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ポルシェ、ヴェアラインは母国でリードを広げられるか? | FIA フォーミュラE世界選手権 2024 第9戦&第10戦ベルリン プレビュー
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシミサノで勝利して表彰台で歓喜するヴェアライン
電気自動車の世界選手権フォーミュラカーレース「フォーミュラE」はいよいよ後半戦に突入。第9戦、第10戦と2Day開催となるのはドイツ・ベルリンでの「Berlin e−prix」です。今回は5月11日(土)12日(日)にベルリンの空港跡地となるテンペルホーフ空港ストリートサーキットで行われるレースのプレビューをお届けします。
後半戦はヨーロッパのベルリンからスタートし、上海(中国)、ポートランド(アメリカ)、そして最後はロンドン(イギリス)と2レース開催のレースが4ラウンド、合計8戦のスケジュール。チームや同じパワートレインを使う陣営で力を合わせて、ウィークエンドの良い流れを掴まないといけないラウンドが続きます。
そんな中、ベルリンはお馴染みとなった空港跡地を利用したコース。ストリートサーキットという名前が付いてはいるものの、公道でのレースというよりは広大な駐機場だったスペースを利用します。そのため、レイアウトはフレキシブルに変更が可能。順走、逆走などレイアウトを分けて開催されてもきました。
今年はベルリンでの開催が10回目ということで、それを記念してレイアウトが大きく変更されました。低速コーナーが減り、より高速コーナーが増える形でハイスピードコースへと変化しました。路面のデータはある程度はあるものの、レイアウトが変わったことによって各チームはエネルギーマネージメントと戦略を今一度考え直さなくてはいけない戦いになるわけです。
さて、そんなベルリンにランキング首位で戻ってくるのがパスカル・ヴェアライン(ポルシェ)です。元F1ドライバーというキャリアを持つドイツ人ドライバーにとっては大切な母国開催です。そしてポルシェにとっても地元でのレースということで勝負をかけていきたい戦いですね。しかしながら、ポルシェのワークスチームはまだベルリンでの勝利がありません。
パスカル・ヴェアライン(ポルシェ)は初開催のミサノ(イタリア)で今季2勝目を飾ったものの、第8戦・モナコではポールポジションを勝ち取りながら、決勝では5位フィニッシュで終わってしまいました。レースで好調なジャガー勢が1−2フィニッシュを飾り、ニック・キャシディ(ジャガー)が2位表彰台に登壇。これでヴェアラインはシリーズリーダーながらも、2位のキャシディに7点差に詰め寄られてしまいました。
ヴェアラインもまだベルリンでは勝ったことがなく、ベストフィニッシュは6位と決して相性が良いわけではありません。しかし、今年は先述のようにレイアウトが変わったため、その流れを変えるチャンスだといえるでしょう。
一方のニック・キャシディ(ジャガー)は今季不運なリタイアが2度あり、ポイントの取りこぼしが勿体なかったところですが、昨年はベルリンの2レース目で優勝をマーク。その後の後半戦に弾みをつけることになった縁起の良い場所です。モナコでのチームとしても完璧な戦いぶりを見せたジャガーのパフォーマンスは新レイアウトでも活かされるか楽しみですね。
昨年、ベルリンの1レース目で優勝を飾ったのはミッチ・エバンス(ジャガー)。前戦・モナコで今季初優勝をマークし、ランキングも5位に。まだ逆転可能なポジションまで戻ってきました。ということで、ジャガーの2人は昨年のウイナーですから、ジャガーはベルリンのレースを余計に気持ち良く迎えられます。
ランキング3位につけるディフェンディングチャンピオンのジェイク・デニス(アンドレッティ・ポルシェ)は昨年のベルリンで2位表彰台を獲得。モナコではポイントを獲得できず、ランキング3位となりましたが、首位のヴェアラインから13点差ということで後半戦、まずはここベルリンで今季2勝目を飾りたいところでしょう。
オリバー・ローランド/ニッサン
日本期待の「ニッサン」勢はオリバー・ローランド(ニッサン)がモナコでは予選15位から追い上げて6位フィニッシュ。これでランキングでは4位につけています。先日のミサノで繰り上げ優勝を飾った「ニッサン」ですが、それまでの最後の勝利となっていたのが2020年のベルリンでのオリバー・ローランド(ニッサン)の勝利でした。この年はコロナ禍真っ只中で、ベルリンでレイアウトを変えながらまとめてレース数をこなすという形の年で、特殊なシーズンだったわけですが、ローランドにとっても初優勝の地でしたから、4年ぶりのベルリンでの優勝に期待がかかります。
そして前戦モナコで3位、4位フィニッシュとなった「DSペンスキー」勢も後半の戦いぶりに期待が持てます。モナコではシーズン8のチャンピオンドライバーであるストフェル・バンドーン(DSペンスキー)が久しぶりの3位表彰台を獲得。ポルシェ、ジャガー勢に食らいついていくことができれば、後半戦はさらに混戦模様となることでしょう。
とにかく今年のベルリンはレイアウトが変わったことによって戦況が読みづらい状況。そんな中で後半戦の立ち上がりに誰しもがしっかりポイントを重ねたいと考えています。一番避けたいのはここでのリタイア無得点。初開催の上海に余裕をもって挑めるかどうかはベルリンの結果次第。母国開催となるポルシェ勢が勢い付くのか、それとも意外なチームがシーズンを引っ掻き回す存在として現れるのか、シリーズチャンピオンを占う上でも非常に重要な1戦になるはずです。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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