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山内英輝選手(No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT)「自分たちのレースは最大限ベストは尽くしたし、やり切った気持ちが大きい」 | SUPERGT 2023 第5戦 鈴鹿【SUPER GT あの瞬間】
モータースポーツコラム by 島村 元子山内英輝選手(No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT)
レースウィークの出来事をドライバーに振り返ってもらう「SUPER GT あの瞬間」。2023年シーズンも引き続き、どんなドラマがあったのか、その心境などをコラムにしてお届けします!
今回登場するのは、山内英輝選手。第5戦鈴鹿の予選Q2で、見事トップタイムをマークし、自身14回目となるポールポジションを獲得。結果、単独でGT300クラスにおける通算最多ポールポジション記録保持者となった。シーズン初優勝を見据えた戦いを進めていたが、レース後半、2回目のFCY導入を境にして状況が暗転。FCYを味方につけたライバルが先行し、3位で戦いを終えた。最多ポール達成のうれしさと、てからこぼれ落ちた勝利への悔しさが入り交じる心の中を語ってもらった。
── 予選でポールポジションを獲得した一方、決勝は悔しい3位でした。
山内英輝(以下、山内):まあ、レースなので仕方ないっていう気持ちの方が強いですかね。どうしようもない部分ではあるので。自分たちのレースは最大限ベストは尽くせましたし、やり切ったっていう気持ちのが大きく、次に向けてしっかりまた頑張ろうっていう気持ちの方が強い感じです。
── ベストを尽くす中、今回は待望のシーズン初表彰台でした。この結果から、今後は上昇気流に乗っていけるという手応えはありましたか?
山内:簡単って言うと変ですけど、ここで勝ってたらラク(簡単)だったなとは思うんですけど……(苦笑)。でも、今までがちょっとこう……イマイチ流れに乗れてないところと歯車が合ってないことがすごくあったので。それが、この鈴鹿でみんなでやり切れたレースができたので、ここからみんなで頑張ろうっていう気持ちの方が強いですね。
── 予選では、自身の手でポールポジションを獲得。結果、GT300クラスの記録を更新して単独トップに立ちました。ピットへと戻る中、うれし涙を見せていましたが、その時の様子、心の中を教えていただけますか?
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山内英輝選手(No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT)「やり切った気持ちが大きい」 | #SUPERGT 2023 第5戦 鈴鹿【SUPER GT あの瞬間】
山内:クルマから(降りて)戻る時……ピットを歩いてる時に、上(ピットスタンド席)から声をかけてくれる方とか、あと、グランドスタンドの人たちに手を振ったら、すごい多くの方から拍手をいただいて……。なんかもう、あの環境がすごく幸せに感じて。気が付いたら、ちょっとこうウルウルしている自分がいて……で、前を見たら、チームのみんなが待ってくれてたので、なんかもうそれがすべて重なって感情に出てしまったっていう感じです。(涙が出たのは)なんか、自然とでしたね。やっぱり明日(決勝)があるので、そういう気持ちは良くないなって思ったんですけど……出てましたね。本当、(SUPER GTをオーガナイズする)GTAさんにも感謝したいと思います。たくさんのお客さんを入れていただいて、ああいう環境だったから、いっぱい「おめでとう」っていう声もいただけたので、うれしかったですね。
── レースはひとりで戦うのではなく、いろんな条件の下で臨むわけですが、一方で、ポールポジションを獲る喜び、重みというものはどうものですか? チームの皆さんにもプレッシャーがあると思います。
山内:チームのみんながいいクルマも作ってくれないと(ポールポジション獲得は)絶対無理だと思いますし、すべての環境が整わないとやっぱり難しいと思います。その点に関しては、すごく恵まれてるなと思いながら、もう必死に走ってるだけなので……。僕は本当にみんながいるから(ポールポジションが)獲れてるっていう感謝の気持ちがすごく強いんですが、準備においても常にみんなと入念に話をしています。SUPER GTではGT500クラスも走ってますし、(レースウィーク中は)他のカテゴリーも同時開催しているので、路面状況も色々考えながら、どういう風にしていけばいいかとか、結構真剣にいろんなことを話しながら対策は打ってるので、それがうまくはまってるのかなとは思います。多分、チームのみんなも、ひとりひとり、プレッシャーがあると思いますね。
予選後に喜びの涙を浮かべる山内選手
── さて、そのQ2アタックですが、改めて振り返ると、パーフェクトな走りだったのですか? また、ポールポジション獲得はどういう形で知ることになりましたか?
山内:僕自身、“完璧だった”っていう言葉はあんまり好きじゃないので……もうそれで自分の限界が終わるみたいな感じにとらえられちゃうので。“これがパーフェクトだった”っていう考え方はないんです。ただ、今の持ってるポテンシャルの中で全力を出し切りましたし、無心で走って、クルマをしっかり感じながら走らせて……。必死にクルマを走らせたっていう感じですかね。(ポールポジション獲得は)全車のアタックが終わるまで待ってたという感じです。(ドライブ中に)もちろん無線でも聞きました。ただ、まだアタックラップをしてる人たちもいたので、その結果……みんなが終わるまで、ずっと待っていたという感じです。
── 迎えた決勝も厳しい暑さになりましたが、どのようなレースをしようということになりましたか? また、今シーズンの450kmレースでは、戦略として早々にピットインするチームも見受けられる中、61号車としてはどのように自分たちの強みを生かして応戦しているのですか?
山内:基本は、もう“逃げて、逃げて”っていう考え方でした。序盤で、基本的に僕がうしろを引き離して、ラクな展開で井口(卓人)選手に渡せるようにしていかなきゃいけないと考えてました。(異なる戦略を採るチームに対しては)基本、ほぼノータッチなんですよね。基本的にチームのみんながプロなのでそこに任せて、基本的に走ることに集中するのが僕のスタイルです。戦略に関しては、あんまり何も言わないですね。
── “お任せ”というか、「行って来い」と送り出されたら、ベストな走りをするだけだと?
