースを今年も24時間完全生中継。このレースをより楽しんでいただくために、決勝レースがスタートするまでの間に24個のトピックスを取り上げ、今年のル・マンの見どころをご紹介しています。第9弾は「HYPERCARクラスに参戦するBMW」についてです。

「駆けぬける歓び」のスローガンでスポーティなイメージの乗用車を生産するドイツのブランド「BMW」。近年はFIA WEC、そしてル・マン24時間などスポーツカーレースに力を注いでいます。

BMWは1999年、LMPクラスに参戦したBMW V12 LMRでル・マンの総合優勝を達成。このマシンは当時BMWがエンジンを提供していたF1コンストラクターのウィリアムズと共同開発されたものでしたが、総合優勝したのを最後にル・マンからは撤退しました。

そして、他の自動車メーカーと同様にGTカークラスで耐久レースに参戦してきたBMWでしたが、LMDh規定で作られた「BMW M Hybrid V8」で北米IMSAへの参戦を表明。プロトタイプカークラスに復帰しました。当初はIMSAのみの活動とも言われていましたが、昨年からはFIA WECにもシリーズ参戦。25年のブランクを経て、BMWはル・マンの最高峰クラスへと戻ってきました。

かつてはアウディのGTカーレース活動を担っていたWRTが運営するBMWのHYPERCARチームに、今年は昨年までF1を走っていたケビン・マグヌッセンが加入。2014年にマクラーレン・メルセデスからF1デビューし、デビュー戦で2位表彰台を獲得したマグヌッセン。結果としてはこれが彼のF1でのベストリザルトとなりましたが、「ハース」のドライバーとして7年間も走っていましたから、その印象が強く、2位表彰台やマクラーレンに居た時代を忘れている人も多いかもしれません。

昨年までF1を走っていたケビン・マグヌッセン

近年のF1ではクラッシャーのイメージがついてしまっていた彼を起用して大丈夫か？と心配になる人も多いかもしれません。結果を見れば分かりますが、マグヌッセンのF1での完走率は割と高めです。

なぜに耐久レースに？という部分ではこれも忘れている人が多いかもしれませんが、F1シートを喪失していた2021年に実はキャデラックでIMSAを年間で戦っていましたし、その年のル・マンではLMP2クラスのデンマークチームで父のヤン・マグヌッセンと親子で出場しているのです。

父のヤン・マグヌッセンも元F1ドライバーですが、F1でシート喪失後は耐久レースに転向。長年、コルベットレーシングのドライバーとしてIMSAを年間で闘ってチャンピオンを獲得したのはもちろん、毎年ル・マンにコルベットで出場し、4回もクラス優勝を果たしました。息子ケビンの耐久レースへの転向はある意味自然なことと言えるのかもしれません。

昨年のル・マンでは結果が残らなかったBMWでしたが、FIA WEC富士ではシーズンベストとなる2位表彰台を獲得。今季もスパでは20号車（フラインス／ラスト／ヴァンデルリンデ）が2位表彰台を獲得。初優勝が見えてきているだけに、体制強化を図ったBMWには大きな期待がかかります。

文：辻野ヒロシ