【ル・マン特集 | 決勝まであと20日】勝てば20回目の優勝となる耐久王、ポルシェ

決勝レーススタートまであと20日

世界三大自動車レースの一つ「第93回 ル・マン24時間レース」が2025年6月14日（土）〜15日（日）にフランスのル・マン、サルトサーキットを舞台に開催されます。「J SPORTS」ではFIA WEC（世界耐久選手権）の中で最も重要なこのレースを今年も24時間完全生中継。このレースをより楽しんでいただくために、決勝レースがスタートするまでの間に24個のトピックスを取り上げ、今年のル・マンの見どころをご紹介しています。第5弾は「耐久王」の異名を持つポルシェについてです。

100年以上の歴史を誇り、過去92大会開催されている「ル・マン24時間レース」の中で最多の総合優勝記録を誇るマニュファクチャラー（自動車メーカー）がドイツのポルシェです。特に1970年代からその勝利数をグングン伸ばし、プライベートチームの手も借りながら優勝回数を重ねて「ポルシェ＝耐久王」の名で知られるようになりました。

FIA WECで世界選手権シリーズが再編され、トヨタ、アウディに少し遅れる形で最高峰LMP1クラスに復帰。熱エネルギー回生も利用した野心的なハイブリッドマシン「ポルシェ919ハイブリッド」で2015年、16年、17年と3連覇。その後に開発コストの高騰もあり、最高峰クラスからは撤退してしまいます。

通算19勝をマークしたポルシェ。2023年に北米のIMSA（ウェザーテックスポーツカー選手権）のLMDh規定で製作された「ポルシェ963」でル・マンに復帰。昨年のル・マンではポールポジションを獲得しましたが優勝は叶いませんでした。ただ、FIA WECでは富士スピードウェイでも優勝し、HYPERCARクラスのドライバーズチャンピオンを獲得することに成功しました（マニュファクチャラーズタイトルは2点差でトヨタ）。

また北米IMSAのデイトナ24時間レースでは24年、25年と2連覇。24年は同選手権の最高峰「GTP」クラスでも年間チャンピオンを獲得しています。今年はIMSAのセブリング12時間レースでも優勝し、今年どうしても欲しいのはル・マン24時間の優勝でしょう。

ポルシェ919ハイブリッド

ポルシェのマシン「ポルシェ963」はIMSAのLMDh規定で作られているマシンであるため、フォルムの印象は非常にシンプル。市販車のイメージなどは気にせず、デイトナやル・マンなど耐久レースの最適解を導き出したボディデザインと言えるものです。かつてのLMP1時代とは大きくかけ離れた「何かをPRする、主張する」マシンではなく、BoP（性能調整）されるルールの中でしっかり結果を残せるコンベンショナルなマシンを用意しているという印象です。

昨年はFIA WECでドライバーズチャンピオンを獲得しましたが、今季はラインナップを刷新。アンドレ・ロッテラーやフレデリック・マコヴィッキィなどSUPER GT/GT500やLMP1カーの経験があるドライバーとの契約を終了し、マシュー・ジャミネットとジュリアン・アンドルーアを起用。ネームバリューよりもポルシェのイズムやレースの考え方を熟知した「ポルシェ育ち」のドライバーたちを重宝するようになっています。

ル・マンにはIMSAで今季開幕3連勝の4号車が登場。こちらはIMSAでチャンピオン4回のフェリペ・ナスール、2015年ル・マンウイナーのニック・タンディ、そして昨年のフォーミュラE王者で元F1ドライバーのパスカル・ヴェアラインを3人目として起用するなど超豪華メンバーです。

昨年のような速さでライバルをザワつかせる感じではないかもしれません。サバイバルレースになった際には気がつけば首位を走っている、なんていう耐久王らしいレースを展開するような気がします。

文：辻野ヒロシ