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連勝を狙うNo.3 Niterra MOTUL Z。
2023SUPER GT“真夏の2連戦”のうちの1つ目であるRd.4富士。決勝レースは、途中に火災アクシデントが2度発生し、赤旗中断もあるなど大波乱となった。さらに台風6号の影響で、レース中に何度も天候が変わる目まぐるしい展開となったなか、GT500クラスではNo.3 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)が勝利を飾った。
ウェットコンディションとなった終盤でミシュランタイヤの新ウェットタイヤが今回も威力を発揮し、2番手以下に大差をつけての勝利となった。すでに3号車はサクセスウェイトが50kgを超えており、目まぐるしく変化したコンディションが味方した結果となったのだが、彼らにとってRd.4富士での1勝は“大きな意味”を持っていた。
遡ること約3ヶ月前のRd.3鈴鹿。3号車がトップの状態でアクシデントが発生し、レースは途中で終了することとなった。その当時の順位で暫定結果が発行され、暫定表彰式と記者会見も3号車が優勝という形で進行された。
ただ、3号車はレースが途中終了になったことで、450kmレースにおいて義務となっている2回の給油を伴うピットストップを唯一消化できていなかった。これに伴う最終順位をどうするかで、レース後のパドックはバタバタとした。特に今回はフルポイントが与えられる全体の75%を消化していたこともあり、競技結果に対して複数チームが抗議を提出。結果的にNo.19 WedsSport ADVAN Z(国本雄資/阪口晴南)が優勝という形で、レース終了から1週間後に正式結果が出た。
19号車とヨコハマタイヤにとっては7年ぶりの優勝ということで大きな話題となっていたのだが、その傍らで悔し涙をのんだのが3号車陣営だった。
「チャンピオンを獲得するには、やはりラッキーをモノにしないといけません。その点で前回の鈴鹿は僕たちにとってはある意味でラッキーだったと思ったのですが、それは許されなかった。だから今度はもう1回、実力でがんばらないといけないなと思っていました」
そう語る千代。Rd.3鈴鹿での悔しさがRd.4富士での原動力になったという。
富士での第4戦で優勝。前戦での悔しさを晴らしたNo.3 Niterra MOTUL Z。
同じく高星も「鈴鹿ではいろいろなことがあって、自分たちも思うところはありますけど……そこはすべてを飲み込んで、耐えてきました」と語る。
富士のレースでは天候を味方につけての勝利だったように思われがちだが、この時の3号車はサクセスウェイトが50kgを超え、燃料リストリクター制限が入って苦戦を強いられる可能性が少なくなかった。
その中でも上位につけて終始力強い走りを見せていたところを見ると、この富士ラウンドにかけていた想いは並々ならぬものがあったのだろう。
この結果で、3号車の千代/高星は合計49ポイントとなり、今回のRd.5鈴鹿では98kgのサクセスウェイトを積むこととなる。ここまで増えると2戦連続で上位に食い込むのは難しそうだが、高星はチャンピオンがかかる後半戦に向けて、こう語る。
「以前、長谷見昌弘さんから『常にシリーズチャンピオンのことを考えて、1ポイントも取りこぼさないようにしなさい』と教わってきました。NDDPで育ってきたドライバーとして、忠実に守っていきたいなと思います。4レース目が終わったばかりで早いかもしれないですけど、今からチャンピオンのことを考えてポイントを取りこぼさないということをやっていきたいです」
チームメイトの千代も、昨年僅差でチャンピオンを取り逃がし悔し涙を流した。それだけにGT500でチャンピオンを獲ることの難しさを知る1人でもある。
「スーパーGTはチャンピオンを獲るのはものすごく難しい選手権だと思います。これで満足せず、気を抜かずに最後で戦う気持ちをチームのみんなも持っているので、それに応えられるようにドライバーも頑張っていきたいです」と、改めて気合いを入れ直していた。
Rd.4を終えてGT50クラスで頭ひとつ抜け出た感のある3号車。これにどのチームが後半戦で追いついていくのかが、注目どころとなる。
その中で注目なのが、Rd.4富士の予選で“もうひとつのリベンジ”を果たしたNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN Z(佐々木大樹/平手晃平)だ。昨年あたりから急激な進化をみせているヨコハマタイヤを武器に、Rd.3鈴鹿ではポールポジションを獲得するもセッション後の再車検で違反箇所が見つかり、タイム抹消。“幻のポールポジション”となってしまった。
Rd.4富士では「もう1度ポールを獲りに行く」と近藤真彦監督を中心にチームが一致団結し、見事ポールポジションを獲得した。
Rd.4富士でPPを獲得したNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN Z。
その一方で、決勝では目まぐるしく変わった天候に翻弄される形となり悔しい結果に終わってしまった。24号車も2016年以降、勝利から遠ざかっているだけに、優勝を渇望していることは間違いない。Rd.3の予選のリベンジ、そしてRd.4決勝でのリベンジも、この鈴鹿で果たせるかが見どころとなりそうだ。
今回も暑さとの戦いとなりそうな鈴鹿の450kmレース。今シーズンは比較的荒れ模様になる傾向があり、今回はクリーンなレースを期待したいところ。特に国内レースでは大きなアクシデントが続いているだけに、今週末は何事もなくレースが終わってほしいところだ。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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