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前戦は急遽参戦となったK.ロバンペラが劇的な優勝を果たした。
ラトビアは隣国のエストニア、リトアニアと共にバルト三国と呼ばれ、バルト海を隔ててフィンランドがあります。ちなみにエストニアは、タナク選手の出身国です。
ここでもフィンランドの影響を受けてラリーが盛んに行われており、ヨーロッパ選手権レベルの経験があります。ラリー・ラトビアは発足当時雪と氷の冬季開催でしたが、2019年に5月開催に移行。ヨーロッパ選手権のイベントとして前向きな努力を重ね、今回WRC開催にこぎつけました。WRC初参入ですから現役のトップドライバーたちは情報が少なく正確なペースノートを作成するのが困難なものの、一部の北欧ドライバーはヨーロッパ選手権のイベント時代にラトビアを経験した選手もいます。
路面は北欧タイプのしっかりとした土台ですが、表面がややソフトの高速ラリーです。ポーランドとフィンランドの中間くらいの柔らかさのようです。
トヨタは今回4台のフル参戦、事故でポーランド欠場したオジェが復活、ロバンペラ、エバンスの3台がメーカーポイントゲッター、それに勝田がサブチームで参戦です。
ドライバーとメーカーで累計ポイントリーダーのヒョンデはヌーヴィル、タナクに加え3台目はフィンランド人のラッピが乗ります。フォードは今年大化けして累計ポイントで4位のオジェを1ポイント差で5位に付けるフルモーとミュンスターに加え、ノンハイブリッドでポーランドを善戦したセスクス(ラトビア)の3台体制です。
前戦ポーランドでは、レッキ中の事故のため欠場したオジェのピンチヒッターで急遽出場のロバンペラが劇的優勝を遂げましたが、私の現役中にも似たような経験をしたことがありました。1993年のラリー・アルゼンチンでカンクネンのコ・ドライバーを務めるユハ・ピロネンが現地で脳梗塞を発症し、チームは英国からニッキー・グリストを呼び寄せることになりました。彼が着いたのはラリースタートの前日。ピロネンがフィンランド語でなく英語でペースノートを作っていたため、そのまま使用して見事優勝。ニッキーはWRC初優勝を経験、カンクネンは93年ドラーバーチャンピオンになりました。これを記念してTTEはカンクネンに優勝車を贈呈しました。
このクルマは今もイバスキラのカンクネンコレクションに展示してあります。一方当事者のピロネンは手厚い治療とリハビリ努力により旅行ができるところまで回復。奥さんとともにアクロポリスラリーへ招待し、全快祝いをしました。感涙でした。
こんなことを回想しながらラリー・フィンランドの前哨戦となるラトビアの高速グラベルを楽しみたいと思います。
ラリー概要は下記のとおりです。
SS本数 | SS km | Liaison km | Total km | |
---|---|---|---|---|
Day 1 (7/18) | 1 | 11.00 km | 25.21 km | 36.21 km |
Day 2 (7/19) | 7 | 120.92 km | 405.57 km | 526.49 km |
Day 3 (7/20) | 8 | 104.00 km | 421.98 km | 525.98 km |
Day 4 (7/21) | 4 | 64.08 km | 191.89 km | 255.97 km |
Total | 20 | 300.00 km | 1044.65 km | 1344.65 km |
文:福井 敏雄
福井 敏雄
1960年代から欧州トヨタの輸出部員としてブリュッセルに駐在。1968年、トヨタ初参戦となったモンテカルロからラリー活動をサポート。トヨタ・モータースポーツ部のラリー担当部長、TTE(トヨタ・チーム・ヨーロッパ)副社長を歴任し、1995年までのトヨタのWRC圧勝劇を実現させた。
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