山内:そうです。現状ではこういう状況だから、それに対してどうしたらいいのかっていうのは……一番コース状況を把握してるのはチームだと思うので。走ってる僕がどうのこうの言っても、無責任な言葉になるので、基本的に、僕はチームを信じてすべて任せているという感じですね。
── チームに“任せている”中、1回目は16周終わりに、2回目は41周終わりでピットインしました。このタイミングは、どのように決まったのですか?
山内:最初に、井口選手から「何周ぐらいまで引っ張ってほしい」って言われてたんですけど……。正直、その点に関しては、ちょっと距離が足りずに早めのピットインをしてしまったので、これに関しては、ちょっと申し訳なかったなっていう気持ちがすごくあるんです。ただ、ハード側として、路面温度が下がってきたことによって、タイヤの摩耗が結構急激に減って、あれ以上のラップは……。(タイムが)急激にちょっと落ちたんで、それ以上走っていても時間の無駄だと思ったので、“もうこれ以上は無理だ”と伝えました。そのタイミングで「じゃあピット入ってくれ」って言われた感じですね。
── 予定より若干前倒しではあったということですが、そんな中、45周目にまさかの“FCY(フルコースイエロー)導入”になりました。山内選手がクルマから降りてしばらくしてからの出来事だったので、ピットでその様子を見ていましたか?
山内:はい、見てました。その間(FCY導入直前)にピットに入っていた2台(88号車、18号車)を見ていたので、これはどれぐらい前に出るのか、それともうしろに下がってくれるのかは、ちょっとわからなかったんですけど……。実際(FCYが解除され、レースが)始まってみたら、(61号車より)全然前にいたので、 “またこういう感じか……”と正直思いました。僕たちには、いい方向には進まなかったなと思いました。何度も言うように、それ(FCY導入直前にピットインするチャンス)を掴めるのは、チームの判断力とそのタイミングでそこを走ってる人だけ。実際、FCYを(有利に)使えるのは、本当、“奇跡の10秒ぐらい”だと思うんですよね。そのタイミングで(ピットに)入れる場所にいた人たちと、そのジャッジをちゃんと素早くして(ピットに)入れたチームの判断能力は、やっぱりすごいことだと思うし、簡単じゃないと思います。僕らもいつかはそういうタイミング……“奇跡のタイミング”(で作業)ができたらいいなとは思いますが、それを掴むのが大事。僕らもそのタイミングで(ピットに)入れる場所にいれば良かったと思うんですが、実際は先に(ピットに)入っちゃったので。まあ、奇跡を掴むのも……実力のひとつですよね。
── ただ、その後は井口選手が猛然と追い上げ、3回目のFCY明けに88号車を抜きました。最後まで諦めず、怒涛の追い上げという言葉がぴったり当てはまる走りでしたが、山内選手はどんな思いで見守っていたのですか?
山内:“トップまで行ってくれ!” と思いながら見てました。途中、(61号車は2分)2秒ラップで、向こうが(2分)3秒後半とか4秒前半で……。(61号車の方が)1秒半ぐらい速いペースが数周続いたので、“これは(トップに)届くんじゃないか?”と思ったんですけど。後半、僕たちもちょっとタイヤがきつくなって。同じペースよりかちょっと僕たちが速いぐらいだったんですが、“なんとか頑張って(トップに)届かせてくれ!”と思いながら見てましたね。
── 結果、悔しいながらも3位で表彰台に上がりました。次のSUGO戦ですが、昨年は山内選手が89kgのサクセスウェイトの中でポールポジションを獲得。今年は69kgのサクセスウエイトなので、再びポール獲得の期待が膨らみます。
山内:多分、ファンの皆さんは、喜んでくれると思うんですけど……。でも、皆さんもそろそろ飽き飽きしてるんじゃないかなって(笑)。チームの人からどう思われてるかは、なんとも言えませんが、僕たちは、トップから(スタートを切って)後続を引き離していかないと。ピットの時間が他車より少し長く、前にいないと厳しい部分があるので、スタートというか、予選から前に行けるように頑張っていきたいなと思ってます。
── 「ピットの時間が少し長いので」とのこと。レースファン初心者の皆さんは、「どうして?」と思っておられるかもしれません。理由を教えてもらえますか?
山内:もちろん。基本的に、(他車と比較して)燃費が良くないという部分もありますが……。あとは、給油リス(燃料補給装置給油リストリクター)も多少影響があるのかなと思います。数字で言うとちょっとリアルすぎるんですけど……だいぶ時間がかかってしまうっていうのが、僕たちの一番の不安要素というところですね。
No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT
── 天候的には、SUGO戦もまだ暑いほうが良いですか?
山内:そうですね。今回の鈴鹿でも暑い中でしっかりと戦うことができたので、次も大丈夫かなと思います。
── では、最後にこの企画恒例の「24時間以内のちょっとした幸せ」を教えてください!
山内:僕は、“家族”ですね。もう、子供の笑顔を見ているだけで十分幸せなので。子供と(一緒に)いられる時間……家族といられる時間がもう本当に幸せです。昨日(※1)は、アトラクションっていうんですかね!? 子供広場っていう場所に行って、すごい開放感あふれる中ですべり台を一緒にすべったり、ボールの部屋に入って、ふたりでキャッキャ言いながら遊んだりして……。その時間がほんと幸せでした(笑)。もう、子供を見るたびに幸せになります。本当、僕にとっては生きがいですね。
※1:8月31日に収録
文:島村元子
島村 元子
日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。
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