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大クラッシュから復活を遂げた山本尚貴。
弥生 三月。
国内トップフォーミュラカテゴリーの全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)が3月9日に開幕。
日本人にとっては、3月は東日本大震災の3月11日が13年を経てまだ多くの問題を抱えている。そして、今年の1月に起きた能登地震災害は、復興の真っ只中。地震災害の度に【絆】が災害地、被災した方への復興と援助の強いテーマとなってきた。
SFの開幕戦でも【絆】がドライバーの活躍を象徴する二つのエピソードが展開された。
まずは、山本尚貴選手。
昨シーズンのSUPERE GTの第6戦菅生大会でアクシデントに巻き込まれて大クラッシュ。頸椎と脊椎が損傷。手術と数ヶ月に及ぶ入院治療を経てカムバックを遂げた。しかし、治療中にはかつてのような状態でレースに臨めるのかは分からず、不安を抱えていたに違いない。身体だけではなく、闘う気持ちを奮い立たせることもできるのか不安だったろう。SGTとSFのテストを経て、迎えた本番、SF開幕戦。場所は、得意とする鈴鹿。予選5番手からスタートして決勝中ではファステストタイムを叩き出して3位フィニッシュを果たした。マシンを降りて「闘える心と体に戻してくれた医師、先輩、後輩、関係者の皆さんに本当に感謝です」と伝えてきてくれた。その想いがこみえげて来て流した涙。彼のコメントには表されていなかったけれど、彼を支えた家族の存在は一番大きかったはずだ。2年ぶりの表彰台おめでとう。
そして、Juju(野田樹潤)選手。
18歳。つい先日、自動車の運転免許を取得し、4月からは女子大生。
SFでは、最年少出場記録を更新。幼少期から父の指導を受けてモータースポーツの世界へ。闘いの場を海外へ設けて、実績を積み、今シーズンからSFへ。F1を頂点とするフォーミュラのヒエラルキーの直下F2やF3への挑戦を選ばず、日本のSFへの参入は、F1以外では一番厳しいコンペティションフィールドへ。若さは誰にも負けない、しかし、経験値は最も少ない。彼女には今年のレジェンドレーシングドライバークラブの新年会でお会いした。平服では、可愛い高校生(当時)の嬢さんが、壇上で受け答えする姿には、確かなファイティングスピリットが宿されていることがわかった。そして、SF開幕戦の実戦でそれが証明された。目標にしていた17位完走。それもトップと同周回。レースペースも遜色なく、ファステストタイムは、波いる猛者の中でも山本から1秒608落ち。
Juju(野田樹潤)
か細いほどの体つきの内に素晴らしいレーサーとしての潜在能力が備わっていることが分かった。今後どのような伸び代が示してくれるのか楽しみだ。海外のレース行脚では、家族が支え、指導して結果を残して来た。
モータースポーツには、家族の【絆】が重要なことを再認識したSFの開幕戦だった。
文:高橋 二朗
高橋 二朗
日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。
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