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モーター スポーツ コラム 2024年4月19日

日本チーム&日本人ライダーが数多く参戦する2輪・ルマン24時間レース | FIM 世界耐久選手権(EWC) 2024 第1戦 ル・マン24時間耐久ロードレース プレビュー

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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FIM 世界耐久選手権(EWC) 2024

FIM 世界耐久選手権(EWC) 2024

夏の「鈴鹿8時間耐久ロードレース」(鈴鹿8耐)をシリーズ戦の1戦に含むFIM EWC(世界耐久選手権)が2024年もいよいよ開幕します。「J SPORTS」では今季も4戦で開催される2輪の耐久レースシリーズを放送。開幕戦の「ル・マン24時間レース」はスタートとゴールを生中継でオンエアします。今回はそのプレビューをお届けしましょう。

「ル・マン24時間レース」というと4輪のレースが有名ですが、2輪も1978年から開催されている伝統のイベントです。さすがに4輪のように公道は使わず、MotoGPフランスGPが開催される常設サーキット区間=ブガッティサーキットを使って開催されます。4月の開催がここ最近は伝統になっており、ヨーロッパでも北部に位置するル・マンは夜の時間には気温が0度に近づくことも。冷えた路面にも対応しなければならない難しい耐久レースとなります。

FIM EWCには今季も「Yoshimura SERT Motul」(スズキ)、「F.C.C. TSR Honda France」(ホンダ)、そしてチーム国籍はフランスですが「KAWASAKI Webike TRICKSTAR」の3チームが最高峰クラスのFormula EWCに参戦。そして今年はライダーもスタッフも日本人体制で戦う新規チーム「Team Etoile(チーム・エトワール/BMW)」がSuperstockクラスに参戦します。

Formula EWCは日本の全日本ロードレース選手権JSB1000クラスに相当する改造範囲の広い1000ccスポーツバイクで争うクラス。一方でSuperstockクラスは市販車により近い仕様のマシンで争い、タイヤ交換の際もクイックチェンジシステムが使用できないなど制限が多く設けられているプライベーターのためのクラスです。

総合優勝はタイヤ交換のピット作業が短く済み、戦闘力の高いタイヤを装着できるFormula EWCクラスのチームが争うことになります。昨年のチャンピオンは鈴鹿8耐でホンダワークスに迫る速さを見せたヤマハのトップチーム「YART YAMAHA」(ヤマハ)。ヤマハYZF−R1のファクトリーマシンに近いポテンシャルを持ったマシンを駆るのは今年もマービン・フリッツ/ニッコロ・カネパ/カレル・ハニカの3人です。

ヤマハYZF−R1はこれまでも同チームに戦闘力が高いYZF−R1を託してFIM EWCを戦ってきましたが、8時間レースには強かったものの、24時間レースではトラブルを抱えることが多くありました。しかし、昨年は対策が進み、第2戦「スパフランコルシャン24時間レース」で優勝。久しぶりに世界耐久チャンピオンの座に輝きました。今年はスパが8時間レースに短縮されるため、元々8時間レースに強い「YART YAMAHA」(ヤマハ)が連覇する可能性は非常に高いでしょう。

その対抗馬となるのが日本の「F.C.C. TSR Honda France」(ホンダ)。すでに3度の世界耐久チャンピオンに輝いている同チームは昨年もル・マンで優勝。こちらも3回目の優勝でした。ライダーラインナップもジョシュ・フック/マイク・ディメッリオ/アラン・テシェのトリオで変わらず。TSRは今季で9年目の参戦となり、耐久レースでの独自のノウハウを蓄積していますから、今季もチャンピオンの最有力と言えるでしょう。

この強豪2チームはラインナップが変わらなかったのですが、スズキGSX−R1000Rを走らせる「Yoshimura SERT Motul」(スズキ)はシルヴァン・ギュントーリがBMWに移籍したため、新たにイギリス人ライダーのダン・リンフットが加入。リンフットは昨年の鈴鹿8耐に新規参戦した「オートレース宇部」でスズキGSX−R1000Rをライディングし、見事な走りを披露。レース終盤の猛烈な追い上げは非常にインパクトがあるものでした。そんなスズキでの速さを評価され、名門ヨシムラに加入が決定。FIM EWCでの経験も豊富です。

また、第4ライダーとしてJSB1000にもスポット参戦し、速さを披露した日本人ライダー渥美心が補欠として控えているのも強み。場合によってはラインナップの変更もあり得るかもしれません。

日本人の活躍というと、昨年FIM EWCに参戦していた石塚健がヤマハのFormula EWCチーム「MACO RACING TEAM」からの参戦が決定。ランキング上位を獲得したこともあるスロバキアのチームでポテンシャルは高いチームだ。また、昨年の鈴鹿8耐にも出場していた綿貫舞空がSuperstockクラスの「3 ART BEST OF BIKE」からヤマハで参戦。

こうして日本人選手の参戦が近年は増加傾向にあるFIM EWCですが、今年は日本人ライダートリオで挑むチームが新たに参戦するのも注目です。SuperstockクラスにBMW M1000RRでエントリーする「Team Etoile(チーム・エトワール)」は亀井雄大、榎戸育寛、奥田教介の3人を正ライダーとして起用。第4ライダーとして海外でのレース経験が豊富な川崎祥吾をスタンバイさせています。

このチームはIT企業のエンジニアとして活躍した市川貴志が立ち上げた新規チームで、ライダーだけでなくスタッフのほとんどが元全日本ライダーなどの若い日本人で構成されています。チームオーナーでもある市川監督が次の時代のバイクレースを担う若き人材に海外のレースで経験を積んで欲しいという思いがあり、若き日本チームが初参戦することになりました。

クラスはSuperstockということでタイヤ交換に時間がかかるため、総合優勝は難しい条件ですが、日本人ライダーたちは好タイムを連発。テスト走行では上位につけているので、クラス優勝を狙える強豪になりそうです。

過酷な24時間レースに挑む日本勢の活躍にぜひ期待しましょう。

文:辻野ヒロシ

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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