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立川祐路選手(左)が3度目のSUPER GT王者を獲得した2013年。右は平手晃平選手
「ボク、何か悪いことしましたか・・・」
いつもは、飄々としてポーカーフェースのドライバーは、レース直後のTVインタビューでいきなりこう切り出して涙した。
思わず「貴方は何も悪くないですよ」とこたえるしかなかった。
最終ラップ、あと半周というところで勝利を目前にして勝てなかった悔しさを前面に出して涙を流したことを驚いたのを思い出しました。もう、20年も前のことです。
先週金曜日、7月28日に立川祐路選手が今シーズン限りでSUPER GTドライバーの現役から引退すると発表した。全日本GT選手権からSUPER GTを通してその存在感を常に示したドライバーであり、そのキャリアを見れば、【鉄人】という表現が相応しい。しかし、スタイルは、スマート、表情に内なる感情をあまり出さないクールで静かな印象。普段着の立川選手を見て、彼を知らない人には、レーシングドライバーであることは分からないだろう。
まだ日本国内にレーシングスクールが存在しなかった時にフランスへ渡った。日本人初の海外レーシングスクール経験者となった。今年の5月にGTVに出演していただいた。フランス修行のことを向けてみると、少し微笑みながら「あれは、レーシングカートで成績が少し良かったので周りが盛り上がってしまって、結果的に行かされたというか、あまり行きたくなかった」とさらりとコメント。彼らしいクールな受け流しだった。
現在、立川選手は40代後半の大ベテラン。トップカテゴリーのフロントラインで若手として注目された頃には、コックピットに収まると普段の彼とは違うレーサーとしてのアグレッシブなドライビングを披露。そして、今や殆どのドライバーが行っている左足ブレーキングをいち早く行なっていた。ブリヂストンタイヤのレーシングタイヤの開発エンジニアが、タイヤテストが終わりサーキットから最寄り駅まで立川選手の愛車で送ってもらった際、絶妙な左足ブレーキ操作を体感できて感動したと話してくれた。
国内トップツーリングカー選手権で3度のチャンピオンを獲得。優勝回数第2位、ポールポジション獲得数歴代最多。トヨタのGT、SGT車両の開発ドライバーとして携わり、先日岡山国際サーキットで行われた2024年GT500車両テストにおいてもセッション最初のステアリングを握っていたのは、立川選手だった。今週末のSGT第4戦の会場で金曜日に記者会見が行われる。自身の肉声としてどのような引退理由が聞けるか注目だ。
文:高橋 二朗
高橋 二朗
日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。
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