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モーター スポーツ コラム 2023年3月22日

SUPER GT育ちのキャシディやフェネストラズに注目! | FIA フォーミュラE世界選手権 2023 第6戦 サンパウロ プレビュー

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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サッシャ・フェネストラズ(日産)

サッシャ・フェネストラズ(日産)

EV(電気自動車)の世界選手権「フォーミュラE」のシーズン9(2023年)は南アフリカのケープタウンから大西洋を渡り、第6戦が南米ブラジルのサンパウロで初開催されます。J SPORTSで放送中のフォーミュラEは今季、新開催の地が多く、スリリングな戦いが展開されています。今回は第6戦サンパウロ(3月25日予選・決勝)のプレビューをお届けしましょう。

約1ヶ月ぶりの開催となるフォーミュラEはインド、南アフリカに続き、またも初開催の地、ブラジル・サンパウロでのレースです。中南米での開催が以前から多かったフォーミュラEですが、意外なことにブラジルでの開催は初めてのことで、これはブラジル人ドライバーにとっては積年の夢が叶うという感じですね。

地元出身のホームタウンヒーローはフォーミュラEの最初のシーズン(2014−15)から参戦を続けているルーカス・ディグラッシ(マヒンドラ)。サンパウロ出身でF1も1シーズン経験したトップドライバーですが、近年はフォーミュラEのイメージがかなり強くなりました。シーズン3(2016−17)ではアウディでチャンピオンに輝き、ここまでキャリア13勝。すでに38歳の大ベテランになっていますが、今年も開幕戦で3位を獲得するなど、その腕は衰えていません。

もう一人、ブラジル出身はセルジオ・セッテ・カマラ(NIO)。中国籍のチームNIO Racingはポイント獲得のチャンスが少なく、テールエンダーの印象が強いチームでプレビューコラムでもほとんど登場することはありませんが、実はGen3シャシーに変わった今季はダニエル・ティクトゥム(NIO)と合わせて5レース中3レースで入賞しており、下位チーム枠から脱出する兆しを見せています。日本のスーパーフォーミュラで衝撃のポールポジションデビューの印象も強いセッテ・カマラの母国ブラジルでの走りも期待しましょう。

さて、そんなブラジルで開催されるレースを前に今季は5レースが終了。前回の第5戦ケープタウンは最後までテールトゥノーズとなるスリリングな展開になりました。最後にアタックモードを残していたアントニオ・フェリックス・ダコスタ(ポルシェ)がジャン・エリック・ヴェルニュ(DSペンスキー)をファイナルラップで逆転し、今季初優勝。ポルシェワークスは今季早くも3勝目をマークすることになりました。

第5戦王者 アントニオ・フェリックス・ダコスタ(ポルシェ)

第5戦王者 アントニオ・フェリックス・ダコスタ(ポルシェ)

しかしながら、ランキング首位のパスカル・ウェーレイン(ポルシェ)が追突でレース序盤にリタイアし、ノーポイントに。ここまでに築きあげたマージンのおかげでランキング首位はキープしていますが、ランキング2位のジェイク・デニス(アンドレッティ・ポルシェ)も2戦連続のノーポイントに終わっており、ここに来て他のドライバーたちのポイントが接近してきています。

やはり初開催の地は混戦になりますね。そんな混戦の中、ケープタウンで序盤からトップグループを走ったのがニック・キャシディ(エンビジョン・ジャガー)とサッシャ・フェネストラズ(日産)でした。日本人ドライバー不在のシーズンが長く続いているだけに、日本のファンの応援対象となるのが、やはりSUPER GT、スーパーフォーミュラで走っていた彼らの存在でしょう。

ニック・キャシディ(エンビジョン・ジャガー)はニュージランド出身。2015年に来日し、全日本F3選手権、SUPER GT/GT500、そしてスーパーフォーミュラと日本で3つの年間チャンピオンに輝き、本人の希望で2020年からフォーミュラEに参戦しました。スーパーフォーミュラでの山本尚貴との死闘など数多くの見せ場を作ってきたキャシディ。決してトップレベルのチームではないものの、時折見せる爆発的な速さはフォーミュラEでも変わらず、昨シーズンは優勝も経験。今季も2戦連続の表彰台でランキング5位につけています。

そして、サッシャ・フェネストラズ(日産)は今季からフォーミュラEにフル参戦をしたルーキードライバー。日産のエースとしてケープタウンではポールポジションも獲得し、3位を争っていましたが、接触によりリタイア。結果は残りませんでしたが、初開催で全員が同じ条件のコース、新シャシーの最初のシーズンということで今回のブラジルでも期待が持てそうです。フランス国籍で走る彼ですが、育ちは南米アルゼンチン。母国に近いサンパウロの地で初優勝への期待が高まります。

彼らのような日本のレース環境でプロドライバーとして名を上げたドライバーたちが活躍すると、さらにフォーミュラEは盛り上がることになるでしょう。先日から東京・お台場でのフォーミュラE開催の話も実現に近づいている報道があり、来年春にフォーミュラEが日本でも見れることを期待しましょう。

そんな日本育ちのドライバーたちの活躍も楽しみなブラジル・サンパウロでのレースは2.9kmの市街地コースで開催され、かつてのインディカー開催のコースを一部流用するコースになっているとのこと。直線が3本ある典型的なストップアンドゴーレイアウトで激しいブレーキング合戦が展開されると予想されます。今季好調のポルシェパワートレイン勢がさらにポイントリードを広げるか、それともライバル勢が巻き返しを図るのか、ヨーロッパでのレースに戻る前の最後のフライアウェイ戦はシーズンの流れを左右する重要なレースになるでしょう。

文:辻野ヒロシ

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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