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バイクでもスパを24時間走る!渡辺一樹、渥美心ら日本人ライダーに期待! | FIM 世界耐久選手権(EWC) 2023 第2戦 スパ・フランコルシャン24時間耐久ロードレース プレビュー
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシFIM 世界耐久選手権(EWC) 2023 第2戦 スパ・フランコルシャン24時間耐久ロードレース
鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)を含むオートバイ耐久レースの最高峰「FIM世界耐久選手権」(FIM EWC)の第2戦「スパ24時間レース」がベルギーのスパ・フランコルシャンサーキットで開催されます(2023年6月17日〜18日/決勝)。今回はそのプレビューをお届けしましょう。
あのスパ・フランコルシャンで2輪の24時間レース?と驚く方もいらっしゃるかもしれません。そうなんです、本当にバイクでF1ベルギーGPの舞台としてもお馴染みのスパ・フランコルシャンの急勾配オー・ルージュを駆け上がって、24時間レースを展開するのです。アンビリーバブルな世界ですね。FIM EWCとしては今年で2回目の開催となりますが、2輪ではMotoGPやスーパーバイク世界選手権といったメジャーレースを現在では開催しないコースのため、非常にレアでエクストリームなレースイベントと言えるでしょう。
さて、今シーズンも「ル・マン24時間レース」「スパ24時間レース」「鈴鹿8耐」「ボルドール24時間レース(ポールリカール)」の全4戦で開催されているFIM EWC。日本のファンにとっては「鈴鹿8耐」(8月6日/決勝)を前に是非見ておきたいレースになりますし、チームにとっては3回ある24時間レースの好成績はチャンピオンシップを考えれば重要な1戦です。最大獲得ポイントは年間の中の約26.5%ということで、ここで可能な限り多くのポイントを獲得することで年間チャンピオンに近づくことができます。
近年のFIM EWCには数多くの日本チーム、日本人ライダーが参戦。昨年、2度目のワールドチャンピオンを獲得した「F.C.C. TSR Honda France」(ホンダ)は開幕戦の「ル・マン24時間レース」で見事優勝を果たし、最高峰EWCクラスのシリーズランキング首位につけています。
そのTSRの最大のライバルチーム「Yoshimura SERT MOTUL」(スズキ)は開幕戦の序盤で転倒。ル・マン3連覇の夢は潰えましたが、その後もマシンを修復し、粘り強く走りって7位完走。シリーズランキング首位のTSRからは40点もの差をつけられ、ランキング7位となっています。
そして今年は新たな日本チームが参戦しました。カワサキZX-10RRを走らせる「TEAM KAWASAKI WEBIKE TRICKSTAR」(カワサキ)です。鈴鹿8耐をエヴァンゲリオンと共に闘ってきたことでおなじみのTRICKSTARの鶴田竜二監督がフランスの名門チーム「SRC KAWASAKI」のリソースを引き継ぐ形で今季から参戦(チーム国籍はフランス)。日本人ライダーの渡辺一樹をエースに起用して闘っています。
日本人スタッフと日本人ライダーが走らせるカワサキの耐久チームが登場ということで期待が高まったのですが、「TEAM KAWASAKI WEBIKE TRICKSTAR」は開幕直前に様々なハプニングが発生。かなりドタバタのル・マン24時間レースになってしまいました。
渡辺一樹は「レースウィークに入ってもチームの中で不安定な状況が続いていて、混乱が解決できないまま進んでいきました。そんな中でもル・マンで完走できて、トップ10圏内でフィニッシュできたことは個人的には奇跡的な結果(EWCクラス8位完走)だったと思います。ただ、その順位を求めてこのチームに所属しているわけではないので、次のスパに向けてしっかり解決して、コンペティティブなチームであることを証明したいです」と厳しい状況だった開幕戦の心情を吐露していました。
昨年は「Yoshimura SERT MOTUL」(スズキ)の開発ライダー、リザーブライダーとしてヨーロッパのEWCレースに帯同した渡辺一樹ですが、24時間レースの決勝を走るのは初めて。「実際にレースを走るのは初めてだったんですけど、過酷なことは充分理解した上で出場していました。(昨年のチームの)ライダーの表情が変わっていくのを見て、疲れ具合などは知っていましたから。それでも自分が走るときに1スティントをどれぐらいのエネルギーを走るべきなのかをうまくコントロールしながら走っていましたが、ちょっとコンサバ(保守的)に行き過ぎたかな。もうちょっと頑張れたかなと思います」と初体験の24時間レースを渡辺一樹は語ります。
昨年のスパ24時間は怪我の影響でリザーブライダーとしても帯同できず、スパ・フランコルシャンは未経験のコース。スーパースポーツ世界選手権、MotoGPなど海外レース経験がある渡辺一樹ですが、初めて走るコースをプロライダーたちはどう走るのかを聞くと「正直、できることは限られています。それこそ動画見るとか、グランツーリスモやるとか」との答え。ゲームのグランツーリスモでコースを覚えるというのは2輪ライダーも同じなのですね。
「所詮、画面上のことなので、Gフォースを感じることはできないので、そういう意味では事前の練習というのができないんですけど、新しいサーキットを走るのは楽しいので、初めてのコースという感覚は持たずに、ちゃんと攻めていきたいですね。僕もベテランなので、その辺は自分でコントロールしながらやっていきたいです」とスパを初めて走るワクワク感を語っていました。
「TEAM KAWASAKI WEBIKE TRICKSTAR」はスパ24時間でレギュラーのランディ・ド・プニエ、渡辺一樹に加え、TRICKSTARで鈴鹿8耐を走った経験があるグレゴリー・ルブランを起用。よりパワーアップした体制で表彰台を狙っていきます。
また、近年は日本人ライダーがFIM EWCに増加中。SST(スーパーストック)クラスの「OG MOTORSPORT WORLD ENDURANCE TEAM」(ヤマハ)からは渥美心が昨年に引き続き参戦。開幕戦は残念ながらリタイアになってしまいましたが、近年の渥美は非常に高いポテンシャルを披露しており、その評価が高まっているライダーです。
SSTの海外チームは鈴鹿8耐に参戦しないため、渥美心は「S-PULSE DREAM RACING・ITEC」(スズキ)から鈴鹿8耐への出場が決定。ル・マンの1週間後に代役参戦した鈴鹿の全日本JSB1000では上位を走るなど、どんなバイクに乗ってもポテンシャルを引き出せるライダーだけに、レギュラー参戦するFIM EWCのSSTクラスでも結果を期待したいところです。
また、昨年は全日本ST1000クラスに参戦した石塚健が「JMA RACING ACTIONBIKE」(スズキ)から参戦。こちらも残念ながら開幕戦がリタイアで終わってしまったため、スパ24時間ではポイントの取りこぼしがないように着実にフィニッシュを目指して欲しいものです。
昨年はレース終盤にスパ・ウェザーと呼ばれる天候急変があり、レースが中断。最後はスプリントレース状態になった中で、BMWワークスの「BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM」(BMW)がFIM EWCで初優勝を達成。日本車の独壇場と言われた耐久レースで海外メーカーのバイクも力を付けてきていますので、難攻不落のスパをどのチームが制するのか注目です。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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