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小林可夢偉はハイパーポールで最速タイム。今季初のPPを獲得したが決勝ではトラブルに見舞われた。
ブラジル、サンパウロ。
一度訪れたことがあります。
しかし、今回10年ぶりに世界耐久選手権(WEC)が開催されたインテルラゴスサーキットに行ったのではなくて、サンパウロの中心からサーキットに向かう途中にある競馬場に行ったのでした。もう30年くらい前の話です。ギャンブル目的で訪れたわけではなくて、仕事でした。
まあ、その話をすると長くなるので…。
第4戦のル・マン24時間レースから約1ヶ月。TOYOTA GAZOO RACING( TGR)にとっては悔しさいっぱいだった第4戦ル・マンの雪辱を果たすべく臨んだ第5戦。そして、最高の予選結果から決勝レースの序盤で主導権を握ってゴールを目指す2台のGR010 HYBRID。ポイントラインキングで上位の7号車を先行させる作戦もとった。テレビの放送ではよくあることだけれど、2位以下に大きなギャップを築いたトップ車両(7号車)は、レースの序盤に画面に登場することはなかった。それほど今回のTGRは、速くて強かった。しかし、7号車に降りかかった燃料系のトラブル。映像からは、燃料系のコントロールを司るユニットのようなものを交換したように見えた。そして8号車がトップに立ち、2位に1分以上の大差で優勝を果たした。8号車の優勝は昨年の最終戦以来、今季初。トラブルで19台が参加しているハイパーカークラスのほぼ最下位まで順位を落としていた7号車だった。ボクが番組のコメンテーターを担当したのは6時間レースの中盤で終えた。そこまでの速さからは、7号車はポイントゲット範囲、つまり10位内くらいまで挽回するだろうと思っていつつ、スタジオを後にした。最後のスティントは小林可夢偉選手/チーム代表が担当するので、その鬼神の走りを期待していた。そして、彼は成し遂げた。それも4位まで上り詰めた。インテルラゴスサーキットは、コース距離がシーズン中で一番短く、オーバーテイクポイントはそれほど多くなく、1コーナーが最大のオーバーテイクポイントだとしても、ラインを外に外してしまうとコースアウトを免れられない。インフィールドは抜きにくい。そこでリスクを覚悟でパッシングを試みれば、レースを終えてしまうことだってある。その難しさを克服しての4位。これは凄いの一語に尽きる。トヨタの豊田章男会長がレース後にコメントしている。7号車のクルーと可夢偉選手の活躍を讃えると共に「波乱ばかりを引き寄せる数奇な運命」と。
シリーズは後半戦に突入していて第6戦のアメリカ、そして第7戦の日本=富士へと続く。チャンピオンへ向けての健闘を祈る。
文:高橋 二朗
高橋 二朗
日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。
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