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ペトルッチなど大物も参戦し、群雄割拠なラインナップに! | FIM スーパーバイク世界選手権2023 第1 戦 フィリップアイランド(オーストラリア) プレビュー
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)
市販車ベースのスポーツモデルで争う世界選手権レース「FIMスーパーバイク世界選手権」の2023年シーズンがいよいよ開幕します。J SPORTSでは今季もスーパーバイク世界選手権を全戦放送!今回は他のレースカテゴリーに先駆けて3年ぶりに2月開幕となるスーパーバイク世界選手権の見どころ、そして2月24日(金)〜26日(日)にオーストラリア・フィリップアイランドで開催される開幕戦のレースプレビューをお届けしましょう。
世界がコロナ禍に突入する前の2020年以来、3年ぶりに2月というモータースポーツシーズンとしては早い時期に開幕となる2023年の「FIMスーパーバイク世界選手権」。今季は最終戦の開催地がまだ未定ですが、全12ラウンド=36戦で開催されていきます。
すでに発表されている11戦分の開催サーキットは過去にも開催があったコースばかりであり、各チームは充分にデータを蓄積した状態で今シーズンのレースに挑めることになります。実は今年はメーカー系チームのライダーラインナップはそれほど大きくは変わっていないので、昨年優勝争いを展開したライダーたちが軸になって今シーズンの覇権を争っていくことになると考えられます。
しいて言うなら、今季のラインナップでは新たなツワモノライダー達がスーパーバイク世界選手権に転向してきたことでしょう。そんな中でMotoGPでも優勝経験があるイタリア人ライダー、ダニロ・ペトルッチ(ドゥカティ)の参戦は大きなトピックスと言えます。
ダニロ・ペトルッチ(ドゥカティ)は2021年まで10シーズンに渡ってMotoGPで活躍し、昨年は市販車ベースのレースに転向し、MotoAmericaスーパーバイク選手権に参戦。初のプロダクションバイクレース、初めてレースをするコースがほとんどのアメリカ選手権で年間ランキング2位を獲得。今季はスーパーバイク世界選手権に転向し、プライベートチームの「Barni Spark Racing Team」でドゥカティ・パニガーレV4Rを駆ります。
また、MotoGPからの転向組では2021年にMoto2世界選手権のチャンピオンに輝き、2022年に念願のMotoGPクラス参戦を果たしたレミー・ガードナー(ヤマハ)が参戦します。レミー・ガードナーの父は日本でも多くのファンを持つ1987年の500ccクラス王者のワイン・ガードナー。父のように最高峰クラスでのチャンピオンにはなれませんでしたが、まずはヤマハのプライベートチーム「GYTR GRT Yamaha」に加入してプロダクションバイクレースを学んでいくことになります。
そして、スーパースポーツ世界選手権の2連覇を達成し、悲願のスーパーバイク世界選手権参戦を果たしたのがドミニク・エガーター(ヤマハ)。MotoGPは経験していないものの、長くMoto2で活躍し、MotoEではチャンピオンを獲得したエガーターの参戦は非常に楽しみです。所属チームはガードナーと同じ「GYTR GRT Yamaha」。ヤマハとしてはグランプリ出身のライダーを起用することで全体の底上げを狙っていくということでしょう。
ただ、上記の3人はグランプリ出身の注目ルーキーではありますが、いずれもインディペンデント(プライベーター)のチームからの参戦であり、メーカーが最大のプライオリティを置くファクトリーチーム(ワークスチーム)のライダーたちが今季も主役になっていく可能性が高いと考えられます。
ファクトリー系の主役はやはり昨年のチャンピオン、アルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)でしょう。ホンダからドゥカティに出戻り、ドゥカティ・パニガーレV4Rで年間16勝をマークし、2006年の125ccクラス以来16年ぶりに世界選手権タイトルを掴み取りました。特に決勝レースでの巧みなレース運び、強さが目立ち、シーズンを通じての転倒も最小限だったことで一気に流れを引き寄せました。
昨シーズンはアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)、2021年王者のトプラク・ラズガットリオグル(ヤマハ)、そして6度のワールドチャンピオンであるジョナサン・レイ(カワサキ)の三つ巴の戦いとなり、実に半数以上となる20レースでこの3人が表彰台を独占。ドゥカティ、ヤマハ、カワサキのエースライダーが常時チャンピオン争いを展開する格の違いを見せつけたのです。
果たして今年もこの3人によるチャンピオン争いということになっていくのでしょうか。その可能性は高いと言えますが、レイは36歳、バウティスタは38歳という年齢を考えると、そろそろ新世代が台頭してきても何ら不思議ではない状況と言えます。
26歳のトプラク・ラズガットリオグル(ヤマハ)の逆襲は充分に考えられますし、昨年優勝は無かったもののランキング4位を獲得した27歳のマイケル・ルーベン・リナルディ(ドゥカティ)、スーパーバイク世界選手権3年目のシーズンを迎える26歳のアンドレア・ロカテリ(ヤマハ)、鈴鹿8耐でも速さを示した23歳のイケル・レクオーナ(ホンダ)など20代の若手たちの活躍に大いに期待したいところです。
さて、誰が今季の覇権を握ることになるのか。昨年の最終戦・フィリップアイランドではベテランのアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)とジョナサン・レイ(カワサキ)が優勝していますから、そこに割って入る若手が開幕戦から現れることになるのか注目していきましょう。
今季は野左根航汰がMoto2世界選手権に転向したため、日本人ライダーの参戦は皆無ですが、MotoGPを走った経験を持つライダーの増加で昨年以上に群雄割拠になった2023年のスーパーバイク世界選手権がちょっと目が離せないシーズンになることは間違いありません。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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